第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-3-2] 療養病棟におけるデータベース構築と実態調査からみるリハビリテーション(作業療法)の意義とその検討

奥田 眞矢1, 花田 恵介1, 徳田 和宏1, 海瀬 一也1, 藤田 敏晃2 (1.阪和記念病院リハビリテーション部, 2.阪和記念病院脳神経外科)

【背景と目的】現在,療養病棟における先行調査では,療養病棟入棟患者の平均リハビリテーション回数は2.6回/週,平均単位数は5.1単位/週であり,さらに37.8%はリハビリテーションを実施していないと報告がある.このように療養病棟におけるリハビリテーションの有無やその頻度について部分的な調査はされているものの,対象者の背景やどのようなアウトカムにどの程度の影響を及ぼすのかまでは不明であり,さらに療養病棟での作業療法により在宅復帰や死亡率への寄与なども含めた客観的なデータはない.そこで,当院の療養病棟において,質の高いリハビリテーション運用に向け臨床情報をデータベース化し蓄積していくこととした.本報告の目的は,当院療養病棟へ入棟した対象者の実態把握および作業療法介入の有無で比較検討し,今後の展望も含め検討することである.
【対象と方法】対象は2022年10月1日から2022年12月31日までに当院療養病棟へ入棟し,リハビリテーションを実施していた89例を対象とした.同期間に再入院,再入棟した対象者は除外した.方法は,カルテ既存情報からデータベースを構築し,そのデータを元に後方視的に調査した.抽出したデータは,入院時身体項目(身長,体重,BMI),基礎的情報(年齢,性別,介護保険の有無,入院前介護後,歩行自立度,主病名,併存疾患,算定区分,入棟までの日数,入棟期間),入院時バイタルサイン,入院時血液検査,療養病棟の入退棟時臨床所見(バルーン,経管栄養,褥瘡,肺炎,尿路感染,不整脈,尿路感染,心不全,深部静脈血栓,その他感染症の有無),療養病棟のリハビリテーション実施状況(提供日数,提供単位,1日の平均単位),療養病棟入退棟時FIM,転帰(入院継続,自宅,施設,転院,死亡)とした.分析方法は,作業療法介入の有無で介入群と対照群の2群に分類し各項目を比較検討した.すべての統計解析において,Shapiro-Wilk検定により正規性が確認できればt検定を,確認できなければMann-Whitney検定を実施した.統計ソフトはEZRを用い有意水準は5%とした.
【結果】解析の対象は83名(年齢84.5±13.0歳)であり,介入群57名(88.0±11.7歳),対照群26名(81.0±15.9歳)であった.全体の46%が介護保険を取得しており,入棟時FIM(運動/認知)は24.1±16.7/16.1±8.9点,退院時FIMは28.7±21.4/16.8±11.2点であった.転帰は,入院継続44例(53%),自宅退院6例(7%),施設退院15例(18%),転院7例(8%),死亡11例(13%)であった.次に2群比較の結果,有意差を認めた項目として,療養病棟入棟までの日数(介入群14.8±11.3日,対照群7.1±7.1日,p= 0.02),療養病棟の入院期間(介入群28.3±17.6日,対照群38.6±20.1日,p= 0.02),1日の平均単位数(介入群1.4±0.7単位,対照群0.8±0.4単位,p<0.01)であった.入院前ADL,入院時バイタルサイン,臨床所見,転帰やFIMなどその他比較した項目については有意差がなかった.
【考察】療養病棟におけるデータベースを構築しその運用を開始した.今回の結果では作業療法の介入によりADLや転帰に差はなかったものの,入院期間が短いという傾向がわかった.これらが作業療法の効果を示すかどうかは不明であるが,今度もデータを蓄積し転帰に関与する因果関係に作業療法が関与するかどうか検証していきたい.
【倫理的配慮】本研究は後ろ向き観察研究であり,個人情報の取扱いには十分配慮しヘルシンキ宣言を遵守している.また医療法人錦秀会倫理審査委員会の承認(承認番号:2022-14)を得ている.