第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-8] ポスター:地域 8

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-8-8] 地域在住高齢者における友人や知人への自己開示とフレイルの関連

横山 和樹1, 宮嶋 涼2,3, 山 功恭2,4, 井平 光5, 池田 望1 (1.札幌医科大学保健医療学部作業療法学科, 2.札幌医科大学大学院保健医療学研究科, 3.江別市立病院, 4.医療法人社団大藏会 札幌佐藤病院, 5.札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

【序論】高齢期におけるフレイルは社会的な課題であり,早期からの対策が求められている.中でも,毎日誰かと会話することは社会的フレイルの判定として有用と報告され,要介護状態を防ぐために重要である(Makizako et al., 2015).しかし,会話や交流を好まない人,会話の必要性を感じていない人など,高齢者のパーソナリティが影響し,フレイル対策が行き届かない場合がある.自己開示とは,自分がどのような人物であるのかを他者に伝える行為であり,パーソナリティを表す手段である(榎本,1997).高齢者の自己開示を内容別に測定し,フレイルとの関連を明らかにすることで,パーソナリティを加味した効率的なフレイル対策が可能になる.本研究では,地域在住高齢者の友人や知人への自己開示とフレイルとの関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】2017年から2019年までに本所属が実施する地域在住高齢者を対象としたコホート研究(WHITE-3)に参加した428名に,2021年3月にアンケート調査を郵送で実施した.返送があった325名のうち,脳器質性疾患や認知症の既往をもつ者,要支援・要介護認定を受けている者,データに欠損のある者を除外し,分析対象とした.フレイルは基本チェックリストを用いて測定し,3点以下をロバスト群,4~7点をプレフレイル群,8点以上をフレイル群とした(Satake et al., 2016).自己開示は先行研究(Jourard et al., 1958;菅沼, 1997)を参考に抽出した13項目(日課や趣味活動,最近嬉しかったこと,生きがい,自分にとって大切な思い出,自分の人柄や性格,人生経験で得た知恵や信念,これからの生き方,家族関係,仕事や社会活動の経験,収入源とお金の使い道,人付き合いに関する悩み事,身体健康に関する悩み事,認知機能に関する悩み事)について,「友人・知人にどれくらい話しているか」を1点(全く話したことがない)から5点(十分に話してきた)までの5件法で測定した.分析として,プレフレイル・フレイルを従属変数(参照:ロバスト),自己開示を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を自己開示の項目ごとに実施した.調整変数は,年齢,性別,教育歴,服薬数,独居,および仕事の有無とした.分析にはSPSS 27.0を使用し,有意水準は0.05とした.本研究は所属機関倫理委員会の承認を得た.
【結果】分析対象は237名(平均年齢75.8±5.1歳,女性65.4%)であり,ロバスト群117名(49.4%),プレフレイル群89名(37.6%),フレイル群31名(13.1%)であった.調整変数を考慮した分析の結果,プレフレイル群はロバスト群と比較して,生きがい(OR: 0.73, 95%CI: 0.53-0.94),自分にとって大切な思い出(OR: 0.74, 95%CI: 0.56-0.98),家族関係(OR: 0.75, 95%CI: 0.56-1.00),仕事や社会活動の経験(OR: 0.65, 95%CI: 0.49-0.86),収入源やお金の使い道(OR: 0.71, 95%CI: 0.52-0.96)についての自己開示が有意に低かった.一方で,フレイル群はロバスト群と比較して,日課や趣味活動(OR: 0.62, 95%CI: 0.40-0.96),最近嬉しかったこと(OR: 0.66, 95%CI: 0.44-0.99),人生経験で得た知恵や信念(OR: 0.63, 95%CI: 0.41-0.98)についての自己開示が有意に低かった.
【考察】プレフレイル群・フレイル群ともにロバスト群よりも自己開示が低い内容を有し,その内容が異なることが明らかになった.特に,プレフレイルでは家族や社会とのつながり,フレイルでは日常生活や人生経験についての内容が関連しているため,これらがフレイル対策の手がかりになる可能性がある.今後は,自己開示の性差や社会文化的背景の違いを考慮した更なる検討が求められる.