第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-1] ポスター:管理運営 1

Fri. Nov 10, 2023 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-1-3] COVID-19による活動制限から回復期リハビリテーションの在り方の検討

楢島 恵美, 成田 知代, 椎野 良隆, 要 由紀子 (一般財団法人 竹田健康財団 竹田綜合病院リハビリテーション部)

【はじめに】
 回復期リハビリテーション(リハ)病棟のCOVID-19クラスターの報告では,非感染者を対象とした報告は少ない.当院回復期リハ病棟COVID-19クラスターの活動及び個別リハ制限による影響を,在棟日数とFunctional Independence Measure(FIM)から検証し今後のリハの在り方を検討した.
【方法】
A群:活動制限となった2022.8.20~9.12迄回復期リハ病棟に入棟し,COVID-19非感染且つ2022.11.20迄に退院した患者24名.年齢80.7±9.8.運動器疾患18名,脳血管疾患6名.平均リハ提供単位数/日:活動制限中2.5,活動制限以外:5.2
B群:2021.4.1~2022.3.31迄に回復期リハ病棟に入棟し,退院した患者328名.年齢77.5±11.0.運動器疾患217名,脳血管疾患104名,他7名.平均リハ提供単位数/日:5.4
転出・再入棟・死亡・回復期リハ病棟対象外疾患のA群3名,B群45名を除外した.調査項目は,年齢,性別,疾患分類,入棟迄日数,在棟日数,入棟時FIM,退棟時FIM,FIM改善度〔退棟時FIM-入棟時FIM〕,A群活動制限前後FIMとFIM改善度〔活動制限後FIM-活動制限前FIM〕とした.
A群とB群の入棟迄日数,在棟日数,入棟時FIM,退棟時FIM,FIM改善度をMann-Whitney Rank Sum Test,A群入棟時FIMと退棟時FIM,活動制限前後FIM,B群入棟時FIMと退棟時FIMをWilcoxon signed-rank testにて比較した.危険率5%未満,数値は平均±標準偏差とし,研究にあたり当院倫理審査委員会の承認を得た.
【結果】
 在棟日数A群82.3±22.5,B群53.6±28.2でA群が有意に長かった[P<0.05].A群入棟時FIM60.3±20.7と退棟時FIM81.3±30.4,B群入棟時FIM66.0±21.4と退棟時FIM88.7±27.2は共に有意に退棟時が高かった[P<0.05] .他項目で有意差はみられなかった.B群FIM改善度と在棟日数から1日あたり改善度0.42,A群活動制限期間改善度の目安9.24となるが1.7と低値であった.
【考察】
 A群の退棟時FIM改善度はB群と同程度向上したが,在棟日数延長とA群活動制限前後のFIM改善度から,活動制限は心身機能や日常生活活動(ADL)向上に時間を要した一因と考える.今回の活動制限は,吉川の「人と環境と作業の関係」1)において,環境の制約から作業が制限を受け,作業遂行〈活動〉の縮小化を生じた.環境の制約下でも,患者の機能維持・向上を図る関わりが必要と考える.
 COVID-19の活動自粛に伴う高齢者の心身機能では,活動や自主トレーニングをしている群は心身機能が良好もしくは維持されたと報告がある2).活動制限下または退院後,患者が自律した生活を送るためには,患者の主体的なセルフケア習得が望ましく,ADLや活動量の維持が必要である.
 今後のCOVID-19の課題は,リハ医療を止めずに感染制御と両立させることが重要3)と言われている.自主トレーニングの定着化やADLの維持といった「患者主体の活動」と,感染対策下での個別リハの継続,ADL向上と生活への汎化といった「患者を支援する活動」両者の継続が必要と考える.これらにより患者が主体的に活動できる環境を整えることも回復期リハの重要な役割と考える.
引用文献
1)吉川ひろみら: “作業”の捉え方と評価・支援技術.医歯薬出版株式会社,2011.
2)久米絢弓ら:新型コロナウイルス感染症の活動自粛に伴う高齢者の心身機能に関する文献検討.日本ウーマンズヘルス学会誌,2022;20巻2号,p66-77.
3)二瓶太志ら:COVID-19クラスター発生によるリハビリテーション医療やセラピストの業務変遷と患者におけるADLの変化.総合リハ,2022,vol.50,p1433-1437.