第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-8] ポスター:地域 8

2023年11月11日(土) 11:10 〜 12:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-7] 地域在住高齢者におけるコロナ恐怖感,習慣化,余暇活動,抑うつ・不安の関連

前場 洋佑1, 小林 昭博2, 今井 忠則1 (1.北里大学医療衛生学部, 2.群馬医療福祉大学リハビリテーション学部)

【背景と目的】
地域在住高齢者が健康的な生活を送るためには,余暇活動などを通して生きがいを持つことが重要である.しかし,COVID-19流行下において感染拡大を防ぐために多くの余暇活動が制限され,新たな生活様式の構築を余儀なくされている.先行研究では,COVID-19流行下での余暇活動の制限(今井ら,2022),余暇活動への従事が精神的健康に与える影響(shenら,2022)などが報告され,高齢者の生活に大きく影響を及ぼしている.しかし,包括的にコロナ恐怖感,習慣化,余暇活動,精神的健康の関連を検討した研究は見当たらない.本研究は,地域在住高齢者に質問紙調査を行い,コロナ恐怖感,生活習慣,余暇活動,抑うつ・不安の関連を明らかにする.
【方法】
茨城県在住の高齢者498名を対象に,郵送調査(2021年10月1日〜2週間)を実施した.本人が回答し,解析に使用する項目に欠損のない301名を分析対象とした.コロナ恐怖感は,「新型コロナウイルス恐怖感尺度」を用い,7項目の質問に対し5件法(1.全くあてはまらない〜5.とてもあてはまる)で回答を求めた.余暇活動は「現代高齢者版余暇活動尺度」を用い,11項目の活動に対し4件法(3.よくする〜0.全くしない)で回答を求めた.習慣化の測定は先行研究を参考に「生活パターンの満足度」と操作的に定義し,現在の生活パターン(習慣・日課や役割)に対し4件法(1.満足ではない〜4.とても満足)で回答を求めた.抑うつ・不安は「The Kessler 6-Item Psychological Distress Scale」を用い,6項目の質問に5件法(0.全くない〜4.いつも)で回答を求めた.先行研究に基づき,コロナ恐怖感,習慣化,余暇活動,抑うつ・不安の関連について仮説モデルを作成した.解析は,因子分析により因子構造を確認・修正し,構造方程式モデリングを行った.統計ソフトは,IBM SPSS Stasistics28及びAmos29を使用した.本研究は,所属機関の研究倫理審査委員会の承認(No.2019-029)を得て,倫理規定に則り個人情報の保護や研究同意手続を行った.
【結果】
対象者は301名(平均年齢76.7歳,女性76.4%)であった.各尺度に対して探索的因子分析(最尤法)と信頼性分析を行い,因子負荷及びクロンバックのαに基づいて項目を削除した.各尺度が想定通りの因子構造となることを確認するために,確認的因子分析を行い概ね良好な適合度が得られた.その後,構造方程式モデリングを用いて初期の仮説モデルを分析した.適合度が悪かったため有意ではないパスを削除して再度分析を行なった.適合度はRMSEA=0.047,AGFI=0.894,CFI=0.946と改善し概ね良好であった.標準化係数は,コロナ恐怖感から抑うつ・不安が0.33,コロナ恐怖感から習慣化は-0.23,習慣化から余暇活動は0.35,余暇活動から抑うつ・不安は-0.33であった.
【考察】
地域在住高齢者のコロナ恐怖感,習慣化,余暇活動,抑うつ・不安の関連について構造方程式モデリングを用いて検討した.コロナ恐怖感から抑うつ・不安は有意なパスを示し,コロナ恐怖感から習慣化と余暇活動を介して抑うつ・不安に至る経路もそれぞれ有意なパスを示した.つまり,コロナ恐怖感から抑うつ・不安だけでなく,コロナ恐怖感から習慣化と余暇活動を介して抑うつ・不安に影響を与えていた.COVID-19流行下における高齢者の精神的健康を維持・改善するためには,生活習慣を再構築し余暇活動に従事することが重要であると考えられる.作業療法士は,ヘルスプロモーションにおいて生活習慣や余暇活動への支援を行うことで,地域在住高齢者の精神的健康を改善させる可能性が示唆された.<謝辞:本研究はJSPS科研費JP18K10704の助成を受けたものです>