第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

理論

[PO-1] ポスター:理論 1

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PO-1-1] クライエント中心の可能化のカナダモデルを用いた支援を行い,本人の希望する作業に寄り添うことができた事例

南 梢, 古田 憲一郎 (医療法人社団 苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院)

【はじめに】
クライエント中心の実践とは, クライエントが「作業ができること」を目的とした協業的アプローチである. 本症例は多趣味で行いたいことはあるが, 目的の作業に従事できていない状態であった. そのため, 退院1ヶ月前にCOPMを用いて行いたい作業を明確化し,クライエント中心の可能化のカナダモデル(以下CMCE)を用いて支援を行った. その結果, 目的とする作業に従事することができ, 今後の課題について自ら気づき, 解決できるようになった. 尚, 本報告に際して事例に説明を行い, 同意を得た.
【事例紹介】
40歳代女性, 右被殻出血を発症. 急性期病院を経て52病日目に当院へ転院. 病前は, 叔父・叔母と同居しており, 派遣の仕事を週5回行っていた. 多趣味で, 仕事帰りや休日は外出する事が多かった. 入院当初から, 趣味活動を再開したいとの希望が強かった.
【作業療法初期評価】
198病日目. MMSE29点, Br.stageⅡ, FIM90点, 病棟では車椅子を使用し, 日中のADL自立.
COPM(遂行度/満足度/重要度)を用いて今後行いたいことを聴取した. 1.自宅でシャワー浴が行える(3/2/10), 2.ディズニーリゾートに家族と車で行ける(5/3/10), 3.屋外で電動車いすを使用できる(1/1/10). 「全てがダメで, 何ができるか分からない」との発言があった.
【介入の基本方針】
クライエントの決定を尊重することを第一に考え, その上で予想されるリスクについて説明し, 支援を行った.
【介入経過】
今回, CMCEを用いた支援を行った(使用した技能を文中に示す). 198病日目, COPMを実施し, 共に取り組むことをクライエントに伝えた(協業). 200病日目, 自宅環境を想定し, シャワー浴を行った. 車椅子からシャワーチェアへの移乗時, 「怖い, どう体を動かせばいいか分からない」と訴えた. 浴室内では, 何度か物を落とし, OTに助けを求めた. 練習後, 福祉用具の提案・動作指導・家族への介助指導を実施した(適応・教育・コーチ). 219病日目, 屋外で, 電動車椅子に試乗した. 主に, ディズニーで使用したいとの希望があり, 施設内のマップを確認しながら, 使用する際の注意点を伝えた(適応・教育・コーチ). 224病日目, シャワー浴は, 移乗は軽介助・浴室内の動作は一人で可能となり,「 自宅では物をここに配置したい, この手すりを使ったらうまくいくと思う」など自身で課題を解決する様子が見られた. 尚, 全ての期間で介入後に振り返りを行い, 対話を通してうまくいったこと・今後の課題について整理した. 自身で解決できないことは, 相談しながら解決した(コーチ・相談).
【結果】
226病日目. FIM101点, 日中は部屋からトイレの移動は杖歩行にて自立.
COPM(遂行度/満足度)は, 1.自宅でシャワー浴が行える(6/6), 2.ディズニーリゾートに家族と車で行ける(10/8), 3.屋外で電動車いすを使用できる(9/10). 今後の目標について「家族と夕方に家の周りを散歩したい」との発言があった.
【考察】
今回, クライエント中心の実践を行い, COPMの遂行度・満足度がともに向上した. その理由として, CMCEの視点を用いて介入したことで, 良好な協業関係を築くことができ, さらに適応・教育・コーチ・相談がうまく循環し, クライエントが自身の課題について考えるきっかけになったのではないかと考える.