第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-5] ポスター:管理運営 5

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-5-5] 当院の自動車運転評価の取り組みについて

冨名腰 義斗, 濱名 遥, 福留 綾, 牧山 大輔 (イムス横浜狩場脳神経外科病院リハビリテーション科)

【はじめに】 脳血管障害を呈した運転再開希望者に対し2019年度より自動車運転評価(以下,運転評価)を実施してきた.神奈川県の場合,公安委員会から病院での実車評価は望まないとされているため,当院では外来にて実車評価以外にて評価している.しかし,担当作業療法士(以下,OT)から運転再開の依頼があった方のみに法制度の説明と運転評価を実施してきたため,入院中は再開を希望しなかった方や再開を希望したが評価にこなかった方が退院後に運転再開していることがあった.そのため当院では2022年度から脳血管障害にて入院した全ての免許所有者に対して法制度の説明などを行った.それにより全ての運転再開希望者に対して評価を実施することができた.当院の運転支援に対する取り組みを報告させて頂く. 尚,本研究は当院倫理審査委員会の承認を得ている.
【当院に入院した患者の運転支援の流れ】 当院の運転支援班は,外来OT3名を中心に急性期から生活期のOT10名が在籍している.
 運転支援の流れは,当院に入院している全患者に対し,運転免許証の所有と運転再開希望の有無を確認している.所有者全員に対し運転に関する法制度と評価の必要性を主治医と運転支援班が説明をしている.運転再開希望者に対し,入院中に外来初回評価日を決めて退院後に運転評価を実施している.評価内容は,神経心理学的検査(MMSE,Reyの複雑図形検査,Trail Making Test日本版,BIT行動無視検査,Kohs立方体組み合わせ検査,SDSA),ドライビングシミュレーター(以下,DS), V-FITを行っている.
 1日3単位を目安に最低4日間実施し,外来作業療法士3名にて判定,主治医に評価結果の報告を行っている.その後,主治医から対象者に結果を伝え,診断書作成,免許センターでの安全運転相談を受けることとなっている.また,不合格者に対して希望があった場合,運転再開に向けた訓練を実施している.
【対象者】 2022年4月から12 月の入院中に運転再開の説明をし,運転支援評価につなげた患者は45名であった.また外来にて運転支援を行ったのも同数であった.脳損傷患者は45名(男性41名,女性5名,平均年齢62.1歳,脳梗塞34名,脳出血5名,くも膜下出血2名,頭部外傷2名,慢性硬膜下血腫2名)を対象とした.退院病棟は,急性期が28名,回復期が17名であった.対象者は,重度の左片麻痺患者は一定数いたが,右片麻痺患者は軽度で運転操作に支障がない程度の者のみであり,全対象者の日常生活動作は自立レベルであった.
【結果】 運転再開の流れを説明し,全件が外来へ移行することができた.また合否に関しては,合格(運転を控えるべきとは言えない)は40名,不合格(運転を控えるべき)は5名であった.また,合否に関しては評価結果に基づき医師が判断した.
 初期評価での合格者は31名,不合格者は14名であったが,再評価での合格者は8名,評価を2回以上実施しても不合格であった者は1名であった.運転再開に向けた訓練実施者は7名(うち合格者5名,不合格者2名)であった.
【まとめと課題】 当院の場合,運転支援に精通するOTが免許所有者全員に説明し注意喚起を行うことにより,運転再開希望者に対して運転評価を全員に実施することができ, 医師の判断を仰ぐことができた.
 急性期病院などでは,脳血管障害後の運転再開に医師の判断が必要なことは理解されずそのまま運転している方が多い印象である,また脳血管障害者に対して,評価をして運転再開に至っている方の割合などの報告がない.
 当院のように運転への注意喚起を入院中に行い,運転評価を行う割合を増やしいくことがOTとして重要である.今後は,運転支援者の事故状況,生活状況を聴取し,より運転を安全に行える方法を運転評価者に提示していきたい.