第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-1] ポスター:管理運営 1

Fri. Nov 10, 2023 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-1-6] 当院回復期リハビリテーション病棟における患者の「個人史や作業に抱く価値」に関した情報活用の現状と課題

山田 唯1, 宮崎 翔1, 山本 将也1, 小林 幸治2 (1.医療法人アルペン会 アルペンリハビリテーション病院リハビリテーション部, 2.目白大学保健医療学部作業療法科)

【背景】当院作業療法部門(以下,当部門)では,2017年より患者の心理社会面に焦点を当てた作業療法実践のため,第4演者とともに作業療法士(OT)のスーパービジョンを導入した.それより,ライフストーリー・レビューに基づいて患者の「個人史や作業に抱く価値」に関する面接を行い,退院後の生活や役割に結び付く作業の支援に繋げている (宮崎ら2021,山本ら2022).また,患者の「個人史や作業に抱く価値」についての情報を他職種で共有する事はチーム医療を促進する(川口ら,2019)とされるが,2021年度の事業振り返りでは当部門でこうした情報を他職種と十分共有できていない課題が挙がった.
【目的】患者の「個人史や作業に抱く価値」に関するチーム内での情報活用の現状と課題について,回復期専従OTを対象とした調査を行う.その結果を部門内で討議し,生活やQOLの改善に向けたチーム医療実践のための事業提案を行う.
【方法】実務経験2年目以上の当院OT14名を対象とし,患者の「個人史や作業に抱く価値」に関する情報共有の現状と課題についてGoogleフォームでアンケート調査(回答時間30分程度)とヒアリングを実施した.調査計画書は事前に責任者の承認を得て行い,回答時に調査目的の説明の理解と同意を得て実施した.得られた情報は全て匿名で扱い,個人が特定されないよう十分配慮した.質問項目は,検索した関連文献の内容や研究チームでのブレインストーミングによって作成し,「情報活用の必要性」「入院期間全体,入院初期,退院前時期で行っている情報共有の内容とその理由」「実施している情報共有方法」「情報共有により変化した支援内容」「情報共有の満足度とその理由」とした.この内自由記述はKJ法にて分析した.ヒアリングはアンケート結果を提示して当部門で討議した.
【結果】回答率は92%であった.他職種と「個人史や作業に抱く価値」の情報共有をする必要性は「非常に感じている」「ある程度感じている」合わせて100%であった.一方,情報共有の現状に関する満足度は「満足している」は15.4%であった.最も情報共有を行っている項目は,入院初期は「現在生活上で本人が困っていること」「本人の作業に関するニード」「これまでの生活歴」,退院前時期は「本人の作業に関するニード」「今後の生活への要望」であった.情報共有により支援に変化が生じたことがあると回答した割合は「よくある」「少しある」合わせて53.9%であり,その具体例には,病棟職員の重度失語症の患者との関わり方の変化や退院後の作業を重視して住宅改修案の作成や退院指導を行った等があった.次に,KJ法を用いた分析により,情報共有における課題には,《発信内容》や《発信方法》に課題がある一方で,《口頭で伝達する》や《個人史や作業価値などの背景を含めた情報共有》を行う事で《個別性のある支援》や《退院支援の拡充》に繋がっていた.これらの結果を基にヒアリングを行ったところ,多職種での討議の機会を設け,院内全体のプロジェクトとして提起できるといいという意見が挙がった.
【考察】当部門で患者の「個人史や作業に抱く価値」に関する情報活用を重視する風土が作られてきた基に,スーパービジョン後に各自が行動プランを立て,相互にスキルアップや意識改革を行ってきた成果があると考える.今回の結果,情報発信内容や方法について,他職種の関心に関連付け,情報の具体的活用案を示す事で個別性を活かした支援の拡充に繋がると示唆された.今後,支援に変化が生じた成功例の収集・分析を行い,多職種間で共有を図り患者の個人史や作業を重視した支援の向上に繋げたいと考える.