[PN-9-2] 地域在住高齢者における基本チェックリストの認知機能該当項目数と活動実施率との関連
【はじめに】
基本チェックリスト(Kihon Checklist:KCL)は,フレイルの包括的なスクリーニングとして有用性が示されている(Sewo Sampaio et al.,2016).その中でも,KCLの認知機能項目(KCL-cognitive function:KCL-CF)は,主観的な認知機能低下を測定し,該当数が増加するほど認知症発症の危険度が増し(Tomata Y et al.,2017),要介護認定の発生率が上昇する(Kojima S et al.,2019).しかし,地域在住高齢者のKCL-CFと具体的な活動・参加との関連は不明である.地域在住高齢者のライフスタイルに焦点を当てた具体的な介入につなげるため,本研究は,地域在住高齢者のKCL-CF該当数と,活動領域別の実施率との関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
都市郊外A地区1606世帯(高齢者世帯以外も含む)に2部ずつ配付し,地域在住高齢者769名より回収した(調査期間2021年10~11月,調査時のA地区高齢化率45.5%のため回収率の概算52.6%).1年以内の入院歴がある者,要支援・要介護認定者,欠損ケースを除き,576名(年齢中央値75.2歳,女性53.1%)を分析対象とした.KCL-CF(項目18,19,20)の該当数0から3の4群に区分した.活動実施率は,Activity Card Sort-Japan version(ACS-JPN)を用い,手段的日常生活活動(IADL)26項目,身体負荷の少ない余暇活動(L-leisure)18項目,身体負荷の高い余暇活動10項目,社会文化的活動18項目の4領域について,調査時に実施している項目の割合を算出した.共変量として,年齢,性別,同居世帯,就労有無,運動器の機能(KCL-Physical strength),健康関連QOL(SF-8:身体的側面PCS,精神的側面MCS),社会的ネットワークの量(LSNS-6)を調査した.分析は,KCL-CFの該当数による4群の対象者属性や共変量の差をKruskal Wallis検定とカイ二乗検定により群間比較を行った.次に,KCL-CF該当数を従属変数(参照カテゴリ:KCL-CF該当なし),ACS-JPN4領域の活動実施率とすべての共変量を独立変数とし,多項ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSSver.28を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認(承認番号:20190097-4)および,A地区自治会協議会の許可を得て実施した.
【結果】
対象者のKCL-CF該当数は0個390名(67.7%),1個158名(27.4%),2個21名(3.6%),3個7名(1.2%)であった.KCL-CF該当数による4群間においてACS-JPNのIADLとL-leisureの実施率,運動器の機能,PCS,MCSに有意な差を認めた(p<0.001).多項ロジスティック回帰分析の結果,ACS-JPNによるIADL実施率の低下は,KCL-CF該当数2個であることと有意に関連した(OR=0.95,95%CI:0.92-0.98,p=0.002).
【考察】
本研究対象者のKCL-CF該当者数割合は,先行研究(Kojima S et al.,2019)と同程度であった.また,KCL-CF の2項目に該当することと,家庭生活の持続に必要なIADLの実施率が低いことが関係していた.主観的認知機能低下を有することとIADLの困難感には関連があり(McAlister C et al., 2016),IADLの能力低下は認知症リスクの予測にもなり得る(Roehr S et al.,2019).本研究は因果関係には言及できないが,地域在住高齢者の認知症や要介護状態の予防のため,KCL-CF測定による活動支援の有用性が示唆された.今後は,縦断的調査により,精査する必要がある.
基本チェックリスト(Kihon Checklist:KCL)は,フレイルの包括的なスクリーニングとして有用性が示されている(Sewo Sampaio et al.,2016).その中でも,KCLの認知機能項目(KCL-cognitive function:KCL-CF)は,主観的な認知機能低下を測定し,該当数が増加するほど認知症発症の危険度が増し(Tomata Y et al.,2017),要介護認定の発生率が上昇する(Kojima S et al.,2019).しかし,地域在住高齢者のKCL-CFと具体的な活動・参加との関連は不明である.地域在住高齢者のライフスタイルに焦点を当てた具体的な介入につなげるため,本研究は,地域在住高齢者のKCL-CF該当数と,活動領域別の実施率との関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
都市郊外A地区1606世帯(高齢者世帯以外も含む)に2部ずつ配付し,地域在住高齢者769名より回収した(調査期間2021年10~11月,調査時のA地区高齢化率45.5%のため回収率の概算52.6%).1年以内の入院歴がある者,要支援・要介護認定者,欠損ケースを除き,576名(年齢中央値75.2歳,女性53.1%)を分析対象とした.KCL-CF(項目18,19,20)の該当数0から3の4群に区分した.活動実施率は,Activity Card Sort-Japan version(ACS-JPN)を用い,手段的日常生活活動(IADL)26項目,身体負荷の少ない余暇活動(L-leisure)18項目,身体負荷の高い余暇活動10項目,社会文化的活動18項目の4領域について,調査時に実施している項目の割合を算出した.共変量として,年齢,性別,同居世帯,就労有無,運動器の機能(KCL-Physical strength),健康関連QOL(SF-8:身体的側面PCS,精神的側面MCS),社会的ネットワークの量(LSNS-6)を調査した.分析は,KCL-CFの該当数による4群の対象者属性や共変量の差をKruskal Wallis検定とカイ二乗検定により群間比較を行った.次に,KCL-CF該当数を従属変数(参照カテゴリ:KCL-CF該当なし),ACS-JPN4領域の活動実施率とすべての共変量を独立変数とし,多項ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSSver.28を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認(承認番号:20190097-4)および,A地区自治会協議会の許可を得て実施した.
【結果】
対象者のKCL-CF該当数は0個390名(67.7%),1個158名(27.4%),2個21名(3.6%),3個7名(1.2%)であった.KCL-CF該当数による4群間においてACS-JPNのIADLとL-leisureの実施率,運動器の機能,PCS,MCSに有意な差を認めた(p<0.001).多項ロジスティック回帰分析の結果,ACS-JPNによるIADL実施率の低下は,KCL-CF該当数2個であることと有意に関連した(OR=0.95,95%CI:0.92-0.98,p=0.002).
【考察】
本研究対象者のKCL-CF該当者数割合は,先行研究(Kojima S et al.,2019)と同程度であった.また,KCL-CF の2項目に該当することと,家庭生活の持続に必要なIADLの実施率が低いことが関係していた.主観的認知機能低下を有することとIADLの困難感には関連があり(McAlister C et al., 2016),IADLの能力低下は認知症リスクの予測にもなり得る(Roehr S et al.,2019).本研究は因果関係には言及できないが,地域在住高齢者の認知症や要介護状態の予防のため,KCL-CF測定による活動支援の有用性が示唆された.今後は,縦断的調査により,精査する必要がある.