第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-10] 子どもの居場所作り支援事業における作業療法士の役割について

梶原 利彦1, 荒木 桃子2, 仲間 弘美3, 中村 時子4 (1.学校法人智帆学園 琉球リハビリテーション学院作業療法学科, 2.ワンネス財団, 3.株式会社どりーむ ナーシングホームともいき, 4.学校法人智帆学園 琉球リハビリテーション学院きんのあかり)

【序論】この発表に際し,COI関係にある企業はない.また,発表に関して対象者の同意を得ている.
 地域での作業療法士の役割は時代とともに変化している.高齢化社会に対応すべく地域包括ケアシステムの構築が図られてきたが,今日ではすべての分野を対象にした「地域共生社会」を実現するための仕組みへと変化している.沖縄県においては子どもの育ち,子育てをめぐる社会的,経済的な環境変化が問題化しており,背景には失業率が高水準であり県民所得が全国最下位であることやひとり親家庭の出現率が高いことが問題となっている.
【目的・方法】
この発表では,子どもの居場所作り教室に作業療法士が携わったことに対して,専属支援員からの意見を聴取し,今後の方向性や担うべき役割を検討していくことを目的とする.
琉球リハビリテーション学院では,平成28年から学院の所在地である金武町の子どもの居場所作り支援事業業務委託をうけて以来,こどもサポート事業を実施しており,現在「きんのあかり」を運営している.事業の目的は,貧困家庭の子供たちが健やかに育成され,将来の自立した生活を支援することである.対象者は町内在住の小学生から高校生までの児童生徒であるが,利用にあたっては,役場の子ども支援課により支援が必要と判断されたものが対象となる.定員30名の登録があり,一日10名~15名の利用がある.実施内容は送迎,学習サポート(宿題),交流(遊び),夕食提供(食事)が主であり,行事として毎月の誕生日会,季節行事(クリスマス,豆まきなど)を実施している.運営は専属支援員1名の他,学生がサポートスタッフとして2~3名ずつ交代で従事している.学院内の施設という点から,各学科教員も専門性を生かして必要に応じて携わっている.
 作業療法士は筆者が2年前から主担当として関わっており,2週に1度専属支援員とのミーティングを行い,運営方法検討や,児童生徒の様子,関わり方などの検討を行っている.専属支援員として従事していた3名に対し,作業療法士が携わっていることに対しての思いを聴取した.
【結果】
専門知識に対するメリットを感じているといった意見が多くを占めており,主には「活動について」(プログラムを通じて利用児の達成感や集団凝集性が高まる)(利用児の特性に合った活動を実施できる),「利用児の対応について」(情緒面や発達の気になる子についてのアセスメントと関わり方の助言)の意見が多かった.また「支援員自身の思い」(相談できる関係性が,利用児の関わりに自信が持て,支援員自身の安心感や自信に繋がる)といった意見も聞かれた.作業療法士に限らず,学院内の施設であるということで,専門職スタッフがそばにいる存在であるということで,緊急性が高いケースの迅速な相談が行えたことが良かったことも挙がっていた.
【考察】
これらの意見から,作業療法士の役割について,専門的な知識を持った関わりと迅速な対応が求められていることが分かった.居場所(集団)や,利用児(個人)に対する専門的な視点を持った関わりが,支援員自身の安心感に繋がっており,居場所としての「安心,安全な場所」を保つことに役立っていると考えた.今後,より支援員の思いを大事にしながら他職種と連携を強め,貧困対策にとどまらずネグレクトや非行対策を含め,地域で健やかに子どもたちが成長できるサポートに携わっていきたい.