[PQ-3-1] 危険予知能力評価の再評価版開発に向けた内容的妥当性の検討
【序論】我々は保健医療職の危険予知能力を定量的に測定できるTime Pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム(以下,TP-KYT)を作成し,本学会において評価法としての信頼性や妥当性について報告してきた.本評価法はリスク教育の効果測定を行うために,再評価版(以下,Part.B)の作成が求められており,作成に向け準備を進めている状況である.TP-KYTは熟練者の危険予知能力を基準とした内容的妥当性のある評価法であるため,Part.Bにおいても熟練者と非熟練者が行う危険の抽出状況に差があることが要件となる.そこで今回,Part.Bの1場面における熟練者と非熟練者の危険抽出の差を質的に分析し,内容的妥当性を検討することとした.
【目的】Part.Bの1場面が熟練者と非熟練者において危険抽出に差がみられるのかを検討することで再評価版としてイラストが適切であるのかを検討する.
【方法】対象:病院や施設で働く保健医療従事者66名に対し,Bennerの基準において臨床経験が豊富であるとされる5年以上の臨床経験のある熟練者群34名(平均年齢37.7±7.2歳,平均経験年数12.5±5.8年)と非熟練者群32名(平均年齢27.9±6.9歳,平均経験年数1.9±1.3年)の2群に分けた.方法:2群にはPart-Bのトイレ移乗場面のイラストを提示し10秒間で危険だと判断した箇所にチェックを入れてもらった.その後チェックを入れた個所ごとに何を危険だと感じたのかについてその内容の記述を求めた.分析方法:危険内容の記述について,質的データ分析ソフトウェアであるMAXQDA 2020(VERBI社)を用いてテキストデータをコード化し,概念的なカテゴリを作成した.作成したカテゴリは二事例モデルにて出現数の検討を行った.また,質的研究に精通した共同研究者同士のディスカッションによる質的データ分析を行い,結果の比較を試みた.
倫理的配慮:本研究は倫理委員会にて承認を得て実施した(承認番号19-Ifh-068).
【結果】危険内容のコード数は熟練者群120,非熟練者群106であった.カテゴリを<>,各群のコード数を「熟練者,非熟練者」で示す.概念的なカテゴリは17のカテゴリ<移乗のための足の位置が不適切「3,0」><車椅子が便座・手すりから離れすぎている「28,25」><車椅子のブレーキがかかっていない「24,22」><敷きマットに足が引っかかる「18,17」><便座カバーの操作に手間取りバランスを崩す「13,11」><敷きマットが滑り転倒する「5,9」><下衣の操作に手間取りバランスを崩す「1,0」><周囲に人がいない「1,2」><消臭剤に躓いてバランスを崩す「6,7」><すくみ足のためにバランスを崩す「4,1」><洗浄レバーの操作時にバランスを崩す「1,0」><手のこわばりにより手すりを掴み損ねる「3,0」><立位時に左手がアームレストを離せない「1,0」><動作緩慢による失禁「1,0」><手すり把持に失敗し倒れる「3,1」><靴を履いておらず滑り転倒する「0,2」><その他「8,9」>に分類された.
【考察】MAXQDAにおける二事例モデルの結果,トイレ移乗場面の危険抽出において熟練者のみのカテゴリは6カテゴリ,非熟練者のみのカテゴリは1カテゴリであることが分かった.このことより,熟練者の方が同じ場面を見ても危険の抽出範囲が広いことが示唆された.Part.Bの1場面であるトイレ移乗場面は熟練者の抽出を反映する場面であることが分かり,熟練者の危険予知能力を反映する内容的妥当性を確認できたと考えられる.
【目的】Part.Bの1場面が熟練者と非熟練者において危険抽出に差がみられるのかを検討することで再評価版としてイラストが適切であるのかを検討する.
【方法】対象:病院や施設で働く保健医療従事者66名に対し,Bennerの基準において臨床経験が豊富であるとされる5年以上の臨床経験のある熟練者群34名(平均年齢37.7±7.2歳,平均経験年数12.5±5.8年)と非熟練者群32名(平均年齢27.9±6.9歳,平均経験年数1.9±1.3年)の2群に分けた.方法:2群にはPart-Bのトイレ移乗場面のイラストを提示し10秒間で危険だと判断した箇所にチェックを入れてもらった.その後チェックを入れた個所ごとに何を危険だと感じたのかについてその内容の記述を求めた.分析方法:危険内容の記述について,質的データ分析ソフトウェアであるMAXQDA 2020(VERBI社)を用いてテキストデータをコード化し,概念的なカテゴリを作成した.作成したカテゴリは二事例モデルにて出現数の検討を行った.また,質的研究に精通した共同研究者同士のディスカッションによる質的データ分析を行い,結果の比較を試みた.
倫理的配慮:本研究は倫理委員会にて承認を得て実施した(承認番号19-Ifh-068).
【結果】危険内容のコード数は熟練者群120,非熟練者群106であった.カテゴリを<>,各群のコード数を「熟練者,非熟練者」で示す.概念的なカテゴリは17のカテゴリ<移乗のための足の位置が不適切「3,0」><車椅子が便座・手すりから離れすぎている「28,25」><車椅子のブレーキがかかっていない「24,22」><敷きマットに足が引っかかる「18,17」><便座カバーの操作に手間取りバランスを崩す「13,11」><敷きマットが滑り転倒する「5,9」><下衣の操作に手間取りバランスを崩す「1,0」><周囲に人がいない「1,2」><消臭剤に躓いてバランスを崩す「6,7」><すくみ足のためにバランスを崩す「4,1」><洗浄レバーの操作時にバランスを崩す「1,0」><手のこわばりにより手すりを掴み損ねる「3,0」><立位時に左手がアームレストを離せない「1,0」><動作緩慢による失禁「1,0」><手すり把持に失敗し倒れる「3,1」><靴を履いておらず滑り転倒する「0,2」><その他「8,9」>に分類された.
【考察】MAXQDAにおける二事例モデルの結果,トイレ移乗場面の危険抽出において熟練者のみのカテゴリは6カテゴリ,非熟練者のみのカテゴリは1カテゴリであることが分かった.このことより,熟練者の方が同じ場面を見ても危険の抽出範囲が広いことが示唆された.Part.Bの1場面であるトイレ移乗場面は熟練者の抽出を反映する場面であることが分かり,熟練者の危険予知能力を反映する内容的妥当性を確認できたと考えられる.