第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-1] ポスター:基礎研究 1

Fri. Nov 10, 2023 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PP-1-1] カナダ作業遂行測定の臨床的に意義のある最小変化量と最小可検変化量

唯根 弘1, 佐々木 剛1, 宮田 一弘2, 白石 英樹1 (1.茨城県立医療大学保健医療学部 作業療法学科, 2.茨城県立医療大学保健医療学部 理学療法学科)

【はじめに】カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:COPM)の再評価に関して,介入前後の2点以上の変化は臨床的に有意な差であるとされてきた.しかしMcColl らによる2023年の最新のレビューにおいては「2点」に設定された根拠は乏しく,様々なクライエントや介入状況において臨床的に意義のある最小変化量(minimum clinically important difference: MCID)や最小可検変化量(Minimal Detectable Change: MDC)を検証していく必要があると結論付けられている.MCID,MDCは研究や臨床の一事例においても介入効果の検証に参照されることが多いが,その類義語が多く存在するため国際文献データベースより網羅的に検索し,対象者の状況に合った最新の数値を知るには煩雑な工程を必要とする.データベースから得られた膨大な文献データを効率的にスクリーニングするための支援ソフトは複数存在するが,近年では機械学習を用いたスクリーニングソフトウェアが利用可能であり,迅速にMCID,MDCの情報を統合することで作業療法介入の効果検証に役立つ可能性がある.
【目的】機械学習を用いた迅速システマティックレビューの効率性および精度を検証し,カナダ作業遂行測定の臨床的に意義のある最小変化量と最小可検変化量を調査し統合すること.
【方法】複数の検索データベース(MEDLINE,CINAHL,OTseeker,PEDro)を使用し,COPMに関してMCIDまたはMDCが算出された研究を抽出した.本研究は事前のプロトコル登録(UMIN試験ID:UMIN000050296)に基づき,データベース検索を2023年2月に実施した.1次スクリーニングにおいて機械学習を用いた迅速スクリーニングにASReviewを使用し,論文選択の傾向を学習し関連性が高い論文から優先的に関係・無関係をレビュアーが判断していき,無関係の論文が10回以上続いた場合にそれ以降のスクリーニングを省略した.続いて,同レビュアーが再度Rayyanを用いて通常スクリーニングを実施し,全ての抽出論文の関係・無関係を判断した.2次スクリーニングでは研究論文の全文を確認し,最終的に選択された論文に対して報告内容の抽出とバイアスリスクの評価を2名のレビュアーが独立して行った.
【結果】重複削除後の281編の論文を1次スクリーニング対象とした.Rayyanを用いた通常スクリーニングの総作業時間は2時間2分,抽出論文は7編(うち2編は関係する可能性あり)であったのに対し,ASReviewを用いた迅速スクリーニングでは全体の14.6%でスクリーニングを終え総作業時間は21分,抽出論文は6編であった.2次スクリーニングの結果5編が抽出され,通常・迅速スクリーニングの両手法において抽出された論文は一致した.COPMに関するMCIDの抽出論文は4編(遂行度0.90~4.20点,満足度1.45~5.80点),MDCが1編(遂行度1.47~3.14点,満足度1.80~4.00点)であった.各研究の対象者は,様々な疾患の入院・外来患者,亜急性期入院患者,地域在住高齢者,強直性脊椎炎であり,再測定期間は2週間後~3か月後であった.各研究間では発症からの時期,介入内容・作業目標だけでなく,MCIDの算出方法などバイアスリスクに関わる事項が異なっていた.
【考察】機械学習を用いた迅速スクリーニングは通常スクリーニングと比較して最終的な抽出論文は一致しており,効率的にシステマティックレビューを遂行可能であった.COPMのMCID,MDC値を参照する際には,各研究における対象者や介入条件を考慮する必要がある.迅速システマティックレビューにより様々な対象者や介入状況においてMCID,MDCの報告を迅速に参照することで,対象者の効果検証と介入方針への一助になる可能性がある.