第57回日本作業療法学会

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[PN-8] ポスター:地域 8

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-11] アクティブラーニング型健康教育が地域在住虚弱高齢者にもたらす心理的変化について

久保田 智洋1, 岩本 記一2, 加々井 杏莉沙2, 谷口 圭佑2, 岩井 浩一3 (1.アール医療専門職大学, 2.アール医療福祉専門学校, 3.茨城県立医療大学人間科学センター)

【序論】近年,新型コロナウィルス感染拡大の影響により,地域高齢者の生活は大きく変化している.一般高齢者は虚弱状態に陥ると適切な介入が無い限り,4年後さらに状態が悪化する恐れがあると言われている(山田実,2016).我々は,一般高齢者の社会活動の継続には「創作・学習活動をしようという意欲の継続」が重要なことを解明した(久保田/2020).一方で,一度要介護認定を受けることで,これらの意欲低下を招く悪循環に陥る恐れがある.そのため,要介護認定者の増加を予防するには,要介護認定を受ける前に心理的フレイルの予防に取り組むことが重要である.
【目的】本研究の目的は,介護予防事業に参加した地域在住虚弱高齢者の心理的・身体的変化を縦断的に調査し,その変化を明らかにすることである.
【方法】対象者は,A県B市の通所型サービスC事業(以下,健康教室)に参加した地域在住虚弱高齢者14名(男性3名・女性11名)とした.本健康教室は2022年10月~12月の時期に,週1回2時間開催の全10回コースであった.健康教室の内容は,2時間の内,前半が創作・学習活動をアクティブラーニング型手法にて実施し,後半が体操などのストレッチ/バランス運動を中心に実施した.創作・学習活動は,主に運営スタッフが用意したテーマに合わせて参加者自らが手芸や革細工などを実施した.調査項目は,年齢,性別,世帯構成,主要アウトカムとして,やる気スコア,IADL/社会活動尺度(厚労省)である.副次的アウトカムは,TUG,認知機能検査:MCIスクリーニング評価 (以下,MoCA-J)とした.これらの調査項目を開始時と10週後の終了時に測定をした.統計解析には,SPSS.ver25を用いた.なお,本研究は本人の同意および倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】対象者14名の平均年齢は,82.0±6.1歳(男性:82.6±4.5歳,女性:81.8±6.7歳)であった.各測定項目の結果は,開始/終了時の順にやる気スコア:12.4±6.9点/8.7±7.2点,IADL/社会活動尺度(厚労省):31.8±8.8点/25.2±16.9点,TUG:12.8±6.3秒/10.6±6.3秒,MoCA-J:20.7±5.1点/16.2±11.3点であった.Wilcoxonの符号付順位検定の結果,やる気スコアとTUGに有意な改善が認められた.
【考察】本研究では,アクティブラーニング型健康教室に参加した地域在住虚弱高齢者において,やる気スコアと動作時バランス能力の改善が認められた.やる気スコアは,アパシーを評価する1つの指標である.このことから,アクティブラーニング型健康教育は地域在住虚弱高齢者のアパシーに対して改善効果があると推察した.本研究の限界は,対照群がない点である.今後,ランダム化比較試験を用いて地域在住虚弱高齢者への効果を明確にする必要がある.
【利益相反】申告すべき事項はなし.