第57回日本作業療法学会

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[PN-9] ポスター:地域 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-1] 目的別の外出頻度と要支援・要介護リスクの関連

成田 悠哉1, 西山 貴裕2, 江戸 優裕1, 島田 美恵子1, 岡村 太郎1 (1.千葉県立保健医療大学健康科学部, 2.東京湾岸リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【序論】
 地域在住高齢者の介護予防の重点分野である閉じこもり予防や支援において,外出頻度が閉じこもりのスクリーニングとして用いられることが多い.高齢者の外出頻度の低下は,その後の寝たきりへの移行や死亡率を高めることが報告されている.外出頻度の低下が健康アウトカムに影響を及ぼすことが明らかになりつつあるが,生活における目的別の外出頻度と要支援・要介護リスクの関連を検証した報告は少ない.
【目的】
 地域在住高齢者を対象に目的別の外出頻度と基本チェックリストを活用した要支援・要介護リスクの関連を予備的調査により検討する.
【方法】
 3つの市区町村における地域在住高齢者を対象に2022年度に複数回実施した集合調査により,自記式質問紙にて回答が得られた45名を対象とした.日常生活に介助や介護が必要な者,65歳未満の者,回答に欠損がある者は解析から除外した.調査項目は,基本属性である年齢,性別,教育歴(6年未満,6~9年,10~12年,13年以上),家族構成(独居,夫婦二人,2世帯,その他),主観的健康感(とてもよい,まあよい,あまりよくない,よくない)に加え,目的別の外出頻度,基本チェックリスト(生活機能を評価する25問の質問紙)を評価した.目的別の外出頻度は食品の買い物,外食,食品以外の買い物,通院,創作活動・習い事,散歩,散歩以外のアウトドア・スポーツ,会合,ボランティアや地域行事,近所での友人との交流,役所,旅行,文化施設(図書館,美術館,映画館),娯楽施設(カラオケ,スポーツ観戦,パチンコ),仕事(正社員,パート,アルバイト),入浴施設,宗教施設の17項目に対して,「過去1年間の外出頻度についてそれぞれあてはまるものはどれですか」と尋ね,「毎日」「週に4~6回」「週に2~3回」「週に1回」「月に1~3回」「半年に1~3回」「年に1~3回」「該当しない」の8件法(1~8点)で回答を求めた.要支援・要介護リスクは辻らの報告をもとに,性・年齢を含む基本チェックリストの12項目で構成される要支援・要介護リスク評価尺度(0~48点)を用いた.各目的別の外出頻度と要支援・要介護リスクの関連をSpearmanの順位相関係数を用いて分析した.有意水準は5%とした.本研究は研究倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には本研究について書面と口頭にて説明を行い,同意書に署名を得た.
【結果】
 解析対象者は31名となり,平均年齢79.1±4.5歳,女性23名(74%),教育歴10年目以上29名(94%)であった.家族構成は独居16名(52%),夫婦二人暮らし11名(35%)であり,主観的健康感にとてもよい又はまあよいと回答した者は30名(97%)であった.要支援・要介護リスクと有意な相関を認めた目的別の外出頻度の項目は,「仕事(正社員,パート,アルバイト)」(rs = 0.402, p = 0.025)と「文化施設(図書館,美術館,映画館)」(rs = 0.365, p = 0.043)であった.【考察】
 地域在住高齢者において,仕事や文化施設を目的とした外出頻度と要支援・要介護リスクとの関連が示唆された.本研究は日常生活が自立している65歳以上の高齢者を対象とした検証ではあるが,外出目的を網羅的に考慮できていないこと,一時点の横断調査であること,対象者数が少なく,要支援・要介護リスクの交絡要因を考慮できていないことが限界として挙げられる.