第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-5] ポスター:管理運営 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-5-2] 災害に対する作業療法士の備え

宮寺 寛子1,4, 関根 圭介2,4, 馬塲 順子1, 岡田 直純1, 小林 法一3 (1.群馬パース大学, 2.公立藤岡総合病院, 3.東京都立大学, 4.群馬県作業療法士会災害対応委員会)

【背景】
 災害の頻度と影響が増すにつれて作業療法士の災害支援活動における役割が認識されている.作業療法士の災害に対する備えが進み,災害直後の業務継続を目的としたものだけでなく,クライエントの災害リスク軽減もその目的に含むことが示された(WFOT,2016,2022).さらにパンデミックの経験は,作業療法サービスへのアクセス制限に対して備える必要性を強調した.これらを受け,群馬県作業療法士会(以下,群馬県士会)災害対応委員会では,県士会員の災害に対する備えを高める方策を模索している.
【目的】
 群馬県士会に所属する作業療法士の災害に対する備えを明らかにし,今後の対策を検討する.
【方法】
 群馬県士会に所属する作業療法士893名を対象に,災害の備えに関するwebアンケートを実施した.アンケートは2部で構成され,1部は「施設の災害対応マニュアルの有無」「備蓄の有無」など業務維持を目的とした備えの実施状況および満足度を回答してもらった.2部は「クライエントの地域活動を支援している」「災害教育を行っている」などクライエントの災害リスク軽減を目的とした備えの実施状況及び満足度を回答してもらった.実施期間は,2022年11月~2023年1月とした.本調査実施にあたり,筆頭発表者所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得ている(PAZ-22-16-1).
【結果】
 有効回答は105名(回収率11.8%),経験年数は14.0±8.5年,所属施設は一般病院が49.1%で最も多く,次いで介護保険法関連施設26.9%,養成校10.2%,災害支援の経験あり8.3%,経験なし91.7%であった.
 1部の業務維持を目的とした備えでは,「ハザードマップでリスクを把握している」「災害対策マニュアルを持っている(読んでいる)」など,備えを行っている者が56.5%,「何をすればいいか分からない」「備えが必要とは考えていない」の備えていない者が43.5%を占めた.業務維持を目的とした備えの満足度は満足(満足,やや満足)10.2%,不満(不満,やや不満)62.0%,分からない27.8%であった.
 2部のクライエントの災害リスク軽減を目的とした備えでは,「クライエントの障害特有のリスク評価を行っている」「地域の防災活動に参加している」などの備えを行っている者が16.7%,「何をすればいいか分からない」「備えが必要とは考えていない」の備えていない者が76.9%を占めた.クライエントの災害リスク軽減を目的とした備えの満足度は満足(満足,やや満足)2.8%,不満(不満,やや不満)58.4%,分からない38.9%であった.
【考察】
 災害に対する備えの満足度は,業務維持でもクライエントの災害リスク軽減でも不満(不満,やや不満)の回答が多く,重要性を認識しているが災害に対する備えは不十分である可能性を示唆する結果であった.特に,クライエントの災害リスク軽減を目的とする備えが進んでいないことが明らかとなった.「何をすればいいか分からない」の回答が多かったことから,日常と非日常の連続性を強化する等,災害イメージを持てるような対策の必要性が示唆された.また,サービスへのアクセス制限に対する備えは見られず,対面以外の方法で作業療法へのアクセスを確立する等の対策が必要であることも示された.