第57回日本作業療法学会

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管理運営

[PQ-4] ポスター:管理運営 4

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-4-4] 作業療法士の労働価値観について

山本 真理子, 仲田 奈生 (島根リハビリテーション学院作業療法学科)

【はじめに】
人口構造といった社会変化の中で勤労者の意識,働き方は変化し,就業形態の多様化は様々な要因が相互に影響を与えながら進展している.(厚生労働省,2006)また,一般的に,労働価値観は仕事に対するモチベーションへ影響するとされ,従業員満足度が高いと,生産性が向上し質の高いサービスを提供することができ,その結果顧客満足度も向上すると報告されている.(鈴木,2014)看護業界では,職員の働きがいとモチベーションを高める因子として,「労働価値観の満足」と「働く環境の整備」の関係が報告されている.(奥山,2022)しかし,作業療法士(OT)を対象にした同様の調査や先行研究において明らかにはされていない.本研究では,OTの労働価値観を明らかにすることを目的とする.OTの労働価値観を知ることで組織における働く側の満足および働く環境整備のあり方を考える一助とする.
【方法】
島根県内のOT500名を対象とし,無記名の自記式アンケートを実施した.対象者に研究の趣旨を説明し同意を得た者から回収した.労働価値観の測定は,労働価値観測定尺度(短縮版)を使用した.労働価値観測定尺度(短縮版)の下位尺度は,同僚への貢献,社会的評価,社会への貢献,自己の成長,経済的報酬,達成感,所属組織への貢献の7つであり,計21項目で構成される.(江口,2009)回答方法は6件法で,得点が高いほど仕事をしていく上での重要度が高いことを示す.調査結果より,7群の間の比較をKruskal-Walis検定で検討した.統計学的処理にはSPSS(ver.23)を使用した.なお,本研究は筆頭者所属施設の倫理委員会承認を得て実施した. (申請番号72)
【結果】
有効回答率は65.20%であった.労働価値観の結果について,Kruskal-Walis検定を行った結果,7群の間に有意差(p<0.01)が認められた.項目毎の平均では,自己の成長の平均得点が3.8,経済的報酬の平均得点が3.7と他に比べて高く,社会的評価の平均得点が2.0と他に比べて低かった(p<0.01).
【考察】
今回,島根県内の OTの労働価値観について,同僚への貢献,社会的評価,社会への貢献,自己の成長,経済的報酬,達成感,所属組織への貢献の7項目において検討した.その結果,自己の成長と経済的報酬に関する項目の評価が高く,報酬を得ると共に,自己の成長を促進することに価値を見出している実態が明らかになった.一方,社会的評価に関する項目の評価は低く,仕事をしていく上での重要度が低いことが示唆された.労働価値観を満たすことが「働きがい」や「モチベーションアップ」につながり,組織においては職員の労働価値観を満たすことが離職を防ぐとされる.加えて,その環境を整備することは,職員の愛他性を高めると報告されている.(奥山,2022)人生の多くの時間を占める仕事に働きがいを感じられるか否かは作業療法士個人を守るためにも重要なことであり,また,他者貢献を生業とするOTの職場づくりにおいても働きがいの視点で環境を整備し職員の愛他性を高める必要があると考える.今回の調査で島根県内のOTの労働価値観を明らかにしたことで組織における働く側の満足および働く環境整備のあり方を考える一助になったと考える.