第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-6] ポスター:管理運営 6

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-6-2] リハセラピスト部門における育休復帰支援の試み

塚原 千恵1, 櫻井 利康2, 谷内 耕平3, 百瀬 亨4 (1.社会医療法人財団慈泉会相澤病院脳卒中脳神経リハ科, 2.社会医療法人財団慈泉会相澤病院整形外科リハ科, 3.社会医療法人財団慈泉会相澤病院救急リハ科, 4.社会医療法人財団慈泉会相澤病院内部疾患リハ科)

【はじめに】
2021年6月に育児・介護休業法が改正され,徐々に男性の育児休業(以下,育休)の取得や労働者の育児・介護休業取得の要件が緩和されてきた.そのため,近年では育休復帰支援の取り組みが企業などでもされるようになってきた.当院では2020年1月より,リハセラピストの育休復帰支援チームを立ち上げた.チームの当初の目的は,育休後のブランクがあるセラピストをサポートすることであった.チームが始動してから4年が経過し,チーム活動の変化や成果,今後の課題が明らかになったため以下に報告する.なお,本研究で得られた個人情報は保護した.
【当院のリハセラピストの割合/チーム構成】
当院のリハセラピスト部門は総勢121名(PT64名,OT39名,ST14名)で,救急リハ科,脳卒中脳神経リハ科,内部疾患リハ科,整形外科リハ科,回復期リハ科の5つの科からなる(2023年2月時点).それぞれの科から1-2名がメンバーとして参画しチームが構成された.活動当初は当院の人事部職員もチームに参加した.2022年度の当院のリハセラピストの男女比は男性71名:女性60名,平均年齢30歳,既婚の割合は50.3%だった.
【チーム活動】
チームは主に育休スタッフの産休前と育休復帰前後に関わった.産休前は育休復帰後の勤務や給与形態が分かるようなリーフレットを作成し,出産に向けた寄せ書きと一緒に渡した.育休復帰前後では,所属部署と育休復帰前の勤務調整について確認し,育休復帰後の講習会を企画した.また,育休明けのスタッフが徐々に現場復帰できるようにCCS(clinical clerkship)を利用した現場指導を行うように調整した.その他のチーム活動として,スタッフがいつでも閲覧できるよう各科にあわせた業務マニュアルを作成した.また,男性スタッフも育休を取得しやすいように,育休に関するコラムを当院ホームページに定期的に掲載した.さらに,育休や子育てを経験しているスタッフから随時意見を聴取し,チーム活動の内容を修正した.
【成果と課題】
リハセラピストの離職率は,2019年度6.6%,2022年度4.8%であった.産休・育休を取得した職員は,2019年度1例,2022年度14例であった.育休を取得した男性職員は2019年度0例,2021年度1例,2022年度6例であった.育休明けスタッフからは,「所属長や部署スタッフが快く育休に送り出してくれ,育休復帰後も温かく迎え入れてくれて安心して仕事ができた」,「産休明けでも実習指導者の候補者として声を掛けてもらえて,戦力として認められていると感じられた」などの好意的な意見が聞かれた.一方,「職場に負担をかけているのではないか,復帰してみたものの継続的に仕事ができるか不安がある」「他のスタッフから“らく”していると思われているのではないかと感じる」などの声も聞かれた.このようにチームとして育休復帰を支援できていると考えるが,まだ,産休や育休のサポートが部門全体に根付いていないことを感じた.そのため,病院全体で産休・育休職員のサポートが根付くこと,復帰した職員のネットワーク作りのサポートができることが,今後の課題として考えられた.今後はより多くのスタッフが育休の理解を深められるように,育休復帰支援チームの取り組みについて部門内で定期的に共有していく予定である.また,部署,職種,個人の背景(子育てへの実家の協力度など)や,本人の希望するライフスタイルによっても異なるが,子育て職員の適正業務量の目安の検討など,育休復帰から子育て職員の支援まで活動の幅を広げていく必要があると思われる.