第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-10] ポスター:基礎研究 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PP-10-2] 作業療法実践において動機づけに紐づけられている言葉の内容はなにか

木下 輝1, 石橋 裕2, 木下 梓織3 (1.社会医学技術学院, 2.東京都立大学大学院, 3.社会福祉法人牛久博愛会 フロンティア牛久)

【はじめに】作業療法理論のひとつである人間作業モデルでは,作業がどのように動機づけられ,パターン化され,遂行されるのかを説明しており,そうした多様な現象の説明を提供することで,人間作業に対する全体論的な見方を提供している(Taylor RR,2019).また,コーチング心理学の「動機付け面接法」はモチベーション向上に関するものであり,共感と承認を特徴として作業療法士(以下OTR)による支援でも頻繁に用いられることがある.このようなことから,動機付けは作業療法とも結びつきの深い概念といえる.ところで,作業療法実践報告などにおいても動機付けという用語を見かける機会は多いものの,CL自身の生活行為や介入プラグラムなどどういった目的で動機づけの支援がなされているのか,これまでのところ明らかにされていない.そこで今回,作業療法においてどのような目的で動機づけという用語が用いられているのか把握することを目的に文献レビューを行い,報告の総数,種類,作業療法実践内容とその評価指標ついて示唆を得ることとした.なお,本調査において開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】国内の作業療法実践において発表された実践報告を対象とした.検索は複数のデータベース(医学中央雑誌web,CiNii,J-STAGE)を利用して実施した.「作業療法 and (動機付けorモチベーションor達成動機) 」を検索式とし,独立した研究者2名で検索を実施した.検索日は2023年2月15日であった.この一連の手順は独立した2名の研究者で行い,結果が異なる場合には合議で決定した.具体的には,それぞれのデータベースから収集された結果を統合し,重複した結果を除外した後に本文を精読した後に,取り込み基準に合致する報告を採用した.分析について,本研究では計量テキスト分析のフリーソフトである KH Coder Ver.3 を用いて分析した.尚,本研究 では作業療法実践の支援構造に焦点を当てる目的で,論文中の「方法」「結果」「考察」を対象にし,語の共起から支援構造を明らかにするために共起ネットワークを出力し,出現したカテゴリごとに文章中での語の使用状況を確認した上でカテゴリ名を名づけた.なお,本研究は日本作業療法士協会の論文投稿に関する倫理指針に準じて実施した.
【結果】Web検索により特定された報告は206論文と23症例報告だった.このうち,取り込み基準に合致した,32論文,16症例報告を採用した.対象領域の上位は身体障害領域が19例,精神障害領域13例,高齢期11例であった.対象疾患は脳卒中が最も多く,次いで認知症,統合失調症となった.分析は,抽出された総抽出語数309552語を対象に実施した.その結果,共起ネットワークから複数のカテゴリに分類され,動機付けと関連する語として「作業」や「ADL」,「訓練」などのカテゴリが生成された.
【考察】作業療法実践において動機づけに焦点を当てた支援構造は,共起ネットワークの生成により複数に分かれていること,各支援構造が全体を補完し,包括的な支援を行っていることが示唆された.