第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-7] ポスター:地域 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-7-7] 作業療法士がつくる新しい退院支援

久保田 好正 (株式会社 斬新社)

はじめに
 新型コロナウイルスにより,病院から在宅へスムーズに退院する退院支援が止まった.今回,作業療法士の視点で作った退院支援の仕組みをご紹介する.
コロナ前後の課題  
 コロナ前に,山梨県内の病院や訪問事業所等に勤務する理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の有志7名と退院支援の課題を分析した.①家屋情報の依頼は家族の負担が大きい,②退院前訪問は実施範囲に制限がある,③退院直前の会議では連携が不十分,④人材育成の基準が不透明,等が挙がった.
 コロナ後に,全国の理学療法士・作業療法士の有志にアンケート調査をした.病院所属の回答数27のうち,家族の面会制限あり100%,本人や家族が不安を感じているとの回答は88.9%.更に,①病院が退院前訪問できない,②外泊できず病院の提案が確認できない,③感染拡大に連動して退院前訪問が制限される,等の新しい課題が挙がった.
 在宅・施設所属の回答数31名のうち,80.6%が病院との連携が変わり,リハの見学ができない,退院前訪問に同席できない等の連携に関する課題があった.
作業療法士による仕組みづくり
 コロナ前後の課題は相互に影響し複雑で,新しい退院支援で課題を無効化することにした.本来は病院が行う業務改善だが,感染対策や日常業務で精一杯で現実的ではない.むしろこの仕組みに参加するメリットある他団体の方が継続しやすく,全国に届けやすい.
 私は福祉用具専門相談員と連携する機会が多く,「宅配ではなく,専門性を活かす仕事をしたい」と聞いていた.特に株式会社トーカイは,入院直後の家屋調査「早期家屋調査」を実践しており,「退院支援サポートサービス」を協業でつくることとした.
退院支援サポートサービスとは
 入院から退院後までサポートする5つのサービスで,病院や本人・家族の費用負担はない.
 早期家屋調査は,入院時に家屋調査を行い,平面図,自宅内の写真や段差等の数値,暮らしのアセスメントなどの報告書を病院に届ける.家族の負担がなく,確かな情報が手に入る.退院後の目標設定がしやすく,初回カンファレンスでチームで情報共有と役割分担ができる.
 福祉用具の相談は,治療場面や病棟で退院後に必要な福祉用具の評価や試行ができる.家族や介護支援専門員と相談の上で,退院後は介護保険レンタルできて安心が増す.
 オンライン訪問は,遠隔地や感染拡大で訪問できない場合に有効だ.オンラインの設定や機材は全てこちらで準備するので,病院はインターネットにつながるカメラ付きパソコンだけで参加できる.
 退院後の情報提供は,暮らしが落ち着いた様子を病院に情報提供する.入院中の予測やアプローチ,住環境整備の提案などを振り返り,ノウハウを蓄積できる.
 ガイドラインは,病院での評価や多職種連携の基本,住環境整備の考え方や技術など退院支援のレベルアップする内容を紹介している.これらは,その方に必要なものを必要なタイミングでカスタマイズして活用できる.
今後の展開
 2023年2月現在,埼玉県の4つの病院でスタートし,「早期家屋調査の報告書が届くスピードが速い」「情報が的確」など好評だ.まだまだ実践数は少ないので,必要とする全国のみなさんと連携し安心して退院できる仕組みを広げていきたい.現場の課題を整理し持続可能な仕組みにつくる過程は,作業療法士の思考に通じる部分が多く,今後は更に必要とされる分野だと感じる.