[PO-1-3] 作業療法士と対象者との間にはどのような差異・ギャップが存在するのか
【背景と目的】
世界作業療法士連盟は「作業療法(以下,OT)はクライエント(以下,CL)中心の保健専門職で,作業を通して健康と安寧を促進する」と定義しており,OTにおいてCL中心の実践は重要である.しかし,先行研究では,作業療法士(以下,OTR)がCL中心の実践と認識している場合でも,CLは否定的な見解を示したとする報告もあり(Maitra & Erway,2006),OTRとCLの間にはギャップが存在する.そこで,OTRとCLとの間にはどのようなギャップ・差異があり,どのように測定されているのかを明らかにすることを目的に,文献研究を行った,なお,本研究において開示すべきCOI項目はない.
【方法】
検索にはPubMedを用いた.検索キーワードはOccupational Therapist,Client,GapもしくはDifferenceとした(最終検索2023年2月12日).包含基準は①OTRとCL間に存在する差異・ギャップに言及している,②原著論文.除外基準は①文献研究,②総論・特集・解説,③理論や評価法の開発論文,④本文が入手不可とした.対象文献の分析は,①アブストラクトから包含・除外基準に基づいて各論文を選別,②文献数の単純集計,③包含基準に合致した論文の本文チェックを行い,OTRとCLとの間にどのような差異・ギャップが指摘されているか,その差異・ギャップを測定している手段を抽出し,結果を考察した.
【結果】
PubMedでは252本の論文が抽出され,包含・除外基準に則って8本が分析対象となった.その内訳は,量的研究4本,質的研究3本,混合研究1本.日本,中国,フランス,イタリア,ノルウェー,アメリカで各1本,スウェーデンでの報告が2本であった.領域は身体障害領域,老年期障害領域であり,対象者は脳血管疾患患者,認知症患者,慢性疾患患者,高齢者であった.評価・測定方法には,半構造化面接2本の他,フォーカスグループインタビュー,談話分析,COOP/WONCAチャート,満足度プロファイル,OTRとCLの目標の一致度,Functional Independence Measure,Barthel Index,入院日数,医療費,自宅退院率,各疾患の主要アウトカムがあった.これらの論文の主要テーマは,OTRを含む医療従事者とCLとの間にある,ニーズと優先事項の認識,OTの目標,日常生活活動の遂行度,身体機能の認識,Quality of lifeに対する満足度,支援介入の焦点,ケアプランへの意見の反映度,治療計画・プロセスの決定を巡る差異・ギャップに焦点化されていた.
【考察】
本邦においては,CL中心のOT実践のために生活行為向上マネジメントが示されており(日本作業療法士協会,2020),現在も強く推進されている.この生活行為向上マネジメントでは,OTのプロセスをインテーク,生活行為アセスメント,生活行為向上プラン,介入,再評価・見直し,終了・課題申し送りという流れで示している.今回の文献研究の結果とこのプロセスを照らし合わせると,ニーズや目標の共有というインテークの段階,日常生活活動や身体機能などを巡る評価・認識というアセスメントの段階,ケアプランへの意見の反映や治療計画の決定というプラン・介入の段階という,生活行為向上マネジメントのプロセスの各段階で,OTRとCLとの間に差異・ギャップが指摘されている結果となった.
先行研究では,CL中心のOTにおける目標設定を中心として,初学者と熟達者の間でも差異が報告されている(Suc et al.,2020).このように,CL中心のOTは非常に重要であると同時に,非常に多くの課題も抱えている.こうした現状にあっては,まずは我々OTRが,OTRとCLの間には差異・ギャップがあるということを明確に認識した上で,CL中心のOTについて学びを深め,実践していくことが求められていると考える.
世界作業療法士連盟は「作業療法(以下,OT)はクライエント(以下,CL)中心の保健専門職で,作業を通して健康と安寧を促進する」と定義しており,OTにおいてCL中心の実践は重要である.しかし,先行研究では,作業療法士(以下,OTR)がCL中心の実践と認識している場合でも,CLは否定的な見解を示したとする報告もあり(Maitra & Erway,2006),OTRとCLの間にはギャップが存在する.そこで,OTRとCLとの間にはどのようなギャップ・差異があり,どのように測定されているのかを明らかにすることを目的に,文献研究を行った,なお,本研究において開示すべきCOI項目はない.
【方法】
検索にはPubMedを用いた.検索キーワードはOccupational Therapist,Client,GapもしくはDifferenceとした(最終検索2023年2月12日).包含基準は①OTRとCL間に存在する差異・ギャップに言及している,②原著論文.除外基準は①文献研究,②総論・特集・解説,③理論や評価法の開発論文,④本文が入手不可とした.対象文献の分析は,①アブストラクトから包含・除外基準に基づいて各論文を選別,②文献数の単純集計,③包含基準に合致した論文の本文チェックを行い,OTRとCLとの間にどのような差異・ギャップが指摘されているか,その差異・ギャップを測定している手段を抽出し,結果を考察した.
【結果】
PubMedでは252本の論文が抽出され,包含・除外基準に則って8本が分析対象となった.その内訳は,量的研究4本,質的研究3本,混合研究1本.日本,中国,フランス,イタリア,ノルウェー,アメリカで各1本,スウェーデンでの報告が2本であった.領域は身体障害領域,老年期障害領域であり,対象者は脳血管疾患患者,認知症患者,慢性疾患患者,高齢者であった.評価・測定方法には,半構造化面接2本の他,フォーカスグループインタビュー,談話分析,COOP/WONCAチャート,満足度プロファイル,OTRとCLの目標の一致度,Functional Independence Measure,Barthel Index,入院日数,医療費,自宅退院率,各疾患の主要アウトカムがあった.これらの論文の主要テーマは,OTRを含む医療従事者とCLとの間にある,ニーズと優先事項の認識,OTの目標,日常生活活動の遂行度,身体機能の認識,Quality of lifeに対する満足度,支援介入の焦点,ケアプランへの意見の反映度,治療計画・プロセスの決定を巡る差異・ギャップに焦点化されていた.
【考察】
本邦においては,CL中心のOT実践のために生活行為向上マネジメントが示されており(日本作業療法士協会,2020),現在も強く推進されている.この生活行為向上マネジメントでは,OTのプロセスをインテーク,生活行為アセスメント,生活行為向上プラン,介入,再評価・見直し,終了・課題申し送りという流れで示している.今回の文献研究の結果とこのプロセスを照らし合わせると,ニーズや目標の共有というインテークの段階,日常生活活動や身体機能などを巡る評価・認識というアセスメントの段階,ケアプランへの意見の反映や治療計画の決定というプラン・介入の段階という,生活行為向上マネジメントのプロセスの各段階で,OTRとCLとの間に差異・ギャップが指摘されている結果となった.
先行研究では,CL中心のOTにおける目標設定を中心として,初学者と熟達者の間でも差異が報告されている(Suc et al.,2020).このように,CL中心のOTは非常に重要であると同時に,非常に多くの課題も抱えている.こうした現状にあっては,まずは我々OTRが,OTRとCLの間には差異・ギャップがあるということを明確に認識した上で,CL中心のOTについて学びを深め,実践していくことが求められていると考える.