第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-7] ポスター:地域 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-7-1] 自立生活センターの現状と課題に関する考察

石井 清志1, 河野 眞2, 杉原 素子3 (1.国際医療福祉大学成田保健医療学部, 2.国際医療福祉大学小田原保健医療学部, 3.国際医療福祉大学大学院)

【背景】
 自立生活センター(Center for Independent Living,以下CIL)は,地域社会における障害者の自立生活を支援することを目的に1972年に米国で設立された.日本では米国などで障害者運動を学んだ当事者らにより1986年に設立された.
 CILでは障害当事者が運営に関わることが規定されており,これにより障害者がサービスを受けるだけではなく,提供する側になる点が特徴として挙げられる.また,事業所としての機能のみならず,障害当事者による権利擁護等の活動の場としての機能も有している.近年では日本での障害者リーダー育成事業を通じてCILで研修を受けた海外の障害当事者が,帰国後に母国でCILを設立するなどその活動は海外に広がっている.
【目的】
 1980年代から各地で設立されてきたCILは2017年時点で120ヶ所以上が設立されており,各地で様々な事業や活動を行っている.一方で設立から30年余りが経過し,先行研究において様々な課題が生じていることが指摘されている.本研究では質的研究を通じ当事者の視点からCILの現状と課題を把握し,今後の取り組みについて検討することを目的とする.
【方法】
 CILに勤務する4 名の身体障害の当事者を対象に半構造化面接を実施した.協力者の承諾を得て録音した面接時の音声データからテキストデータを作成し,それらを対象に質的分析を行った.分析結果の妥当性および厳密性を確保するために,質的研究の経験を有する研究指導者の助言を受け実施し真実性を確保した.
 なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認(承認番号18-Io-97)を得て実施した.
【結果】
 テキストデータの分析の結果 112 の意味のあるセンテンスが抽出された.これらの意味のあるセンテンスを分類した結果,15のサブカテゴリーに分類された.最終的に①人材に関すること,②当事者スタッフの障害特性に関すること,③教育の影響に関すること,④障害者の権利擁護に関すること,⑤当事者が当事者を支援することのメリットについての5つのカテゴリーが抽出された.
【考察】
 CILは障害者の地域生活を支えるサービスを提供する事業所および,障害者の相談の場としての機能を有している.一方で時代の変化と共に人材育成や障害の多様化への対応など対応すべき課題も多い事が明らかとなった.今後も当事者団体として,当事者の視点からの情報発信や問題提起などの障害者運動を展開するとともに,作業療法士等の専門職を含めた医療,福祉,行政との連携・協働による事業の展開も期待される.
 本研究は国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科博士課程研究科に提出した博士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.