[PN-7-5] 精神障害者向けグループホーム職員の感情知性を育む研修プログラム試案
【緒言】感情知性(以下EQ)とは,「感情を正確に受け止め,評価し,そして表現する能力,感情や感情的知識を理解する能力,感情的および知的発展を促すために,感情をコントロールする能力」と定義される(Meyer1997).グループホーム(以下GH)では日常的に利用者の不安や悩みなど感情面を扱うEQの活用が求められるにもかかわらず,職員自身が感情的な葛藤を処理する場や機会が少なく,疲弊とバーンアウトのリスクを抱えている.障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の発生要因についての報告では「職員のストレスや感情コントロールの問題(55.3%)」が挙げられている(厚生労働省2021).つまり,GH職員においても,利用者の意向や気持ち・想いをくみ取る力量と,利用者との関わりの中で生じた職員自身の感情の自己認知と対処技能,つまりEQを駆使する必要性が示されている(水野2016)が,EQをテーマとした研修プログラム(以下Prog)は企画,開催されていない.
【目的】「精神障害者向けGH職員のEQを育むProgの開発」に向けて立案したProg試案の必要性および内容の検討をし,最終案作成につなげるための示唆を得る.
【方法】先行研究(水野2019,2022)をもとに作成したProg草案に対して,GH職員やピアサポーター,地域精神保健福祉の研究者といった専門家集団によってProgの内容の妥当性を検討し8つの項目:①感情に関するスキル,②自分の感情に気づく,③他者の感情に気づく,④自分の感情を理解する,⑤他者の感情を理解する,⑥感情のコントロール,⑦EQとストレス対処,⑧感情の活用で構成されるProg試案(約150分間)を作成した.研究者が7施設に訪問し,のべ15名のGH職員に対して実施した.対象者には,試案に参加し体感したことに関するアンケートの記載を依頼した.内容は(1) Prog試案の各項目に対する必要性を5件法(5点満点)で回答し,(2)気づいた点等の自由記載と, (3)全体に対する自由記載の3点を聴取した.本研究は,所属機関の研究倫理委員会の承認を得て実施した.また,研究資金は文部科学省科学研究費基盤研究(C) 18K02150を受けた.
【結果】アンケートは対象者15名分を回収することができた.
(1)8項目の平均点は①4.27,②4.40,③4.80,④4.73,⑤4.87,⑥4.80,⑦4.73,⑧4.87であった.(2) 項目①において「このProg以前に必要性は感じていた」「言葉が若干分かりにくい」,項目⑥に関して「怒れない姿勢は納得」「ハンモックに寝るなど面白い」などが得られた.(3)全体の自由記載では,「感情労働に気づき言葉にしていく必要性を感じた」「このような実体験を(研修に)取り入れたい」「メンバーにも落としたい」 という意見と,「事例も深いものを提示してほしい」「心理検査の(実施は)選択できる形が良い」などが聞かれた.
【考察】Prog導入部分である項目①では,EQの概念や歴史などの講義が中心で,聞きなれない言葉に抵抗感が見受けられ,理解度に合わせて平易な言葉を選ぶことが課題となった.項目③ではeMotion Feeling Cardsによるゲーム形式のグループワーク,④では自記式の評価尺度(EQS)による自己のEQ傾向の把握,⑥ではハンモックの使用,⑦ではレーズンエクササイズ,など直感的で体験型のアクティビティを取り入れたのはOTである研究者の嗜好性が反映されており,講義形式をとることが多い研修との違いに新鮮さや楽しみを感じながら参加できたことで高評価を得られたと考える.
【結論】精神障害者向けGH職員のEQを育むProg試案の必要性は確認されたが,項目によって改善の余地があることが示唆され,今後の効果検証が課題となった.
【目的】「精神障害者向けGH職員のEQを育むProgの開発」に向けて立案したProg試案の必要性および内容の検討をし,最終案作成につなげるための示唆を得る.
【方法】先行研究(水野2019,2022)をもとに作成したProg草案に対して,GH職員やピアサポーター,地域精神保健福祉の研究者といった専門家集団によってProgの内容の妥当性を検討し8つの項目:①感情に関するスキル,②自分の感情に気づく,③他者の感情に気づく,④自分の感情を理解する,⑤他者の感情を理解する,⑥感情のコントロール,⑦EQとストレス対処,⑧感情の活用で構成されるProg試案(約150分間)を作成した.研究者が7施設に訪問し,のべ15名のGH職員に対して実施した.対象者には,試案に参加し体感したことに関するアンケートの記載を依頼した.内容は(1) Prog試案の各項目に対する必要性を5件法(5点満点)で回答し,(2)気づいた点等の自由記載と, (3)全体に対する自由記載の3点を聴取した.本研究は,所属機関の研究倫理委員会の承認を得て実施した.また,研究資金は文部科学省科学研究費基盤研究(C) 18K02150を受けた.
【結果】アンケートは対象者15名分を回収することができた.
(1)8項目の平均点は①4.27,②4.40,③4.80,④4.73,⑤4.87,⑥4.80,⑦4.73,⑧4.87であった.(2) 項目①において「このProg以前に必要性は感じていた」「言葉が若干分かりにくい」,項目⑥に関して「怒れない姿勢は納得」「ハンモックに寝るなど面白い」などが得られた.(3)全体の自由記載では,「感情労働に気づき言葉にしていく必要性を感じた」「このような実体験を(研修に)取り入れたい」「メンバーにも落としたい」 という意見と,「事例も深いものを提示してほしい」「心理検査の(実施は)選択できる形が良い」などが聞かれた.
【考察】Prog導入部分である項目①では,EQの概念や歴史などの講義が中心で,聞きなれない言葉に抵抗感が見受けられ,理解度に合わせて平易な言葉を選ぶことが課題となった.項目③ではeMotion Feeling Cardsによるゲーム形式のグループワーク,④では自記式の評価尺度(EQS)による自己のEQ傾向の把握,⑥ではハンモックの使用,⑦ではレーズンエクササイズ,など直感的で体験型のアクティビティを取り入れたのはOTである研究者の嗜好性が反映されており,講義形式をとることが多い研修との違いに新鮮さや楽しみを感じながら参加できたことで高評価を得られたと考える.
【結論】精神障害者向けGH職員のEQを育むProg試案の必要性は確認されたが,項目によって改善の余地があることが示唆され,今後の効果検証が課題となった.