第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-5] ポスター:管理運営 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-5-3] 作業療法士のバーンアウトを減らすための対策を考える

佐藤 亮太1,2, 芝地 杏花1,3, 長谷川 明嶺1,4, 大場 愛菜1, 小林 法一1 (1.東京都立大学大学院人間健康科学研究科, 2.東京湾岸リハビリテーション病院, 3.横浜鶴見リハビリテーション病院, 4.湘南慶育病院)

【序論】厚生労働省はバーンアウトを「それまでひとつの物事に没頭していた人が,心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い,社会に適応できなくなること」と定義している.バーンアウトは看護や介護といったヒューマンサービスの現場で多発することが報告され,作業療法士のバーンアウトも問題視されてきた.本邦における作業療法士のバーンアウトに関する先行研究では,個人的要因や職場環境要因など多要因の職務ストレッサーとの関連が報告されている.一方で,作業療法士のバーンアウトを減らすための対策に関する研究は散見する程度である.また,若手の作業療法士ほどバーンアウトのリスクが高いことが報告されている.本研究を行うことで将来の作業療法士の育成や作業療法業界の発展の一助となることが考えられる.
【目的】本研究の目的は,バーンアウトを減らし,作業療法士の仕事を続けるための対策を検討することである.
【方法】「作業療法士のバーンアウトを減らす対策を考える」というテーマで,ブレーンストーミングを行い,グループKJ法に準拠した方法で分析した.本研究におけるバーンアウトの定義は,「作業療法士として仕事に没頭していた人が,荷重負担やパーソナリティの要因から極度のストレス反応が出現し,仕事に手がつかなくなることや対人関係を避けるようになること」とした.分析者は,2〜20年目の作業療法士5名(身体領域3名・精神領域1名・発達領域1名)で構成された.分析結果は,作業療法分野で質的研究の経験がある分析者以外の研究者に確認を依頼した.また,本研究に倫理的配慮を要する対象者や事象は含まれていない.
【結果】ブレーンストーミングで集まった多様な意見(データ)から83のラベルを生成した.次にKJ法に準じたグループ編成と図解化を行った結果,作業療法士のバーンアウトを減らすためのポイントとなる6つの<概念>および,各概念の関係を示す構造図を得た.構造図のタイトルは「OTがバーンアウトしないためのNEW WORK STYLE」であった.バーンアウト対策の始まりは,今まで勉強してこなかった<バーンアウトの基本的な知識を頭に入れておく>ことで,自分もバーンアウトになるリスクを抱えていることを認識し<自分を犠牲にしない仕事の仕方を意識する>ことを支える.ひとつのことに強い価値を持ちすぎたり,職業に対し価値を見出せなくなったりしてしまわないよう<働く上での心地良い価値を見つける>ことを中心として,自分の殻にこもらず<自分だけの固定概念から飛び出してみる>ことや,<今までの常識を疑い良いと思った働き方を取り入れる>ことが相互に関係していた.これらの概念は最終的に未来に対し希望を持ち<将来のプランを描いて今の自分に期待する>ことに繋がっていた.
【考察】本研究によって,作業療法士のバーンアウトを減らすための対策に関して6つの概念が得られた.本研究の参加者は現場経験のある様々な領域の作業療法士であったことから,この結果の転用性はある程度担保されたと考える.これらの概念によってバーンアウトを予防できる可能性があると仮定し,実際に対策を図っていくことが今後の課題である.