第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-11] ポスター:基礎研究 11

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PP-11-1] ロボット支援前立腺全摘除術後の尿禁制と骨盤底筋体操の関係についての検討

山田 英二1, 豊田 泰美1, 中山 泰博1, 浅田 幸江2 (1.福井赤十字病院リハビリテーション科, 2.福井赤十字病院腎センター)

【はじめに】
当院では前立腺癌に対して年間50例前後のロボット支援前立腺全摘除術(以下RALP)が施行されている.当院では排尿ケアチームに作業療法士が登録されており,RALP後の尿失禁に対しても骨盤底筋体操の指導として関わっている.RALP後の尿失禁の予測因子の報告などは多くみられるものの,骨盤底筋体操についての検討は散見する程度である.今回,退院後の骨盤底筋体操継続の有無が,術後のパッドの枚数の変化に影響があるかを検討したので以下に報告する.尚,演題発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業等はありません.
【目的】
RALP後の尿失禁と骨盤底筋体操の関連について検討する
【方法】
2020年5月~2022年7月に当院でRALPを施行した79例のうち,術後6か月以上の経過を追えた68例とした.入院中に1~2回の骨盤底筋体操指導を行い,外来にて2週,1か月後,3か月後,6か月後の1日あたりの使用パット枚数を調査した.術後2週の時点で骨盤底筋体操を毎日実施していた群を「実施群」,時々実施または実施していないと回答した群を「未実施群」として,全患者,実施群,未実施群においてパット枚数の経時的変化に差があるかを検討した.また,術後2週時点でパット枚数3~6枚の中等症の実施群(28例)と未実施群(6例)において,各時期のパット枚数に差があるかを検討した.統計処理は,パット枚数の経時的変化にFriedman検定と多重比較法,各時期の2群間の差にMann-WhitneyのU検定を用いた.
【骨盤底筋体操指導の流れ】
術後,膀胱留置カテーテルを抜去した翌日から介入.骨盤底筋体操のパンフレットを用いて骨盤底筋の解剖学的な基礎知識の説明や触診を実施.力加減や力の入れ方(速筋と遅筋)を練習し,理解された後で,腹部エコーにて自身の膀胱と骨盤底筋の収縮をモニターで視覚的にフィードバックしてもらった.エコーでの収縮が確認できなかったり,収縮の仕方がわからない症例には,腹圧のコントロールを意識した体幹の機能訓練を主として指導し,退院後も自宅での継続を促した.
【結果】
パット枚数の経時的変化は,術後2週,1か月,3か月,6か月の順で中央値が全患者では2,1,1,1.実施群では3,2,1,1.未実施群では1,1,1,1であった.全患者と実施群では各時期の間に有意な差を認めた.中等症の2群間での差については, 術後2週では実施群と未実施群の中央値は5,4.75. 1か月では実施群と未実施群の中央値は2,4.5. 3か月では実施群と未実施群の中央値は1,4.5. 6か月では実施群と未実施群の中央値は1,2.5. 術後1か月,3か月,6か月の順でP値は, P<0.05, P<0.01, P<0.05であった.
【考察】
今回調査したRALP後の症例については,6か月後にはパット枚数は概ね1枚程度となっており,時間の経過と共に尿失禁が改善されていることが示された.特に実施群は全体に比べてパット枚数が減少していくことに対し,非実施群では明らかな減少が示されなかった.
少なくとも術後2週の時点で骨盤底筋体操を毎日実施している群は,していない群に比べて尿失禁が改善しやすいことが示唆された.また,術後2週では骨盤底筋体操の効果は見られ難く,効果が期待されるまでには少なくとも1か月程度を要し,尿禁制保持を改善させるためには術後6か月程度の骨盤底筋体操の継続が効果的であることも示唆された.