第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-6] ポスター:基礎研究 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PP-6-4] 動的つまみ調整能力と長さ知覚との関連

中村 充雄1, 山本 大稀2,3, 中村 眞理子1 (1.札幌医科大学保健医療学部, 2.札幌医科大学大学院保健医療学研究科 理学療法学・作業療法学専攻, 3.社会医療法人柏葉会 柏葉脳神経外科病院)

【緒言】我々は日常生活において,多種多様な対象を把持・操作しており,適切で円滑な把持・操作には経時的な力の調整能力が不可欠である.道具操作の際の力の調整には手指の接触と関節運動を伴うため,体性感覚や固有感覚情報からのフィードバックが重要であると考えられる.筆者らは第56回日本作業療法学会において,静的なつまみ力調整精度と関節固有感覚の関連を検討した.日常生活行為では関節運動を伴う動的な力調整も多いことから,今回測定機器のアタッチメントを可動式に変更できる装置を開発し,力の調整要素の評価と関節固有感覚の要素である長さ知覚を測定し,力の調整精度に影響を与える要因について検討した.
【方法】対象は上肢に神経筋疾患,整形外科疾患の既往のない右利き健常成人男女4名(平均年齢 26.3±1.9歳).本研究に対する説明を十分に行い同意が得られたものとした.なお本研究は筆者所属の倫理委員会の承認を得ている. 本研究で用いる動的つまみ力調整課題の計測機器は,円柱状ピンチ力測定器(S-19109,竹井機器工業;特注品)を用いた.測定器で検出される手指圧変動は,ストレインアンプ(TSA-210,竹井機器工業) を介してコンピュータに記録した.対象者は円柱ピンチ力測定器を母指と示指でつまみ,アタッチメントはバネ式で可動し,加圧することで伸縮する装置を用いた.測定器をつまみ生成される波形と標的を一致させるよう教示した.標的はつまみ力120g〜180gの範囲で上下する正弦波(0.1Hz)とし,手指圧変動を視覚的に確認できるようコンピュータモニターに表示した.測定は利き手・非利き手各3回実施した.調整精度は生成波形と標的の誤差を算出し3周期の平均を誤差総和とした.長さ知覚は,3段にロッド(φ6)をセットできるアクリルホルダーを使用し最下段に70mmの参照用ロッド,中・上段にテストロッドを固定した.テストロッドのうち1本は70mm,もう1本が +0.8,0.9,1,2,3,4mm長いものとし,中・上段のいずれかに固定した.対象者はアイマスクし,参照用ロッドと長さが異なるロッドがどちらか回答した.測定は利き手・非利き手各30(6×5) 回実施した.長さ知覚の判定は75%以上正答した最短ロッドを識別可能長さとした.
【結果】長さ知覚の結果を,①利き手が良い(2名),②利き手と非利き手で同じ(1名),③非利き手が良い(1名)の3群で誤差総和を検討した.①では誤差総和(Rt/Lt):4486.5/4858.8,②は誤差総和(Rt/Lt):3065.9/3507.6,③は誤差総和(Rt/Lt):2727.2/4351.5であった.いずれの群においても誤差総和は利き手の方が小さく,長さ知覚の成績と動的つまみ力調整能力の関与は確認されなかった.
【考察】手指の関節運動を伴う動的つまみ力の調整課題と,手指固有感覚の一つである長さ知覚に関連は認められず,昨年我々が報告した静的つまみ力調整とは異なる結果を示した.つまり,動的つまみ力の調整能力に係る手指の体性感覚・固有感覚との関連を示さなかったことから,動的つまみ力調整能力は固有感覚情報だけでなく複雑に他機能との関連を今後検討し多面的に手指巧緻性の特性を明らかにする必要があることが示唆された.
本研究はJSPS科研費JP19K19798の助成を受けたものである.