第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-6-8] 新しい生活様式における集団作業療法『ハワイやん』の試み

今 かおり (社会福祉法人和悦会デイサービスセンター加美北)

【初めに】当施設では,世間で注目されている様々な作業活動を取り入れ,他職種や家族から,作業療法(以下OTとする)に関心を集める働きかけをしてきた.2020年からは,感染予防対策の制約に対応しながら,新しい生活様式における集団OTを模索してきた.今回は,当デイサービスで2022年に実施したOTプログラムの内容と今後の課題について報告する.なお,発表に際し,対象者から同意を得ている.
【取り組みと結果】2022年6月22日〜8月25日の期間限定で,デイサービスの利用者20人〜25人を対象に,集団OT「ハワイやん」を実施した.作業療法士(以下OTRとする)が毎日,30分程度,機能訓練としてフラダンスを指導した.毎回,心身機能の効果や,ハワイ語の意味,ハンドモーションの解説と,フラダンスは表現すること,笑顔で踊ることが重要であると伝えた.OTRはその日の参加メンバーを評価しながら,臨機応変に内容を考えながらゆっくりと進めた.フラダンサーの衣装で踊ったり,参加者全員がレイをかけるなど場の雰囲気を作り,振り付けをみんなで考えるなど,脳トレの要素も盛り込んだ.また,プログラムとして,OTRと撮影したポートレートシートを配布した.ハワイの装飾をした撮影コーナーを設け,iPadの自撮り機能を使って,画面に映る自分達を見ながら楽しく撮影をした.終了時には,フラダンスの感想や,フラダンスが話題になったか?ポートレートシートはどうしたか?など,プログラムの効果についてのOTR以外の職員が聞き取りを行った.最後に,その振りかえりと個々の参加の様子を各居宅に発信した.
 フラダンスは,始めは硬い動きであったが,練習を重ね柔らかく踊れるようになっていった.また,慣れてくると,笑顔が増え,楽しみながら参加されていた.プログラム中はレイの効果もあり,活動が減りマンネリ化したデイフロアが明るい活気のある印象に変わった.終了時のアンケートでは,「できなくても楽しい」「いろんなことをしたい」など前向きな回答が多かった.当時,利用者とのコミュニケーションの時間が減っていた職員には,久しぶりの交流の時間となり,プログラムの効果についての理解にも繋がった.ポートレートシートは,大きなマスクで目元しか見えない写真であったが,何もないと感じる生活での楽しい記録として喜ばれた.多くの利用者が居室に飾り,それをきっかけに,家族やヘルパーとの会話が生じていた.友人たちに近況報告としてコピーを郵送したと話す利用者もいた.施設行事は全て中止,自粛ムードで暗いニュースが続く中,期間限定OTとして実施した結果,現場に癒しと活気を取り戻し,単調な生活のなかでの楽しい話題となった.
【考察】新しい活動は認知症の予防効果が高いと言われており,実際は,昔得意だった活動よりも,未経験の活動の方が取り組みやすい高齢者も多い.フラダンスは自由度が高く,座位で実施可能で,転倒のリスクを回避できるため,高齢になってもできる活動である.ゆったりとした音楽に合わせて笑顔で踊るため,表情を取り戻し,気分転換ができる.そして,今回の集団OTは,コミュニケーションに繋げることができたと考えている.
 マンパワー不足で,OT場面で職員の協力が期待できない状況や,感染リスクが少しでも予想される活動の制限は継続している.新しい生活様式での集団OTは,安全を最優先に,様々な活動を使い,人と人,人と大切な作業を繋げていくことである.今後は,OTRが作業活動の意味を伝え,この環境でできることは何か,対象者に必要な活動をどうすればできるのか,というOTの視点をもって,あきらめず臨機応変に対応していかねばならないと考えている.