[PQ-4-1] 研修における新入職員の思考の変化
【はじめに】
国家試験に合格した学生は,学生時代の経験をもとに作業療法士になる.そのため,新人研修は欠かせないが,広く標準化された新人研修はなく,各施設独自の教育が実践されている.新入職員は,新しい配属先の先輩との関係の構築,スキル不足や迷惑をかけることに不安を感じ,仕事内容の理想と現実のギャップに悩むことが考えられる.そこで今回の研究は,新人教育体制を構築することを前提に,1つの新人教育プログラムをもとに,新入職員の思考がどのように変化したかを示すことである.
【方法と対象】
調査方法は,新入職員に研修開始前(事前アンケート)と研修終了後(事後アンケート)の2回実施した.内容は,自身の振り返りや働くことへの思いについて聞き,自由記述とした.アンケート回収率は100%であった.研修内容は大学教員2名と施設側担当者2名で検討し,研修期間は約3か月間である.研修目的は,「7月に新人に担当ケースを渡す」「2022年度末に『専門職』として独り立ちできる」「『電話受付・面談・必要書類』の一連の流れが実施できる」「主体的に行動できる」の4つである.
回収した回答は,KHCoder Version 3.Beta.04を用いて計量テキスト分析を行った.なお本研究は,白鳳短期大学倫理審査委員会において承認を得ている(通知番号21004). 対象は,2022年度に国家試験に合格した作業療法士11名,理学療法士2名(男性4名,女性9名)である.
【結果】
1)研修会前の頻出語リストと共起ネットワーク
事前アンケートでの頻出語は「思う」(106回),「職員」(51回),「自分」(43回),「勤務」(40回),「事業所名」(31回),「先輩」(30回)であった.
共起ネットワーク図での抽出語の繋がりは,基本的な「勤務」「内容」の確認,「利用者」に対して「出来る」ことがあるか期待と不安,「自分」自身について振り返り,「療育」への期待と「経験」不足による「不安」,職員や利用者との「関わる」ことへの「楽しみ」と期待,「先輩」や「同期」の「職員」との関わり,「知識」を「学び」成長したい意欲,「発達領域」における専門職像,であった.
2)研修会後の頻出語リストと共起ネットワーク
事後アンケートでの頻出語は「職員」(81回),「出来る」(47回),「思う」(43回),「事業所名」(35回),「感じる」(33回),「研修」(31回)であった.
共起ネットワーク図での抽出語の繋がりは,「事業」所で「療育」を行うなど働く自覚,研修会での「良い」「関わり」,「知る」ことでの「不安」の軽減,「安心」感,「作業療法」士など専門職への意欲,「職員」と「話す」などの交流の「機会」,「研修会」前後での自身の変化,であった.
【考察】
今回の結果より思考の変化について以下のことが考察できた.
『勤務に向けての基本的情報の確認』で,情報や知識を得たことで不安は軽減されるが,情報を得る姿勢は,研修会前では受動的な思いが先行していることが分かった.『療育者としての成長の期待』で,これからは実際に療育を提供する立場になることを意識し,自身が成長することができるという期待が高まった.一方で,うまく行うことができるかという不安も同時に抱え,葛藤している姿が伺えた.『人との関わり』について,新入職員は,新しい環境で他者とどのように関わるかについての関心が高まり,実際に交流することで安心感を得ていた.
以上の結果から,新人研修の中で勤務についての基本的な情報を提供することで安心感を与える効果があること,研修において他職員と交流することや療育のイメージを具体的に持つことにより,働く意欲や主体的な姿勢に繋がることが示唆された.
国家試験に合格した学生は,学生時代の経験をもとに作業療法士になる.そのため,新人研修は欠かせないが,広く標準化された新人研修はなく,各施設独自の教育が実践されている.新入職員は,新しい配属先の先輩との関係の構築,スキル不足や迷惑をかけることに不安を感じ,仕事内容の理想と現実のギャップに悩むことが考えられる.そこで今回の研究は,新人教育体制を構築することを前提に,1つの新人教育プログラムをもとに,新入職員の思考がどのように変化したかを示すことである.
【方法と対象】
調査方法は,新入職員に研修開始前(事前アンケート)と研修終了後(事後アンケート)の2回実施した.内容は,自身の振り返りや働くことへの思いについて聞き,自由記述とした.アンケート回収率は100%であった.研修内容は大学教員2名と施設側担当者2名で検討し,研修期間は約3か月間である.研修目的は,「7月に新人に担当ケースを渡す」「2022年度末に『専門職』として独り立ちできる」「『電話受付・面談・必要書類』の一連の流れが実施できる」「主体的に行動できる」の4つである.
回収した回答は,KHCoder Version 3.Beta.04を用いて計量テキスト分析を行った.なお本研究は,白鳳短期大学倫理審査委員会において承認を得ている(通知番号21004). 対象は,2022年度に国家試験に合格した作業療法士11名,理学療法士2名(男性4名,女性9名)である.
【結果】
1)研修会前の頻出語リストと共起ネットワーク
事前アンケートでの頻出語は「思う」(106回),「職員」(51回),「自分」(43回),「勤務」(40回),「事業所名」(31回),「先輩」(30回)であった.
共起ネットワーク図での抽出語の繋がりは,基本的な「勤務」「内容」の確認,「利用者」に対して「出来る」ことがあるか期待と不安,「自分」自身について振り返り,「療育」への期待と「経験」不足による「不安」,職員や利用者との「関わる」ことへの「楽しみ」と期待,「先輩」や「同期」の「職員」との関わり,「知識」を「学び」成長したい意欲,「発達領域」における専門職像,であった.
2)研修会後の頻出語リストと共起ネットワーク
事後アンケートでの頻出語は「職員」(81回),「出来る」(47回),「思う」(43回),「事業所名」(35回),「感じる」(33回),「研修」(31回)であった.
共起ネットワーク図での抽出語の繋がりは,「事業」所で「療育」を行うなど働く自覚,研修会での「良い」「関わり」,「知る」ことでの「不安」の軽減,「安心」感,「作業療法」士など専門職への意欲,「職員」と「話す」などの交流の「機会」,「研修会」前後での自身の変化,であった.
【考察】
今回の結果より思考の変化について以下のことが考察できた.
『勤務に向けての基本的情報の確認』で,情報や知識を得たことで不安は軽減されるが,情報を得る姿勢は,研修会前では受動的な思いが先行していることが分かった.『療育者としての成長の期待』で,これからは実際に療育を提供する立場になることを意識し,自身が成長することができるという期待が高まった.一方で,うまく行うことができるかという不安も同時に抱え,葛藤している姿が伺えた.『人との関わり』について,新入職員は,新しい環境で他者とどのように関わるかについての関心が高まり,実際に交流することで安心感を得ていた.
以上の結果から,新人研修の中で勤務についての基本的な情報を提供することで安心感を与える効果があること,研修において他職員と交流することや療育のイメージを具体的に持つことにより,働く意欲や主体的な姿勢に繋がることが示唆された.