第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-3] ポスター:基礎研究 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PP-3-4] 価値ある作業に基づく作業-幸福質問紙の開発

鎌田 樹寛 (北海道医療大学リハビリテーション科学部 作業療法学科)

【はじめに】近年の作業療法では,「作業の遂行が健康や幸福への促進」に結びつく主旨が用いられて久しい.しかし,作業従事や遂行側面に幸福の観点を主眼とした評価法は,とても少ない.対象者にとって大切な・意味を持つ作業つまり“価値ある作業”の遂行状況が,同時に幸福感に繋がる過程を可視化することやその質問内容・構造が計量学的根拠を持てる評価法は,対象者との協業的アプローチで治療や介入過程を共有するために寄与できると考えられる.我々は,これらにまつわる研究を重ねてきた.
【目的】本研究の目的は,「価値ある作業に基づく作業-幸福質問紙(以下,価-福質問紙)」の開発に関して,質問紙構造の計量学的な検討である.本研究は,北海道医療大学リハビリテーション科学部倫理審査委員会の審査を経て実施された(承認番号:22R168168).
【方法】キールホフナー等よって人間作業モデルの枠組みで作成された「価値質問紙」(自分にとって非常に大事なことであると思い浮かべる活動5つについて,このことの「時間」「意味」「遂行機能」の下位項目について0(関係ない),1(やや関係あり),2(非常に関係あり)の3件法によりそれぞれ回答してもらい,最も点数の高い活動,あるいは点数の高い活動のうち,対象者が最も大切であると判断した活動1つを「価値ある作業」とした活動の回答得点)そして,我々が欲求の充足と価値の実現,及び幸福感に通じる感覚や感情としての充実感,満足感,安心感を「幸福の構造」と定義した寺沢の概念及び,吉川の「作業の意味(8つの側面)」から吟味(概念の共通化と事前解釈)した仮称・価-福質問紙(質問項目の観点に対して満足感,充実感,安心感を用いたvisual analog scaleに準拠する尺度にして回答する質問と,作業と幸福の三要素に対するその人の想いを抽出するための自由記述式の質問,計9つの質問項目で構成されている)を用いて回答を得た.分析方法は,①価値質問紙と仮称・価-福質問紙の回答データに対する関係性の検討として,Spearmanの順位相関係数を求め,回答者全員分の質問項目に着目して,有意な相関に基づき選択された項目の抽出.②①の結果で該当された質問項目に対して,探索的因子分析(プロマックス回転;最尤法)の実施であった. 用いられたデータの収集期間は,2018年~2022年であった.
【結果】対象者は,所属学部の大学生237名(男性:75名,女性:162名,平均年齢:21±1.7歳)であった.①相関分析結果からは,有意な相関係数(rs=.207**~.411**(**:p<.01))に基づく質問項目として,11項目(「健康との関連に対する質問;No.1満足感・No.2充実感・No.3安心感」,「作業が引き起こす感情に対する質問;No.4満足感・No.5安心感」,「自身との関連に対する質問;No.6充実感・No.7満足感・No.8安心感」,「社会の中での意味に対する質問;No.9満足感・No.10充実感・No.11安心感」)を抽出した.②これらの項目に対する探索的因子分析からは,3因子構造が確認され,以下の因子名に命名された.第1因子「私の身体や気持ちの状態;5項目(質問No.1~No.5因子負荷量:.601~.910)」,第2因子「私自身とのつながり;3項目(質問No.6~No.8因子負荷量:.658~.997)」,第3因子「社会の中での私;3項目(質問No.9~No.11因子負荷量:.689~.946)」であった.
【考察】対象学生回答データによる有意な相関係数から抽出された11の質問項目は,十分な因子負荷量(0.60以上)を持つ質問紙構造であることが確認されたため,先行研究で得られていた併存的妥当性や内容妥当性に加わる構成概念妥当性としても根拠が得られと考えられた.今後は,確認的因子分析(共分散構造分析)から適合度等の確認も必要であると考えられた.