第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-5] 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による行動規制前後の身体機能の変化

石川 進一 (平成リハビリテーション専門学校作業療法学科)

緒言
新型コロナウイルス感染症により,外出制限などの規制が行われ,生活において欠かせない[参加]活動に大きな制限を受けることとなった.筆者が所属している養成校(以下,本校)がある西宮市においても,様々な活動が中止もしくはオンラインで行われることとなった.西宮市では年に一度[西宮市民祭り]と言われる市役所が主体になり,地域の各施設が参加し,全年齢の市民が楽しめるイベントが行われており,本校も健康調査としてブースを出展し参加している.2019年の開催の後,2020年は中止,2021年はオンライン開催という,非来場型のイベントにて実施されていた.2022年に来場型へ再開したという経緯がある.そこで行動制限前後の参加者の運動機能を調査し,その変化を確認することとした.
方法
西宮市民祭りに来場し,本校のブースを訪れた者の握力を計測し,行動制限前後の変化について平均値を用いて比較する.被験者には計測前に口頭で本調査の趣旨を説明し,同意を得た者のみ性別,年齢,利き手の握力を収集した.計測には電子握力計(竹井機器工業株式会社T.K.K.5401 GRIP-D)を使用した.
結果
対象者は規制前557名(男性210名,女性347名),規制解除後230名(男性82名,女性148名)であった.
握力の平均は規制前10歳未満の男性11.7±5.14kg,女性10.1±5.21kg,全体10.5±5.25kg.10歳代の男性21.5±10.5kg,女性21.5±5.44kg,全体21.5±7.28kg.20歳代の男性36.0±10.5kg,女性27.7±4.30kg,全体32.0±9.78kg.30歳代の男性43.4±6.74kg,女性27.2±5.82kg,全体34.4±10.2kg.40歳代の男性43.0±7.53kg,女性27.0±5.78kg,全体32.3±9.89kg.50歳代の男性41.9±6.25kg,女性24.0±4.29kg,全体30.3±9.95kg.60歳代の男性38.2±6.23kg,女性23.6±3.97kg,全体27.9±8.15kg.70歳代の男性33.9±6.26kg,女性22.3±4.09kg,全体28.3±7.39kg.80歳代以上の男性31.1±4.36kg,女性19.3±2.84kg,全体25.7±6.94kgとなった.
規制解除後は10歳未満の男性10.4±5.13kg,女性9.89±4.51kg,全体10.1±4.80kg.10歳代の男性22.2±6.49kg,女性23.1±4.70kg,全体22.6±5.82kg.20歳代の男性参加者無し,女性25.6±2.12kg,全体は女性のみの数値と同様.30歳代の男性50.2±7.03kg,女性29.2±7.85kg,全体38.5±12.9kg.40歳代の男性47.1±7.38kg,女性30.5±5.40kg,全体37.0±10.3kg.50歳代の男性42.3±5.09kg,女性31.3±3.34kg,全体35.8±6.82kg.60歳代の男性41.0±8.22kg,女性27.3±3.55kg,全体30.1±7.38kg.70歳代の男性37.4±3.38kg,女性24.3±4.11kg,全体27.4±6.86kg.80歳代以上の男性28.9±5.16kg,女性22.1±2.40kg,全体25.7±5.31kgとなった.
考察
先行研究においては行動制限によって身体機能が低下したという報告が見られるが,今回の本研究ではそのような結果ではなく,ほぼ全年代で制限前の数値を上回る結果となった.
その原因として本校ブースへの参加者は,より健康への意識が高い者だった可能性がある.さらに制限解除された最初の年のイベントということもあり,身体機能が保たれていたり,運動習慣があったりという者が様子見という感覚で参加したという可能性もある.西宮市は高齢者に対するフレイル予防のプログラムも行われていて,制限中も広報誌や動画配信などで[西宮いきいき体操]を在宅でも継続して運動を行なえる環境を整えていた.制限解除後は動画配信に加え,自宅への訪問や通所を通して予防を強化していた.参加者の大半が西宮市民であることが予想されるため,この事業が少なからず結果に影響を及ぼしている可能性がある.
今回の結果では不確定な要素が多く,統計的な有意差を出すに至らなかったため,可能性の列挙に留まったが,今後も継続して地域活動に協力し,動向を注視していきたい.