[PQ-2-2] 病室内のトイレについて考えよう
【はじめに】
新病院建築にあたり,個室病室のトイレについて設計段階から作業療法士(以下,OT)として関わることができたので,検討した内容等をまとめて報告する.
【検討事項】
病室の広さは芯―芯で3m×5m.病室出入口は有効で1.2m.病室内のトイレの位置を検討したが,採光や窓の関係で病室出入口側になった.トイレについての検討事項として,使用する患者像,トイレの広さと介助スペースの確保,プライバシーの保護,緊急時の対応等が考えられた.
【結果】
まず,個室病室のトイレを使用する患者像について,多職種で話し合い,自立している患者から一人介助でトイレ移乗,トイレ動作可能な患者が使用し,二人介助が必要な患者は病棟の車いす使用者対応トイレを使用することとした.
並行して,病室のベッドを標準的にどのように配置するのかを多職種で検討した.検討した結果,廊下と並行にベッドを配置することとなった. このことにより,車いす使用者がベッドに対してアプローチする方向が決まるため,効率の良い便器の向きが絞られた.洗面台の配置場所も必要であったため,便器を廊下に沿った向きに配置することとした.
トイレの広さについては,便器を廊下に沿った向きに配置する場合,病室出入口の有効幅が1.2mのため,便器と便器前のスペースは芯―芯で1.55mに収める必要があった.まず,便器の先端から扉までは椅子の前に段ボールを積み上げ,複数の身長の異なるスタッフで圧迫感や起立動作に影響がないかを検討した結果,60cm確保する必要があると判断した.また,便器については建築事務所から提案されたもの以外に,インターネット等を活用し複数のメーカーのものを比較検討した.便器の先端からタンクを含めた全長が短いことを最重視した.また,便器から壁面までの幅やL字手すりと壁面までの幅等も建築事務所から提案されたもの以外にも検討し,効率的に使用できるよう変更した.
また,便器はトイレのセンターではなく壁側へ3cm寄せることで介助スペースを広げるようにした.さらに,便器の横面の壁は3枚扉のスライドドアにし,介助を行う際はスライドドアを開けることで介助スペースを確保した.前面の扉は折り戸にし,折り戸の幅の割合もOTが中心となり検討した.折り戸を開く際にトイレ側に折れてくるよう設計したため,トイレ側から扉を閉める際に扉の厚みの部分に指を挟む危険性があるため事故防止のために溝を掘る工夫をした.また,横面のスライドドアとの兼ね合いで折り戸の持ち手の位置が居室側から操作する場合に,力学的に不利になるため持ち手の形をトイレ側と居室側とで異なる形状にした.
また,病室ドアに一部スリットがはいる予定であったため,例え病室のドアとトイレのドアが開いていたとしても,廊下からトイレ内が見えないように折り戸の出幅や姿見の位置を変更した.
緊急時の対応として,トイレ内から施錠している場合でもスライドドアは外側から開錠できるようにした.また,スライドドアを開ける際に,ドアに患者が寄りかかっていても開けれるようにした.また,前方の折り戸についても緊急時にストレッチャーが通るスペースを確保できるようにした.
【まとめ】
OTとして病院建築に設計段階から関わることができた.実際には病床数や病室の広さや廊下幅等,様々なことが同時並行で検討されてゆく.OTは住宅改修等で人的・物的環境を評価し,その人にあった提案を行う機会は多いが,元々の環境を整えるという機会は少ない.今回,多職種で個室病室内のトイレを使用する患者像を共有したことが最も重要な点であった.そのことで個室病室内トイレに求められる機能が一人介助で対応可能な範囲に絞られ,効率的なトイレスペースの確保につながった.
新病院建築にあたり,個室病室のトイレについて設計段階から作業療法士(以下,OT)として関わることができたので,検討した内容等をまとめて報告する.
【検討事項】
病室の広さは芯―芯で3m×5m.病室出入口は有効で1.2m.病室内のトイレの位置を検討したが,採光や窓の関係で病室出入口側になった.トイレについての検討事項として,使用する患者像,トイレの広さと介助スペースの確保,プライバシーの保護,緊急時の対応等が考えられた.
【結果】
まず,個室病室のトイレを使用する患者像について,多職種で話し合い,自立している患者から一人介助でトイレ移乗,トイレ動作可能な患者が使用し,二人介助が必要な患者は病棟の車いす使用者対応トイレを使用することとした.
並行して,病室のベッドを標準的にどのように配置するのかを多職種で検討した.検討した結果,廊下と並行にベッドを配置することとなった. このことにより,車いす使用者がベッドに対してアプローチする方向が決まるため,効率の良い便器の向きが絞られた.洗面台の配置場所も必要であったため,便器を廊下に沿った向きに配置することとした.
トイレの広さについては,便器を廊下に沿った向きに配置する場合,病室出入口の有効幅が1.2mのため,便器と便器前のスペースは芯―芯で1.55mに収める必要があった.まず,便器の先端から扉までは椅子の前に段ボールを積み上げ,複数の身長の異なるスタッフで圧迫感や起立動作に影響がないかを検討した結果,60cm確保する必要があると判断した.また,便器については建築事務所から提案されたもの以外に,インターネット等を活用し複数のメーカーのものを比較検討した.便器の先端からタンクを含めた全長が短いことを最重視した.また,便器から壁面までの幅やL字手すりと壁面までの幅等も建築事務所から提案されたもの以外にも検討し,効率的に使用できるよう変更した.
また,便器はトイレのセンターではなく壁側へ3cm寄せることで介助スペースを広げるようにした.さらに,便器の横面の壁は3枚扉のスライドドアにし,介助を行う際はスライドドアを開けることで介助スペースを確保した.前面の扉は折り戸にし,折り戸の幅の割合もOTが中心となり検討した.折り戸を開く際にトイレ側に折れてくるよう設計したため,トイレ側から扉を閉める際に扉の厚みの部分に指を挟む危険性があるため事故防止のために溝を掘る工夫をした.また,横面のスライドドアとの兼ね合いで折り戸の持ち手の位置が居室側から操作する場合に,力学的に不利になるため持ち手の形をトイレ側と居室側とで異なる形状にした.
また,病室ドアに一部スリットがはいる予定であったため,例え病室のドアとトイレのドアが開いていたとしても,廊下からトイレ内が見えないように折り戸の出幅や姿見の位置を変更した.
緊急時の対応として,トイレ内から施錠している場合でもスライドドアは外側から開錠できるようにした.また,スライドドアを開ける際に,ドアに患者が寄りかかっていても開けれるようにした.また,前方の折り戸についても緊急時にストレッチャーが通るスペースを確保できるようにした.
【まとめ】
OTとして病院建築に設計段階から関わることができた.実際には病床数や病室の広さや廊下幅等,様々なことが同時並行で検討されてゆく.OTは住宅改修等で人的・物的環境を評価し,その人にあった提案を行う機会は多いが,元々の環境を整えるという機会は少ない.今回,多職種で個室病室内のトイレを使用する患者像を共有したことが最も重要な点であった.そのことで個室病室内トイレに求められる機能が一人介助で対応可能な範囲に絞られ,効率的なトイレスペースの確保につながった.