[PP-6-3] 利き手と非利き手における機能的特徴に関する検討
【序論】近年,対象物操作に必要な調整能力が着目され,巧緻性の一要素のGradingに着目した利き手のつまみ力調整能力と感覚機能の影響が報告されている(中村ら,2019).一方,つまみ動作における固有感覚を用いた識別課題は非利き手の方が優れていたという報告もあり(Han J,2013),利き手と非利き手の調整能力に対する固有感覚の影響は不明である.本研究は,利き手と非利き手の機能的特徴に関してGradingを指標としたつまみ力調整能力に手指固有感覚の観点を加え検討した.
【方法】対象は上肢に整形疾患の既往が無く,本研究に同意が得られた右利き健常成人男女26名(平均年齢24.8±1.9歳).なお本研究は筆者所属の倫理委員会の承認を得ている.
つまみ力調整課題は,円柱状ピンチ力測定器(竹井機器工業)を使用し,測定課題は母指-示指による指腹つまみを用い,最大つまみ力の5-25%の範囲で変動する正弦波(以下標的)を追従することとした.利き手,非利き手にて中村らの方法に準じ測定し,標的と追従波形の差を誤差として算出し,1周期分の誤差を集計したものを誤差総和とした.また,調整時の追従波形の変動の確認の為,サンプリング間隔ごとの傾き(以下変化率)を算出し,1周期分を集計した.
長さ知覚はSawadaらの研究に則り実施した.使用機器は3段にロッドがセット可能なアクリルホルダーを用い,最下段に70㎜の参照用ロッド,中・上段にテスト用ロッドを固定した.テストロッドの内,1本は70㎜,もう1本が0.8,0.9,1,2,3,4㎜長い物を使用し,中・下段のいずれかに固定した.被験者はアイマスクを着用し,参照用ロッドより長いロッドがどちらかを回答した.測定は利き手,非利き手各30(6×5)回実施し,長さ知覚の判定は75%以上正答した最短ロッドを識別可能な長さとした.
分析は,長さ知覚は2㎜の長さが最も識別可能と報告されており(Sawadaら,1999),各被験者の利き手,非利き手それぞれ2㎜未満の識別可能群(以下2㎜未満識別群)と2㎜以上の識別可能群(以下2㎜以上識別群)に分けた後,各群での誤差総和,変化率を正規性に応じ対応の無いt検定,Mann-whitneyのU検定にて比較した.有意水準は5%とした.
【結果】長さ知覚の結果,利き手,非利き手共に2㎜未満識別群19名,2㎜以上識別群7名となり,全被験者が3㎜以下で識別可能であった.誤差総和は,2㎜未満識別群(利き手/非利き手):139.5±52.5/137.3±46.9で有意差認めず(P=0.89),2㎜以上識別群も(利き手/非利き手):141.9±70.5/139.8±48.1で有意差を認めなかった(P=0.94).変化率は2㎜未満識別群(利き手/非利き手):835.3±180.4/1016.8±300.2で有意差を認め(P=0.03),2㎜以上識別群も(利き手/非利き手):728.4±203.2/1031.8±280.3で有意差を認めた(P=0.03).
【考察】長さ知覚での識別能力を加えて利き手と非利き手の機能的特徴を検討した際,誤差総和は有意差を認めなかったが,変化率は,非利き手の識別能力に関わらず利き手よりも変化率が大きい結果となった.これは利き手と非利き手のつまみ力調整中の戦略の違いを示唆し,この違いは,長さ知覚のみの影響ではない可能性が示唆された.その為,巧緻性の評価においては,巧緻性の一要素であるGradingにおける力の調整能力など,各要素の個別的評価や利き手と非利き手の機能的特徴を含めて行う必要があると考える.
【方法】対象は上肢に整形疾患の既往が無く,本研究に同意が得られた右利き健常成人男女26名(平均年齢24.8±1.9歳).なお本研究は筆者所属の倫理委員会の承認を得ている.
つまみ力調整課題は,円柱状ピンチ力測定器(竹井機器工業)を使用し,測定課題は母指-示指による指腹つまみを用い,最大つまみ力の5-25%の範囲で変動する正弦波(以下標的)を追従することとした.利き手,非利き手にて中村らの方法に準じ測定し,標的と追従波形の差を誤差として算出し,1周期分の誤差を集計したものを誤差総和とした.また,調整時の追従波形の変動の確認の為,サンプリング間隔ごとの傾き(以下変化率)を算出し,1周期分を集計した.
長さ知覚はSawadaらの研究に則り実施した.使用機器は3段にロッドがセット可能なアクリルホルダーを用い,最下段に70㎜の参照用ロッド,中・上段にテスト用ロッドを固定した.テストロッドの内,1本は70㎜,もう1本が0.8,0.9,1,2,3,4㎜長い物を使用し,中・下段のいずれかに固定した.被験者はアイマスクを着用し,参照用ロッドより長いロッドがどちらかを回答した.測定は利き手,非利き手各30(6×5)回実施し,長さ知覚の判定は75%以上正答した最短ロッドを識別可能な長さとした.
分析は,長さ知覚は2㎜の長さが最も識別可能と報告されており(Sawadaら,1999),各被験者の利き手,非利き手それぞれ2㎜未満の識別可能群(以下2㎜未満識別群)と2㎜以上の識別可能群(以下2㎜以上識別群)に分けた後,各群での誤差総和,変化率を正規性に応じ対応の無いt検定,Mann-whitneyのU検定にて比較した.有意水準は5%とした.
【結果】長さ知覚の結果,利き手,非利き手共に2㎜未満識別群19名,2㎜以上識別群7名となり,全被験者が3㎜以下で識別可能であった.誤差総和は,2㎜未満識別群(利き手/非利き手):139.5±52.5/137.3±46.9で有意差認めず(P=0.89),2㎜以上識別群も(利き手/非利き手):141.9±70.5/139.8±48.1で有意差を認めなかった(P=0.94).変化率は2㎜未満識別群(利き手/非利き手):835.3±180.4/1016.8±300.2で有意差を認め(P=0.03),2㎜以上識別群も(利き手/非利き手):728.4±203.2/1031.8±280.3で有意差を認めた(P=0.03).
【考察】長さ知覚での識別能力を加えて利き手と非利き手の機能的特徴を検討した際,誤差総和は有意差を認めなかったが,変化率は,非利き手の識別能力に関わらず利き手よりも変化率が大きい結果となった.これは利き手と非利き手のつまみ力調整中の戦略の違いを示唆し,この違いは,長さ知覚のみの影響ではない可能性が示唆された.その為,巧緻性の評価においては,巧緻性の一要素であるGradingにおける力の調整能力など,各要素の個別的評価や利き手と非利き手の機能的特徴を含めて行う必要があると考える.