第57回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-7] ポスター:基礎研究 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PP-7-4] 平成医療福祉グループの作業療法士が自助具を選ぶ際に安全性を重視する事の考察

秋原 健利1, 田染 佐夏2, 籔中 雅之3, 深谷 夏々子4, 島田 萌花5 (1.ケアホーム葛飾, 2.印西総合病院, 3.東浦平成病院, 4.平成横浜病院, 5.江藤病院)

【目的】 平成医療福祉グループ(以下,HMWグループ)は,自助具製作において幅広い観点をもつ作業療法士(以下,OT)育成に取り組んでいる.しかし,2021年に研究者が所属するHMWグループ関連の病院・施設のOTに対して行った調査研究にて,臨床で自助具を製作するOTの割合は全体の4.9%であった.「自助具を手作りしない理由は何か」という問いに対して「既製品で間に合う」「時間がない」「耐久性・安全性の問題」という回答が上位に挙がっていた.「耐久性・安全性の問題」について笹田哲ら(2004)は「OTによる自助具に対する安全性の配慮は1割で,自助具の製作における製造物責任法への対処は僅かしかなかった」1)と報告している.我々が行った調査において「耐久性・安全性の配慮」が上位に挙がったことから先行研究との差が認められる結果となった.この結果を受け「耐久性・安全性の配慮」について再考し,OTが自助具の適切の製作をしない理由について明らかにすることで自助具選定に対する幅広い観点をもつOT育成の一助とする.
【方法】 HMWグループ関連の26病院・26施設に在籍するOT133名にアンケートを実施した.期間は2021年1月18日〜2021年2月1日とし,アンケートによって得られた回答を元に分析を行う.倫理的配慮として,アンケート調査の目的,方法ならびにアンケートに回答しなくても職務上の不利益とならないことを保証する旨を書面で説明し,同意を得た.
【結果】 アンケートの回答率は90%(121/133名)であった.大半のOTは自助具は既製品を提供しており,「はい」が88%,「いいえ」が4%であった.自助具選びで重視する点については,「コスト」が72%,「手作りできないもの」が70%,「耐久性」が67%と既製品の強みとなりやすい点が上位となった.笹田哲ら(2004)が報告している内容1)の報告と比較し,HMWグループのOTは安全性への認識が高くなっている傾向がわかった.
【考察】 消費者庁は,近年の製品に関する事故の法令等に基づく規制を強化しており,望月和明(2012)によると「企業にとって製品の安全性確保,安全対策は従来にも増して重要な課題である.」2)と報告している.また,HMWグループのリハビリ部では臨床管理委員による事故の共有や注意喚起により,リスク管理の意識が高まり,HMWグループのOTは製品の安全性を重視するようになったと考えられる.また,退院後の継続的なフォローアップの意識化が進んでおり,従来では退院後の福祉用具の使用に対するフォローが不完全な場合があったが,新障害者プランの制定によってQOLの向上や安全の暮らしの確保が求められるようになったことで退院後の生活を見据える傾向が強くなり,フォローアップが難しい自助具製作を避けていることが推察される.業務内の限られた時間で自助具製作を行っているため,退院後のフォローを考えると故障や破損時に買い替えがしやすい既製品を選択することが一つの判断材料になると考えられる.安全性の懸念がオーダーメイドの重要性を抑止している要因となり,クライエントの意味ある作業を実現するOT支援の妨げにならないように対策が必要である.
【課題】 HMWグループとして自助具を製作する上で「耐久性・安全性の配慮」が課題となっており今後はその対策を検討する必要がある.また自助具作製の障害当事者やOTにとっての有用性についても検証する必要がある.
【文献】1)笹田哲, 宮前珠子:原著,福祉用具による作業療法アプローチの実態と今後の課題,広島大学保健学ジャーナル vol. 3 (2):20~26,2004 2)望月和明:製品の安全安心と中小企業,平成23年度調査研究事業