第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-9] ポスター:地域 9

Sat. Nov 11, 2023 12:10 PM - 1:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-9-11] 地域若者サポートステーション運営事業所での作業療法士の実践報告

嶋川 昌典1,2, 朽木 弘寿2, 岩田 夏彦3 (1.びわこリハビリテーション専門職大学リハビリテーション学部作業療法学科, 2.特定非営利活動法人 就労ネットワーク滋賀, 3.豊郷病院リハビリテーション科)

目的)本報告はA県の地域若者サポートステーション(以下,サポステ),日中一時支援(以下,日中一時),子供若者育成支援(以下,子若),B型就労継続支援(以下,B型)を運営する事業所で雇用された筆者が,そこでの介入実践を報告し,作業療法士がこのような領域で活躍できる実践スキルを考察する.
背景)地域や予防領域での作業療法実践の報告は多くなってきているが,サポステや子若での作業療法士の実践報告は少ない.その理由は制度の問題から作業療法士を常勤雇用する条件が整い難いこと,作業療法士自身が医療福祉以外の領域で活躍することに自信を持てないことが考えられる.しかし近年,引きこもりや不登校,診断名がつきにくい事例の就労に関する課題が増加していること,そのような若者支援が社会的に求められており,この領域で作業療法士の介入実践を示す必要があると考えた.発表に際しての倫理的手続きは,事業所関係者に報告の趣旨と目的を説明し同意を得た.
事業所と筆者について)A県の就労困難な若者の支援を行う事業所であり,サポステ4カ所,日中一時1カ所,子若1カ所,B型1カ所を運営している.筆者は作業療法士の経験25年(主に精神科領域)であり,認定作業療法士と第一種衛生管理者を取得していた.2022年8月から週一回の非常勤,役割は各事業所の視察,そこでの課題把握,解決に向けた研修会などの企画運営,事例検討会への参加であった.
介入実践)以下,具体的な実践とその基盤となる実践スキルを考察する.
①カウンセリング技術向上に向けた勉強会.サポステ,子若の主業務は相談支援であり,カウンセリング技術は必須である.しかし,相談業務は密室で行うため技術共有が従業員間で共有でき難いため,我流になりやすいことが課題となっていた.そのため,マイクロカウンセリングの知識研修,実際に検者被験者のロールプレイ(15分)を行い,その逐語録を筆者がフィードバックする場を設定している(月1回,参加者14名).この基盤となる実践スキルは作業療法の「自己の治療的利用」を学んだ経験と考える.精神科作業療法士はセラピストと対象者との関係性を振り返るため,定期的にやり取りの逐語録を取る習慣があり,それが基盤にあると考えた.
②認知行動療法の学習会.日中一時で実施(月1回,参加者4〜5名).事業所の利用者は養護学校を卒業し,就労に関して課題を抱えた軽度知的障害や精神障害,発達障害の方であった.彼らにメタ認知の教材を用いた学習会を実践している.尚,この活動は病院の作業療法士に手伝ってもらっている(有償).地域での介入実践を経験してもらうためであり,筆者はコーディネーター役を担っている.
③その他.B型では職員の対象者への関わり方,自身の価値観を明らかにするようなグループワーク,そして事業所全体の職員に対して疾患や障害についての講義形式の研修会を行なった.今後は子若での引きこもりや不登校児の親を対象にした家族会で家族療法を実践する予定である.これらの基盤となる実践スキルは多職種連携を解決するための信念対立解明アプローチの学習経験,精神病院での家族療法の経験が影響していると考えた.
まとめ)各実践に共通した作業療法スキルは,対象者や職員,事業所の課題を構造的に捉えられることと考える.このようなスキルは,「箱づくり法」の治療構造論,「人間作業モデル」のシステム論,「信念対立解明アプローチ」の構造構成主義を学んだ経験と考える.その学習経験が作業療法士が地域の若者支援で働ける重要なファクターになると考える.