第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-5] ポスター:管理運営 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-5-4] 医療機関に就業する作業療法士が知覚する働きやすさ

館岡 周平, 廣瀬 里穂 (目白大学保健医療学部作業療法学科)

【背景】近年,我が国では働き方改革のもと,働き方が重視されるようになってきた.その視点の一つである働きやすさに関する研究は散見されているが,医療機関に就業する作業療法士に着目した報告は見当たらない.働きやすさは,個々人の価値観や考え方,経験等に加え,就業する職場環境に多大な影響を受けると考えられる.そのため,作業療法士が知覚する働きやすさの解明には,全国の医療機関に就業し,多様な背景をもつ作業療法士を対象にデータを収集し,それらの分析が必要である.
【目的】本研究の目的は,医療機関に就業する作業療法士が知覚する働きやすさの視点を明らかにすることである.なお,本報告では,経験年数群での比較を中心に示す.
【方法】調査対象は,日本作業療法士協会会員名簿を利用し,10名以上の会員が所属する医療関連の全国1314施設を母集団と仮定し,乱数表を用いてそのうちの300施設をランダムに抽出した.対象となった医療機関の作業療法部門の管理者宛に研究内容と所属の作業療法士への配布を郵送にて依頼し,Web上のアンケートのURLおよびQRコードを添付した.調査内容は,作業療法士として就業する職場において,実際に知覚する「働きやすさ」についての自由回答式質問と,回答者の基本属性とした.自由回答の分析には,計量テキスト分析の手法を用いた.本研究では,KHcoder(Ver3.00f)を用い,頻出後の抽出,抽出語句と経験年数群の共起関係の分析,経験年数群別の特徴語の抽出を行った.なお,本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】分析対象は研究協力への同意にチェックが付されていた332名の回答とした.対象となった作業療法士は,平均臨床経験年数が9.9±7.1年,年齢は32.6±7.9歳であった.主な対象領域別の回答数(複数回答可能)は身体障害294,高齢期障害157,精神障害46,発達障害12であった.総抽出語数(使用)は,5,527(2,789)語で,頻出語は,「休み」,「人間関係」,「相談」,「スタッフ」,「環境」の順に出現回数が多かった.共起関係の分析では,「人間関係」,「相談」,「スタッフ」,「職種」,「環境」,「コミュニケーション」,「良い」が全ての経験年数群に共通して関連していた.特徴語は,1-3年目は「相談」,「先輩」,「人間関係」,4-6年目は「人間関係」,「相談」,「良好」,7-9年目は「休み」,「取る」,「意見」,10年目以上は「休み」,「有給休暇」,「スタッフ」といった類似性と相違がみられた.
【考察】「人間関係」については,共起関係の分析より,全ての経験年数群に関連しており,1-3年目,4-6年目の群に上位の特徴語であったことから,医療機関で就業する作業療法士の働きやすさの視点の一つであり,かつ,経験の浅い作業療法士にとっては,より重要な視点であることが示された.医療機関ではチーム医療の実践が欠かせないため,職種を問わず良好なコミュニケーションがとれることや,同職種や同年代と支え合える関係,先輩,上司への報連相のしやすさなど「人間関係」が重要な働きやすさの視点であると考えられる.また,7-9年目と10年目以上の群では「休み」が特徴語として共通していた.経験年数が長くなるに伴い,仕事だけではなく,余暇の充実や,家事・育児といった生活との両立が重要度を増すことが推測される.したがって,休みの柔軟性など生活と両立できる体制が整っていることが働きやすさの重要な視点になっていると考えられる.これら,経験年数群別の働きやすさの視点に考慮することは意欲や満足度,サービスの質の向上につながる可能性がある.