[PN-8-10] 介護サービス提供開始後1年での要介護度の維持・改善に寄与するリハビリテーションを含む介護サービスの研究
【はじめに】
要介護度の悪化を防ぐことは重要である.要介護度の悪化は,介護負担増加や経済的損失など様々な問題を引き起こす.要介護度悪化の要因やリハビリテーションの効果に関して多く報告されているが,リハビリテーションを含む介護サービスが要介護度維持・改善に与える影響を検討した報告は見当たらない.どのような介護サービスが要介護度の維持・改善に影響を与えるかを,ビッグデータを用いて検討することを目的とした.これを検討することで,要介護度維持・改善に効果的なサービスの提供の端緒を得られると考えられる.
【方法】
平成26年度から30年度の間に,福島県郡山市において初めて要介護認定を受けた65歳以上の者15,009名のうち,認定後3か月から12か月の間に再調査が行われている者,初回の調査で要介護1から5に認定された4,775名を対象とした.データは福島県郡山市の医療レセプト情報と介護認定情報,介護レセプト情報を使用した.初回要介護認定時と1年後の要介護度を収集し,要介護度が維持または改善したものを「維持・改善」,悪化したものを「悪化」とした.介護サービスは,訪問看護,訪問リハビリテーション,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護,介護保険施設サービスの使用状況を収集した.傷病は,高齢社会白書より介護が必要となった主な原因から,脳血管疾患,心疾患,関節疾患,骨折疾患,認知症の5傷病とし,ICD10のコードから該当するデータを収集した.統計解析は介護度の「維持・改善」,「悪化」を目的変数とし,使用した各介護サービスを説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行った.共変量は性別,年齢,初回要介護度,介護の主な要因とされる5傷病の有無とした.なお,本研究は本学の倫理審査委員会の審査と承認の下で実施した.
【結果】
対象者4,775名のうち,訪問看護を利用している者は601名(維持・改善は%),訪問リハビリテーションは115名(%),通所リハビリテーションは763名(%),短期入所生活介護は543名(%),短期入所療養介護は108名(%),介護保険施設サービスは324名(%)であった(いずれも複数利用).要介護度維持・改善のオッズ比(95%信頼区間)は,訪問看護0.69(0.56-0.84),訪問リハビリテーション1.71(1.00-2.91),通所リハビリテーション1.33(1.09-1.62),短期入所生活介護0.54(0.44-0.66),短期入所療養介護0.58(0.38-0.91),介護保険施設サービス0.57(0.42-0.75)であった.
【考察】
訪問リハビリテーション,通所リハビリテーションで要介護度維持・改善のオッズ比が高い結果となり,維持・改善に効果的であることが示唆された.先行研究でも,これらのサービス利用者について身体機能へのアプローチが要介護度の改善に有効(富山ら,2016)であることや,サービス利用者の生活活動度(川村ら,2018)と要介護度改善の関係が示されるなどの報告があり,それを示す結果となった.一方で,その他の4つのサービスでは要介護度維持・改善のオッズ比が1を下回る結果となった.例えば訪問看護は,疾病または負傷により療養を受ける状態にある者に対し,療養上の世話または必要な診療の補助を行う(厚生労働省,2020)ことを目的としており,要介護度の悪化が予測される者に対し適切にサービスが提供されている結果と考えられる.今後,要介護度別や傷病毎の特徴などの視点を踏まえて検討を継続していきたい.
要介護度の悪化を防ぐことは重要である.要介護度の悪化は,介護負担増加や経済的損失など様々な問題を引き起こす.要介護度悪化の要因やリハビリテーションの効果に関して多く報告されているが,リハビリテーションを含む介護サービスが要介護度維持・改善に与える影響を検討した報告は見当たらない.どのような介護サービスが要介護度の維持・改善に影響を与えるかを,ビッグデータを用いて検討することを目的とした.これを検討することで,要介護度維持・改善に効果的なサービスの提供の端緒を得られると考えられる.
【方法】
平成26年度から30年度の間に,福島県郡山市において初めて要介護認定を受けた65歳以上の者15,009名のうち,認定後3か月から12か月の間に再調査が行われている者,初回の調査で要介護1から5に認定された4,775名を対象とした.データは福島県郡山市の医療レセプト情報と介護認定情報,介護レセプト情報を使用した.初回要介護認定時と1年後の要介護度を収集し,要介護度が維持または改善したものを「維持・改善」,悪化したものを「悪化」とした.介護サービスは,訪問看護,訪問リハビリテーション,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護,介護保険施設サービスの使用状況を収集した.傷病は,高齢社会白書より介護が必要となった主な原因から,脳血管疾患,心疾患,関節疾患,骨折疾患,認知症の5傷病とし,ICD10のコードから該当するデータを収集した.統計解析は介護度の「維持・改善」,「悪化」を目的変数とし,使用した各介護サービスを説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行った.共変量は性別,年齢,初回要介護度,介護の主な要因とされる5傷病の有無とした.なお,本研究は本学の倫理審査委員会の審査と承認の下で実施した.
【結果】
対象者4,775名のうち,訪問看護を利用している者は601名(維持・改善は%),訪問リハビリテーションは115名(%),通所リハビリテーションは763名(%),短期入所生活介護は543名(%),短期入所療養介護は108名(%),介護保険施設サービスは324名(%)であった(いずれも複数利用).要介護度維持・改善のオッズ比(95%信頼区間)は,訪問看護0.69(0.56-0.84),訪問リハビリテーション1.71(1.00-2.91),通所リハビリテーション1.33(1.09-1.62),短期入所生活介護0.54(0.44-0.66),短期入所療養介護0.58(0.38-0.91),介護保険施設サービス0.57(0.42-0.75)であった.
【考察】
訪問リハビリテーション,通所リハビリテーションで要介護度維持・改善のオッズ比が高い結果となり,維持・改善に効果的であることが示唆された.先行研究でも,これらのサービス利用者について身体機能へのアプローチが要介護度の改善に有効(富山ら,2016)であることや,サービス利用者の生活活動度(川村ら,2018)と要介護度改善の関係が示されるなどの報告があり,それを示す結果となった.一方で,その他の4つのサービスでは要介護度維持・改善のオッズ比が1を下回る結果となった.例えば訪問看護は,疾病または負傷により療養を受ける状態にある者に対し,療養上の世話または必要な診療の補助を行う(厚生労働省,2020)ことを目的としており,要介護度の悪化が予測される者に対し適切にサービスが提供されている結果と考えられる.今後,要介護度別や傷病毎の特徴などの視点を踏まえて検討を継続していきたい.