第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-6] 防災訓練における作業療法士の活動報告

峰岡 真菜 (一般財団法人神戸在宅医療・介護推進財団 東灘しあわせ訪問看護ステーション)

【目的】筆者が所属する訪問看護ステーションの所在地域にて防災訓練が開催された. 被災予防・災害時の対処方法を地域全体で共有することを目的とし, 当地域初めてのモデルケースとして地域住民だけでなく地域で働く他職種の参加が必要とされていた. 地域包括支援センターから依頼があり, 作業療法士(以下, OT)として防災訓練に参加する機会を得た. 参加者が防災訓練を通して災害時に安全に避難所へ移動できるようになることを目的にOTとして防災訓練に参加した. 当地域での防災訓練の実態や活動内容を報告するとともに, OTが参加することの意義について考察する.
【方法】小学生から高齢者までの幅広い年代の地域住民および小学校, 地域包括支援センター, 障害者支援センター, 区役所, 消防署, 警察署の職員が参加した. 地震と津波の発生を想定し, 避難場所は地域の小学校とした.訓練の主要な流れとしては, 1)小学校での避難所の開設・運営, 2)住民避難, 3)要介護者受入訓練(体調不良者のトリアージ)であった. 一連の防災訓練を終えた参加住民に対し, ヘルパーやケアマネジャー等の他職種と共に, 車椅子の介助方法を指導するブースを設けた. 日常的に車椅子を使用していない参加者を対象とし, 被災者を車椅子で避難させる場面を想定した. 防災訓練の実施前にはOTが意見を出して実施方法を計画した. 小学校のグラウンドにて災害を想定した3つの環境(急斜面,砂利道,段差箇所)を準備し, まずは車椅子に触れてみること, 基本的な操作方法を知ってもらうことを主目的とした. 参加者を3つの環境ごとに少人数に分けて説明し, 初めにデモンストレーションを行った. 身体・認知機能的に車椅子操作の安全性が懸念される場合や,個別的に指導した方が有効な場合は OTが対応した.
【結果】3つの環境に少人数ごとに分けて指導したことで, 参加者の殆どが災害を想定した様々な環境で車椅子操作と乗車を体験することができた. 車椅子操作や乗車が初体験で不慣れな参加者が多く, 指導中に多数の質問があったが, その都度十分に説明する時間を設けることができた. 訓練後, 参加者からは「少人数で実際に体験ができ説明も分かりやすかった」などの感想がきかれた. 依頼先の地域包括支援センターからは「地域における専門職間の繋がりができて良かった」「専門家から指導してもらえると正しい情報を伝えてもらえるので助かる」等のポジティブな反応があった.
【考察】地域防災においては,その地域の住民や各関連機関の連携・地域全体での迅速な対応・支援が重要である. そのためには平時から地域で顔の見える関係作りや, 各職業・機関の役割, 被災時の連携対応方法を経験・確認して共有しておく必要がある. 日常生活のなかで車椅子に触れる機会が少ない地域住民にとって, 車椅子乗車・介助訓練を通し, 少しでも車椅子に触れる経験をしておくことは, 緊急に車椅子が必要になった場合に戸惑いや不安を軽減できると考える. 参加者は小学生から高齢者までと年齢層が幅広く, 体格や身体機能, 理解力にも差があったが, OTが個々の身体・理解力や安全性を評価して対応したことで, より理解し易い言葉遣いや指導方法が提供できた. OTは普段から,車椅子などの福祉用具に関わる職であり, その知識を正しく地域へ伝達・普及できる役割を担えたと考える. また,対象者が理解し易い指導方法や場面設定, 他職種連携ができたことで, 今回の災害訓練の目的である対処方法を地域全体で共有するという点で専門性を発揮できたのではないかと考える.