[PQ-2-5] 当院作業療法部門におけるインシデントの特徴と課題
【はじめに】質の高い医療を提供するために医療安全文化の醸成は欠かせない.当院では院内の医療安全管理委員会,リハビリ安全管理委員会においてインシデント分析や研修会を開催している.今回は当院作業療法部門における過去5年間のインシデントレポートについて後方視的に分析を行い,インシデントの特徴と今後の課題について検討した.
【方法】2017年4月から2022年3月の5年間に当院作業療法部門で報告されたインシデントレポート117件(インシデント報告分析システムePower/Clip)を対象に,影響度(国立大学附属病院医療安全管理協議会),内容,発生場所,発生要因,当事者情報として経験年数や担当か代行かについて調査した.次に内容と経験年数との関係について検討するため,当事者の経験年数が5年未満と5年以上の2群に分けてX2検定を行った.統計処理はIBM SPSS Statistic 2.2を用い,P<0.05を統計学的に有意な差とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】5年間のOTスタッフ延べ人数(育休等で休暇中は除く)は121.5人(内新人は16人,年平均3.2人入職)で,OT1人当たりの報告数は平均0.96件.影響度は0:11件,1:28件,2:49件,3a:28件,3b:1件で,内容は転倒転落48件,創傷31件,チューブ・ドレーン10件,指示・情報伝達4件,医療機器の使用・管理3件,個人情報3件,打撲2件,火傷1件,患者間違い1件,その他14件であった.発生日は平日110件,休日7件で,発生場所はOT室67件,病室36件,病棟7件,発生のタイミングはOT時81件,OT終了時21件,OT開始時12件であった.発生要因(複数選択)は,判断ミス53件,確認不足48件,技術・手技未熟40件,観察不足35件で,判断ミスとしては患者の能力把握不十分,課題の難易度設定不十分,普段と異なる状況や予期せぬ事態が発生した時の対応不十分などであった.最も多い転倒転落については,影響度2が22件と最も多く,発生状況は移乗16件,立位活動10件,起居9件,座位活動8件,歩行5件であった.次に多い創傷では影響度3a以上が25件で,その内容は移乗15件,調理練習4件,皮膚・爪4件,訓練用具2件であった.当事者状況では,担当81件,代行31件,その他5件で,経験年数では5年未満66件(1年未満26件,2年未満13件,3年未満9件,4年未満9件,5年未満9件),5年以上51件であった.インシデントの内容と経験年数との関係では,転倒転落について有意差を認めた(p<0.05).
【考察】インシデントは転倒転落のみ経験年数との関連を認めたが,それ以外は経験年数に関係なく発生していた.発生状況では移乗が最も多く,発生要因としては判断ミス,確認不足,技術・手技未熟が挙げられた.次いで多い創傷でも移乗関連が多かった.新人教育では移乗介助量別に患者を選定し見学-模倣-実施と経験した後,単独実施や代行を行うが,座位能力や体調など患者特性に合わせた準備,環境設定,方法について指導が必要である.またOT場面ではADLやIADL,趣味や役割活動など個別性の高い応用動作の指導機会が多い.特に調理練習は創傷のリスクが高いため,患者の能力に適した課題選定や環境設定,予期せぬ事態が発生した時の対応など経験を積む必要があり,KYT(危険予知トレーニング)の活用も有効であると考える.医療安全文化の醸成へ向けて,医療安全についての理解を求めるとともに,日頃から報告・連絡・相談しやすい関係作りも必須である.
【方法】2017年4月から2022年3月の5年間に当院作業療法部門で報告されたインシデントレポート117件(インシデント報告分析システムePower/Clip)を対象に,影響度(国立大学附属病院医療安全管理協議会),内容,発生場所,発生要因,当事者情報として経験年数や担当か代行かについて調査した.次に内容と経験年数との関係について検討するため,当事者の経験年数が5年未満と5年以上の2群に分けてX2検定を行った.統計処理はIBM SPSS Statistic 2.2を用い,P<0.05を統計学的に有意な差とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】5年間のOTスタッフ延べ人数(育休等で休暇中は除く)は121.5人(内新人は16人,年平均3.2人入職)で,OT1人当たりの報告数は平均0.96件.影響度は0:11件,1:28件,2:49件,3a:28件,3b:1件で,内容は転倒転落48件,創傷31件,チューブ・ドレーン10件,指示・情報伝達4件,医療機器の使用・管理3件,個人情報3件,打撲2件,火傷1件,患者間違い1件,その他14件であった.発生日は平日110件,休日7件で,発生場所はOT室67件,病室36件,病棟7件,発生のタイミングはOT時81件,OT終了時21件,OT開始時12件であった.発生要因(複数選択)は,判断ミス53件,確認不足48件,技術・手技未熟40件,観察不足35件で,判断ミスとしては患者の能力把握不十分,課題の難易度設定不十分,普段と異なる状況や予期せぬ事態が発生した時の対応不十分などであった.最も多い転倒転落については,影響度2が22件と最も多く,発生状況は移乗16件,立位活動10件,起居9件,座位活動8件,歩行5件であった.次に多い創傷では影響度3a以上が25件で,その内容は移乗15件,調理練習4件,皮膚・爪4件,訓練用具2件であった.当事者状況では,担当81件,代行31件,その他5件で,経験年数では5年未満66件(1年未満26件,2年未満13件,3年未満9件,4年未満9件,5年未満9件),5年以上51件であった.インシデントの内容と経験年数との関係では,転倒転落について有意差を認めた(p<0.05).
【考察】インシデントは転倒転落のみ経験年数との関連を認めたが,それ以外は経験年数に関係なく発生していた.発生状況では移乗が最も多く,発生要因としては判断ミス,確認不足,技術・手技未熟が挙げられた.次いで多い創傷でも移乗関連が多かった.新人教育では移乗介助量別に患者を選定し見学-模倣-実施と経験した後,単独実施や代行を行うが,座位能力や体調など患者特性に合わせた準備,環境設定,方法について指導が必要である.またOT場面ではADLやIADL,趣味や役割活動など個別性の高い応用動作の指導機会が多い.特に調理練習は創傷のリスクが高いため,患者の能力に適した課題選定や環境設定,予期せぬ事態が発生した時の対応など経験を積む必要があり,KYT(危険予知トレーニング)の活用も有効であると考える.医療安全文化の醸成へ向けて,医療安全についての理解を求めるとともに,日頃から報告・連絡・相談しやすい関係作りも必須である.