第57回日本作業療法学会

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[PN-7] ポスター:地域 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-7-12] 病院所属の作業療法士が身近な地域へ貢献するための第一歩と約二年間の活動報告

小渕 浩平1,2,3, 務台 均4, 小林 武雅1, 本間 千恵子5, 瀧澤 勉1 (1.JA長野厚生連長野松代総合病院リハビリテーション部, 2.信州大学大学院総合医理工学研究科医学系専攻博士課程, 3.長野県小布施町役場一般介護予防事業評価事業研究員, 4.信州大学医学部保健学科作業療法学専攻, 5.長野県小布施町役場健康福祉課地域包括支援センター)

【緒言】
 日本作業療法士協会は,第四次作業療法5ヵ年戦略にて,「地域共生社会5ヵ年戦略」を掲げており,作業療法士が身近な地域の「地域共生社会の構築」に寄与することの重要性は増している.演者は2019年から長野県小布施町に居住し,2021年度より地域共生社会への寄与を目的に,同町より委嘱を受けて,地域リハビリテーション活動支援事業(以下,地域リハ事業),高齢者の保険事業と介護予防の一体的実施(以下,一体的実施),一般介護予防事業評価事業(以下,評価事業)に携わっている.本演題では,一般病院勤務のいち作業療法士(以下,OT)が,身近な地域に貢献するために奔走してきた実際の経緯と,約二年間の活動内容について報告する.なお,本報告について当院倫理審査委員会の審査を受けている.また小布施町役場健康福祉課の承諾も受けている.
【方法と経過:身近な地域に関わるための戦略】
 2019年には,町の総合計画・総合戦略策定のための専門部会の立ち上げが企画されていた.地域課題把握のため一般町民の参加を募集していたことから,介護の部会にOTとしてではなく,いち町民として立候補し年6回の会議に参加した.そこで,同町にはOTを多く抱えるA病院があること,ただ地域リハ事業は行っておらず,医療・介護保険以外でのOTの地域活動ができていない現状を知った.そのため,同町の健康福祉課や地域包括支援センター,社会福祉協議会などに,OTが地域で貢献できることをアピールすることで,地域を支える多職種と繋がりを得ることができた.2020年からは,介護保険事業策定懇話会の委員に参加する機会を得た.その中で,健康福祉課長や地域包括支援センター所長,A病院の院長や事務長などに,地域リハ事業の重要性と実現の可能性を伝えた.
【結果:講師活動と研究員委嘱からの2年間】
 2021年より,同町の地域包括支援センター,A病院とともに,地域リハ事業を開始することができた.具体的に演者は,地域リハ事業の運営を担いつつ,月1回,予防事業へ講師として参加した.ただ,介護予防事業の効果判定が十分になされていなかったため,評価事業の研究員として,介護予防事業全体の効果判定や課題抽出にも取り組んだ.具体的には,通いの場やボランティア活動といった社会参加が,地域在住高齢者の介護予防や介護給付費用に与える影響について,過去5年間を遡り調査した.得られた結果は,町の広報誌などで定期的に情報を発信する機会をもらい,地域住民にも届けた.2022年度は,一体的実施の講師として,町内にある26自治会の公民館を月2回ずつ巡回し,フレイル予防や社会参加の重要性についての啓発活動を行っている.またOTの視点から,その人らしい生活を支える介護予防事業の計画や評価ができるような取り組みにも携わっている.
【考察:病院に所属しながら地域に出向くことの意義】
 身近な地域に貢献したいと考えながらも,どう関わればよいか分からず二の足を踏むOTは多いように感じる.医療機関に所属しながらも,地域住民や,行政職など地域を支える様々な職域の方々と触れ合う機会は,地域を深く知る機会となり,地域における医療・介護連携の現状や課題の把握につながると考える.また,医療と行政,住民など様々な立場の人を繋ぐといった人的・社会的環境へのアプローチも,OTの地域貢献の一つになると推察する.病院所属のOTが地域に出向き,新たな出会いの中で,それぞれの地域が目指す,地域包括ケアシステムや地域共生社会に,OTが地域の一員として寄与できることを期待する.本報告は,いち個人の活動ではあるが,身近な地域にOTが一歩踏み出すための参考になればと考える.