第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-4] 住民主体の通いの場からみえた地域高齢者の生活

大瀧 誠, 小川 真寛, 田代 大祐, 中前 智通, 大庭 潤平 (神戸学院大学総合リハビリテーション学部作業療法学科)

はじめに 地域活動は町内会等小さな規模から特色を活かした取り組みがされており,自治体や住民ボランティアなどの様々な支援を受け入れ,自立的かつ積極的に運営されている.明石市は住民主体の憩いの場(サロン)が数多く運営されている.サロンの開催回数や内容は運営者に任せられており,各地域に合った運営をしている.そのため,開催回数が多いサロンに参加する住民は少ないサロンに参加する住民より機会が増え,体力的にも高いことが予想できるが,基本的な諸機能,日常生活の状況やその頻度に違いがあるのかわかっていない.
目的 本研究の目的はサロンに参加している高齢者へのアンケートから,基本的な諸機能,日常生活の状況とその頻度について分析し,地域高齢者の生活とサロンとの関係について検討した.
対象および方法 明石市に在住する住民で,明石市社会福祉協議会に登録されているサロンなどに参加している高齢者で,本調査に同意した270名(男性45名,女性225名,平均年齢79.0±6.3歳)を対象とした.なお本研究は本学研究倫理審査委員会の承認を受けている.
 調査は,基本チェックリスト,日本語版Frenchay Activities Index自己評価表(FAI)を用いた.これらのシートは調査者が参加者へ手渡し,項目を読み上げながら回答してもらった.
 分析は参加者の生活状況について検討することから,月1回実施しているサロン参加者(男性35名,女性162名,平均年齢78.9±6.3歳)と,月数回実施しているサロン参加者(男性10名,女性63名,平均年齢79.2±6.2歳)の二群に分けて解析した.
 統計処理はMann-WhitneyのU検定を用い,有意確率5%以下を有意とした.
結果 年齢,基本チェックリストの各項目およびFAIの身長,体重の項目について,両群間に有意差はなかった.
 FAIは,月数回実施のサロン参加者が食事の用意(p<0.05),洗濯(p<0.05),力仕事(p<0.05),趣味(p<0.05),読書(p<0.01)の項目で有意にその頻度が高かった.
考察 サロンなどへの参加は女性が多く,年齢,基本チェックリストの各項目およびFAIの身長,体重に有意差はなかった.このことからサロンなどに参加している地域高齢者はおおよそ一定水準の機能を有し,日常生活を送っていることがわかった.FAIから過去3ヶ月間の生活状況について,月数回開催しているサロンへ参加している高齢者は有意差があった項目で比較的頻度多く実施していることがわかった.これら有意差があった項目をチェックすることにより,サロンなどから在宅支援へつなげることができる可能性が示唆された.
 今回,月数回実施しているサロンへの参加者の方が日常生活で活動的な生活を送っていることが示唆されたが,サロン開催回数が増えれば,サロン運営者の負担が増すことにつながり,継続的な運営に支障が出る可能性がある.サロン運営者は明石市や明石市社会福祉協議会からの助成制度,音楽家や手工芸ボランティアからの協力を有効活用すると同時に,当日参加者へ協力を呼びかけるなど工夫を凝らして運営していた.サロンの運営には,運営者やボランティア,参加者の相互協力により成り立っており,持続的かつ様々な支援が必要不可欠である.
 サロン参加者は一定水準の機能を保ちながら日々の生活を送り,それに加えてサロンなどへ参加し交流を深めようとする意志が高い可能性がある.参加者はサロンなどを継続的かついつでも活用できる明石市の環境があるからこそ,住み慣れた地域で交流しながら,より豊かに生活できている可能性がある.