[PP-5-3] 健常女性における温冷覚閾値とPOMSの連関
<はじめに>
慢性疼痛患者は女性に多く,非薬物療法として各種の心理療法や認知行動療法などが試行されているが完治に至ることは少ない.また患者には温冷覚に過敏の訴えを呈することもあり,正確な症状や現象を把握することができていない.その理由に温冷覚の測定機器が異なることや感じ方とその表現方法の個体差が大きいことから統一基準が設定されていないことが挙げられる.他方,POMSは「気分(mood)」を測定する手法で,AH(怒り―敵意),CB(混乱―当惑),DO(抑うつ―落込み),FI(疲労―無気力),TA(緊張―不安),VA(活気―活力),F(友好)の各因子を明確することが可能である.今回は冷覚と温覚の閾値及び温度変化による痛覚と気分(mood)と関連を明らかにすることを目的に研究を行った.
<方法>
対象は一般公募で集められた健常女性59名で平均年齢は25.9±12.5歳であった.温冷覚の測定には,温度覚用定量的感覚計(intercross-220)を用いた.方法は,熱刺激プレートに右前腕部を置き,尺側部で記録した.気分はPOMS2 日本語版成人用短縮版(金子書房)を用いて,実験開始前に回答してもらった.POMSは計算式から算出されるTMD値を中心に温度閾値と比較検討した.本研究は所属機関の研究倫理委員会(承認番号:SKE-2022-10)の承認を得て実施した.
<結果>
常温(皮膚体温)から温度を下げて「冷たい」と感じた温度は27.5±3.14℃,温度設定を上げて「温かい」と感じた温度は34.5±2.55℃であった.温度低下により痛みとして感じた温度は,16.5±7.4℃,温度の上昇により痛みと感じた温度は43.9±4.4℃であった.
TMD値は平均値が16.2±19.13(最小-11〜最大75)と幅広く分布していた.TMD値と冷覚痛閾値は弱い負の相関(r2=-0.205),TMD値と温覚痛閾値は弱い正の相関(r2=0.225)が存在した.
<考察>
POMSは『POMS2 日本語版マ ニュアル』(第 2 章「理論と開発」)では,情動理論において,「気分」は,パーソナリティの構成要素である「感情特性」よりは一時的であるが,断片的で瞬時に生じる「情動」よりは持続的とされる.今回,得られたTMD値は冷覚痛と温覚痛の閾値と「負および正」の相関関係が存在することは,慢性疼痛患者の気分を変動することに症状や訴えを和らげる可能性を有していることが示唆された.
慢性疼痛患者は女性に多く,非薬物療法として各種の心理療法や認知行動療法などが試行されているが完治に至ることは少ない.また患者には温冷覚に過敏の訴えを呈することもあり,正確な症状や現象を把握することができていない.その理由に温冷覚の測定機器が異なることや感じ方とその表現方法の個体差が大きいことから統一基準が設定されていないことが挙げられる.他方,POMSは「気分(mood)」を測定する手法で,AH(怒り―敵意),CB(混乱―当惑),DO(抑うつ―落込み),FI(疲労―無気力),TA(緊張―不安),VA(活気―活力),F(友好)の各因子を明確することが可能である.今回は冷覚と温覚の閾値及び温度変化による痛覚と気分(mood)と関連を明らかにすることを目的に研究を行った.
<方法>
対象は一般公募で集められた健常女性59名で平均年齢は25.9±12.5歳であった.温冷覚の測定には,温度覚用定量的感覚計(intercross-220)を用いた.方法は,熱刺激プレートに右前腕部を置き,尺側部で記録した.気分はPOMS2 日本語版成人用短縮版(金子書房)を用いて,実験開始前に回答してもらった.POMSは計算式から算出されるTMD値を中心に温度閾値と比較検討した.本研究は所属機関の研究倫理委員会(承認番号:SKE-2022-10)の承認を得て実施した.
<結果>
常温(皮膚体温)から温度を下げて「冷たい」と感じた温度は27.5±3.14℃,温度設定を上げて「温かい」と感じた温度は34.5±2.55℃であった.温度低下により痛みとして感じた温度は,16.5±7.4℃,温度の上昇により痛みと感じた温度は43.9±4.4℃であった.
TMD値は平均値が16.2±19.13(最小-11〜最大75)と幅広く分布していた.TMD値と冷覚痛閾値は弱い負の相関(r2=-0.205),TMD値と温覚痛閾値は弱い正の相関(r2=0.225)が存在した.
<考察>
POMSは『POMS2 日本語版マ ニュアル』(第 2 章「理論と開発」)では,情動理論において,「気分」は,パーソナリティの構成要素である「感情特性」よりは一時的であるが,断片的で瞬時に生じる「情動」よりは持続的とされる.今回,得られたTMD値は冷覚痛と温覚痛の閾値と「負および正」の相関関係が存在することは,慢性疼痛患者の気分を変動することに症状や訴えを和らげる可能性を有していることが示唆された.