第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-11] ポスター:基礎研究 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PP-11-2] 注意課題時に発生する脳波周波数の検討

松尾 萌美1, 樋口 隆志2 (1.西九州大学リハビリテーション学部, 2.大阪人間科学大学)

【はじめに】
注意とは,外的および内的情報の絶え間ない流入を処理する能力,および選択的または持続的な集中力を維持する能力と定義される.注意障害はしばしば仕事などの日常生活活動を実行する能力にも影響を与える.これまで,様々な課題実施時や安静時に,注意ネットワークを含む皮質ネットワークの活動に変化が生じることが明らかにされている.しかし,これら皮質ネットワークについてより理解するために,さらなる研究の重要性が示唆されている.そこで本研究の目的は,モバイル脳波計(Electroencephalography; EEG)を使用し注意課題中の脳活動を計測し,注意課題時に発生する脳波の周波数を同定することとした.
【方 法】
健常成人12名(男性5名,女性7名,平均年齢21.2±0.6歳)を対象とした.課題は,注意および遂行機能を測定するための認知課題として最も広く使用されているものの 1 つである Trail-Making Test (TMT) とした.同課題をTMT-AとTMT-Bの2条件で実施した.また,両条件の前後で安静時間を設け,これら課題と安静時間においてEEGを用い継続的に脳波を計測した.EEG電極の設置個所は前頭極2箇所,前頭3箇所,下前頭2箇所,中心3箇所,頭頂3箇所,後頭2箇所,中側頭2箇所,後側頭2箇所の計19箇所とし,各条件における周波数のパワースペクトルを算出した.尚,本研究は所属する大学の倫理委員会の承認を得た上,対象者の同意のもと実施した.
【結 果】
TMT-Aにおいては安静時と比較しデルタ波とシータ波のパワー値が高値を示した(δ=39.129;θ=5.187;α=3.486;β=2.381;低γ=1.730;高γ=0.136).一方,TMT-Bにおいては安静時と比較しデルタ波,アルファ波,ベータ波,ガンマ波のパワー値が高値を示した(δ=31.454;θ=3.601;α=2.921;β=4.436;低γ=4.109;高γ=0.216).
【考 察】
TMT-Aではシータ波のパワー値が高値を示したのに対し,TMT-Bではアルファ波,ベータ波,ガンマ波のパワー値が高値を示した.デルタ波はまどろみや傾眠傾向の際に見られる脳波である一方,アルファ波やベータ波は没頭している際や計算課題をしている際などに見られる脳波である.つまり,TMT-Aにおいては注意集中するよりもむしろ無意識的に課題を遂行している状態であり,TMT-Bにおいては注意集中して課題を遂行している状態であったことが推察された.