[PO-4-1] 自発性が低下したクライエントに対しVQを用い作業適応に向けた事例
【はじめに】人間作業モデルの意志質問紙(以下VQ)は観察から作業への動機等を評価できる有用な評価法であるが,自発性に着目した報告は少ない.今回,VQを用いた介入によりCLに良い結果が得られたので報告する.なお本発表に関して本事例の了承は得ている.
【事例紹介】80歳代女性で息子と二人暮らしをしていた.自宅で転倒し外傷性くも膜下出血を発症し,1ヶ月後に当院回復期リハビリテーション病棟へリハビリテーション(リハ)目的で入院となった.家族は今後は施設も視野に入れているとのことであった.
【初回評価】作業遂行機能では耐久性が低い以外,身体機能面での阻害要因は少なかったが,自発性の低下からADLはFIMは運動項目21点,認知項目20点と特に運動項目で低値を示した.面接では「歩きたいが疲れるから起きたくない」と離床に対して悲観的な発言が聞かれ,作業については多く語らなかった.そのためVQを用いて複数の作業場面を観察することとした.
【VQ】面接に挙がった歩行,馴染みのある編み物,偶然参加した輪投げを評価した結果,歩行29点,編み物29点,輪投げ39点であった.輪投げは他の作業と比較して「完成や達成のために活動を続ける」の項目が高値であった.また全作業とも「新しいことをやろうとする」は低値であった.
【介入経過】初期は輪投げから作業有能性が得られやすくかつ勝敗による達成感が明確な作業に興味を持つのではないかと仮説を立てた.これらの特徴を包括した風船バレー,キャッチボールゲームを提供し,VQを行うと共に37点と高値を示した.これらの作業で介入すると活動に参加するようになったが主体参加はあまりなかった.しかし,耐久性は向上し,離床時間が増加した.
中期ではリハ以外でも離床が可能となったが病棟では孤立,集団活動は拒否的であった.OTとは信頼関係が得られたため面接を行うと,幼少期に特定の友人としか関わりを持たなくなったことが聞かれた.このことから退院後の作業を考えると,他の利用者等の社会的環境が問題となる可能性が示唆された.介入内容に社会交流要素を加え,まずは馴染みの環境を作るために同室者との集団活動に誘導し,作業療法士を媒体として交流を促した.また他者が好みの作業を行っている際は共に参加する等の段階付けにより特定の患者と関わりができるようになった.
後期では看護師や他患者にも自ら話す様子が見られ,孤立することはなくなっていた.リハ時は仲の良いスタッフや馴染みのある患者を見つけた際には集団活動に誘う様子も見られた.また作業を行う際には意欲的で自ら難易度調整を行うようになり新しいことにも挑戦する姿勢を見せ自発性が向上した.
【最終評価】ADLはFIMは運動項目65点,認知項目25点とふらつくことがあり見守りが必要なこともあるが,ADLへの主体的参加が可能となった.VQでは全ての項目で50点以上と高値であった.退院後の電話調査ではADLも自立をしており,デイサービスでは自分から他者やスタッフへ交流をしているとのことであった.
【考察】本事例ではVQの評価や人間作業モデルの考え方を利用することにより作業への主体的参加を促し,作業適応の状態になったと考える.認知機能が良好で自発的に作業ニードを訴えることができない対象者にも本モデルは有用であると考える.
【事例紹介】80歳代女性で息子と二人暮らしをしていた.自宅で転倒し外傷性くも膜下出血を発症し,1ヶ月後に当院回復期リハビリテーション病棟へリハビリテーション(リハ)目的で入院となった.家族は今後は施設も視野に入れているとのことであった.
【初回評価】作業遂行機能では耐久性が低い以外,身体機能面での阻害要因は少なかったが,自発性の低下からADLはFIMは運動項目21点,認知項目20点と特に運動項目で低値を示した.面接では「歩きたいが疲れるから起きたくない」と離床に対して悲観的な発言が聞かれ,作業については多く語らなかった.そのためVQを用いて複数の作業場面を観察することとした.
【VQ】面接に挙がった歩行,馴染みのある編み物,偶然参加した輪投げを評価した結果,歩行29点,編み物29点,輪投げ39点であった.輪投げは他の作業と比較して「完成や達成のために活動を続ける」の項目が高値であった.また全作業とも「新しいことをやろうとする」は低値であった.
【介入経過】初期は輪投げから作業有能性が得られやすくかつ勝敗による達成感が明確な作業に興味を持つのではないかと仮説を立てた.これらの特徴を包括した風船バレー,キャッチボールゲームを提供し,VQを行うと共に37点と高値を示した.これらの作業で介入すると活動に参加するようになったが主体参加はあまりなかった.しかし,耐久性は向上し,離床時間が増加した.
中期ではリハ以外でも離床が可能となったが病棟では孤立,集団活動は拒否的であった.OTとは信頼関係が得られたため面接を行うと,幼少期に特定の友人としか関わりを持たなくなったことが聞かれた.このことから退院後の作業を考えると,他の利用者等の社会的環境が問題となる可能性が示唆された.介入内容に社会交流要素を加え,まずは馴染みの環境を作るために同室者との集団活動に誘導し,作業療法士を媒体として交流を促した.また他者が好みの作業を行っている際は共に参加する等の段階付けにより特定の患者と関わりができるようになった.
後期では看護師や他患者にも自ら話す様子が見られ,孤立することはなくなっていた.リハ時は仲の良いスタッフや馴染みのある患者を見つけた際には集団活動に誘う様子も見られた.また作業を行う際には意欲的で自ら難易度調整を行うようになり新しいことにも挑戦する姿勢を見せ自発性が向上した.
【最終評価】ADLはFIMは運動項目65点,認知項目25点とふらつくことがあり見守りが必要なこともあるが,ADLへの主体的参加が可能となった.VQでは全ての項目で50点以上と高値であった.退院後の電話調査ではADLも自立をしており,デイサービスでは自分から他者やスタッフへ交流をしているとのことであった.
【考察】本事例ではVQの評価や人間作業モデルの考え方を利用することにより作業への主体的参加を促し,作業適応の状態になったと考える.認知機能が良好で自発的に作業ニードを訴えることができない対象者にも本モデルは有用であると考える.