[PP-2-3] 日常生活において楽しみを感じる作業の特性
【はじめに】
40歳代から50歳代の女性は,閉経などのホルモンバランスの変化に加え,子育ての終焉に伴う喪失感,親世代への介護に対する責任感や負担感,老後への不安などにより,心身の健康を損なう可能性があるとされる.しかし,この世代の女性が,日常生活においてどのような作業を楽しんでいるか,また,その作業がどのような性質なのかを明らかにした報告はない.
【目的】
本研究は,40歳代から50歳代の女性が,日常生活において,大事にし,かつ楽しみを感じたり夢中になるような作業(以下,楽しみを感じる作業)を明らかにし,その特性について知ることを目的とした.結果は,この年代の女性の日常生活をより深く理解し,健康を支援するためにあたり,有意義な資料になると考える.
【方法】
質的記述的研究法を用い,便宜的に抽出した40歳代から50歳代の健常女性3名に対し,60〜120分程度の半構造化面接を行った.面接では,楽しみを感じる作業,それを始めたきっかけ,それを行う方法と場面,その作業の楽しさについて聞いた.データの分析は,インタビューの逐語録を作成後,意味のまとまりごとに概念化,カテゴリー化を行った.本研究は,研究者が所属していた組織の倫理審査委員会の承認後,口頭と書面にて対象者の同意を得て実施した.
【結果】
インタビューは,2020年12月〜2021年3月に行った.対象者はX,Y,Z氏の3名で,全員が首都圏近郊で夫,子どもと同居していた.楽しみを感じる作業は,X 氏は,旅行・友人との買い物や外食・エコクラフト作り,Y氏は犬と関わる,Z氏は好きな音楽グループの応援であった.作業の特性として,様々な始まり, ライフイベントや社会状況よる変化, リフレッシュ・達成感・挑戦・癒やしなどの喜び, 日常生活からの離隔, 社会とのつながり, 金銭的配慮という6つのカテゴリーが抽出された.
【考察】
楽しみを感じる作業は,きっかけは異なるが,家族の成長や変化に応じて従事の方法が変化するなど,比較的長期にわたり行われてきたものであった.作業には様々な側面の喜びがあり,普段の生活から離れる役割を持ち,家族以外の社会と繋がる機会になっていたが,家計への配慮も伴うものであった.日本では,夫は外で働き,妻は家庭を守るという分業観が根強く残るとされる.家庭を守ることは,しばしば自己を抑え,家事や子育てに関わる作業を優先させることが求められる.これに対し,楽しみを感じる作業は,好きなことをする自己表現の場,そして 日常生活に向かい合うための活力の源であり,また,家族以外の社会とつながる特性を持っていたといえる.
この世代の女性への作業療法は,ADLの自立,家事の復帰などに焦点を当てることが多いが,楽しみを感じる作業への従事の維持や再開は,生活上の幸福感や満足感に影響する可能性があり,十分に配慮する必要があることが示唆された.
40歳代から50歳代の女性は,閉経などのホルモンバランスの変化に加え,子育ての終焉に伴う喪失感,親世代への介護に対する責任感や負担感,老後への不安などにより,心身の健康を損なう可能性があるとされる.しかし,この世代の女性が,日常生活においてどのような作業を楽しんでいるか,また,その作業がどのような性質なのかを明らかにした報告はない.
【目的】
本研究は,40歳代から50歳代の女性が,日常生活において,大事にし,かつ楽しみを感じたり夢中になるような作業(以下,楽しみを感じる作業)を明らかにし,その特性について知ることを目的とした.結果は,この年代の女性の日常生活をより深く理解し,健康を支援するためにあたり,有意義な資料になると考える.
【方法】
質的記述的研究法を用い,便宜的に抽出した40歳代から50歳代の健常女性3名に対し,60〜120分程度の半構造化面接を行った.面接では,楽しみを感じる作業,それを始めたきっかけ,それを行う方法と場面,その作業の楽しさについて聞いた.データの分析は,インタビューの逐語録を作成後,意味のまとまりごとに概念化,カテゴリー化を行った.本研究は,研究者が所属していた組織の倫理審査委員会の承認後,口頭と書面にて対象者の同意を得て実施した.
【結果】
インタビューは,2020年12月〜2021年3月に行った.対象者はX,Y,Z氏の3名で,全員が首都圏近郊で夫,子どもと同居していた.楽しみを感じる作業は,X 氏は,旅行・友人との買い物や外食・エコクラフト作り,Y氏は犬と関わる,Z氏は好きな音楽グループの応援であった.作業の特性として,様々な始まり, ライフイベントや社会状況よる変化, リフレッシュ・達成感・挑戦・癒やしなどの喜び, 日常生活からの離隔, 社会とのつながり, 金銭的配慮という6つのカテゴリーが抽出された.
【考察】
楽しみを感じる作業は,きっかけは異なるが,家族の成長や変化に応じて従事の方法が変化するなど,比較的長期にわたり行われてきたものであった.作業には様々な側面の喜びがあり,普段の生活から離れる役割を持ち,家族以外の社会と繋がる機会になっていたが,家計への配慮も伴うものであった.日本では,夫は外で働き,妻は家庭を守るという分業観が根強く残るとされる.家庭を守ることは,しばしば自己を抑え,家事や子育てに関わる作業を優先させることが求められる.これに対し,楽しみを感じる作業は,好きなことをする自己表現の場,そして 日常生活に向かい合うための活力の源であり,また,家族以外の社会とつながる特性を持っていたといえる.
この世代の女性への作業療法は,ADLの自立,家事の復帰などに焦点を当てることが多いが,楽しみを感じる作業への従事の維持や再開は,生活上の幸福感や満足感に影響する可能性があり,十分に配慮する必要があることが示唆された.