第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-11] ポスター:基礎研究 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PP-11-4] 体表エコー検査による母指CM関節固定肢位の検討

林 弘樹1,2, 森木 研登1, 西本 亮1, 矢田 翔馬1, 金子 翔拓3 (1.篠路整形外科, 2.北海道文教大学大学院 リハビリテーション科学研究科, 3.北海道文教大学 人間科学部 作業療法学科)

【緒言】母指CM関節症は, 頻度の高い手の変形性関節症であり, 閉経後女性の33%が罹患する. 母指の疼痛とピンチ力低下により日常生活動作を著しく困難にさせるため, OTが関わることも多い疾患である. 保存的治療が, すべての症例でまず試みられるべき治療とされており, OTが行う保存的治療にthumb spicaを用いた装具療法が挙げられる. 先行研究によると, thumb spicaによる固定肢位は, 橈側外転位0~10°および, 掌側外転位40~45°が推奨されている. しかし, 生体においてどの肢位で最も母指CM関節が求心位となるのか, 一定の見解は得られていない. 本研究の目的は, 健常者の母指CM関節を超音波診断装置にて体表エコー検査を実施し, 母指橈側外転0°と10°のどちらで母指CM関節が求心位(本研究では大菱形骨に対して中手骨がどの程度求心位にあるか)となるかを明らかにすることとした. なお, 本研究は筆頭演者の所属する大学院の倫理審査委員会の承諾を得ている(承認番号04011).
【対象と方法】20~30代(平均29.8歳), 健常成人男性5例. 計測は両母指CM関節とし合計10指(利き手右)とした. 超音波診断装置はCanon社製Aplio α Verifiaを使用した. 方法は先行研究に準じ, 被験者と対向して正面に座り, 被検者には手関節回内外中間位で台の上に手を置いてもらう. 母指CM関節背側部にプローブを当て関節裂隙を描出した. 大菱形骨(T)および母指中手骨基部(M)の計測方法は, 体表(S)から大菱形骨および中手骨の最も高い部位に垂線を引き, 体表(S)からTおよびM間の距離の差(ST-SM=dd)を算出した. 母指掌側外転45°とし, 橈側外転を0°, 10°でそれぞれ計測し, それぞれのT, M間の距離の差を算出. 各肢位において3回計測し, 平均値を算出した. 数値の解析には, 対応のあるt検定を用いた. また効果量も算出した. 有意水準は5%とした(R 4.2.0 CRAN, free software).
【結果】各肢位のddは, 橈側外転0°にて0.392±0.088mm, 10°にて0.502±0.108mmであり, 対応のあるt検定を行った結果, 橈側外転0°の値が有意に小さかった(p<0.001).
【考察】今回計測したddは, ST-SMにて算出している. 大菱形骨に第1中手骨基部が近づいていく(求心位)と, ddは0に近似していくこととなるが, 今回の結果より,母指CM関節は掌側外転45°位では橈側外転0°でddが低値(0に近づいていく)となり, 求心位になることが明らかとなった. 母指CM関節症に対する装具療法は, 母指の外転位とCM関節求心位の保持が目的となる. 装具療法による橈側外転0°位の保持はより母指CM関節の求心性を高め, 安定性を向上させる可能性があり, 炎症症状の軽減や症状の増悪の抑制ができると考えられる. しかしながら, 橈側外転10°位は機能的肢位としてADL等で使用する際に適している可能性が高いため, 状況に応じて固定肢位を決定することが望ましいと考える. 本研究は若年男性健常人での検討であり, 実際の母指CM関節症症例に及ぼす影響とは異なる可能性がある. 今後はデータ数を増やすこと, 母指CM関節症の症例で検討することが必要である.