第57回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-6] ポスター:管理運営 6

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PQ-6-3] 回復期リハビリテーション病棟勤務のリハビリテーション科職員における日本版バーンアウト尺度の測定

香取 秀一 (新座病院リハビリテーション科)

【序論】リハ職を含む対人サービス職では,業務特性上バーンアウト症候群などのメンタルヘルス上のリスクがあると提起されている.(衛藤2013)またメンタルヘルス上の問題での休職者の42.3%が退職に至っており(郡司ら2013)社会問題化している.今後,高齢化によりニーズの高まる医療業界において人材確保は至上命題である.そのため,休職や退職につながりやすいバーンアウトに代表されるメンタルヘルス関連の現状把握や対策は重要である.
しかし,これらの問題が提起されているにも関わらず,医療・福祉分野でのバーンアウトの現状調査は看護,福祉関連職で散見されている程度である.そしてリハ職の現状調査は若年層を対象とした研究など少数の報告に留まっている.
【目的・方法】久保らが作成した日本版バーンアウト尺度(田尾1987,久保1999,2004)を用いてリハ職のバーンアウトの現状調査を実施する.
日本版バーンアウト尺度は17項目3因子で構成されている.項目数が少なく簡便に回答が可能であること,我が国での使用を想定して質問項目が作成されていることにより本研究ではこの尺度を採用した.
研究デザインはウェブベースのアンケートを使用した横断研究である.アンケートは2022年12月16日~12月30日の期間で実施した.対象者はA病院リハ科職員とし,職員の背景情報(経験年数・職種)と久保らが作成した日本版バーンアウト尺度を5件法のリッカート尺度で回答することとした.統計解析はマン・ホイットニーのU検定を用いて,経験年数1∼5年目職員の群(以下,若手群)と6年目以降職員の群(以下,中堅・ベテラン群)で,2群間比較を行った.経験年数での群分けの際には,認定作業療法士の申請に5年以上の臨床経験が必要となる.看護師を対象とする研究の中で5年目以上を中堅とする研究が多い(小山田2009)という先行研究での群分け(水野ら2021)を元に操作的に定義した.
有意水準は5%未満とした.倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に則り,Google formを使用したアンケートの冒頭に同意書を掲示し,回答を提出した参加者の同意は得られたものとした.
【結果】アンケートの回収率は71.6%であった(53/74人).日本版バーンアウト尺度の合計点の中央値は,回答者全体が8,若手群では7,中堅・ベテラン群では9.5であった.若手群と,中堅・ベテラン群の2群間比較の結果,中央値に有意差はなかった(p=0.153).日本版バーンアウト尺度の下位項目の平均値は情緒的消耗感2.671(±0.780),脱人格化1.676(±0.561),個人的達成感の低下3.594(±0.592)であった.
【考察】先行研究では看護師は経験年数が若いほどバーンアウトしやすい(久保・田尾1994)に代表されるように経験年数とバーンアウトに関連性が見出されている.これは経験によって自分自身と職務上の役割を分けて考えたり,共感性を持ちつつ客観的で冷静な「突き放した関心」と言われる態度をとれるようになっているからである.
しかし,本研究では若手群と同様に中堅・ベテラン群にも負担がかかっているとも言える結果が得られている.これはリハ病棟での業務特性上中堅以上のスタッフは患者対応のみならずスタッフの教育や他部署との折衝など多岐に渡る業務を担っているためストレスを抱えやすいと考えられる.
【結論・今後の展望】対人援助職のバーンアウト予防における文献研究の中で,バーンアウトの予防支援研究がさかんになったのは,ここ15年程度であることや,看護師,教師での研究が進んではいるが他の職種の実践は未だ乏しいことが指摘されている.(坂下2021)今後はリハ職の特性を踏まてメンタルヘルス上の問題などの予防へと繋げていきたい.