[PQ-6-5] 回復期リハビリテーション病院で退院支援を行う作業療法士が体験する信念対立の利点と欠点の質的解明
はじめに
信念対立は医療チームの質や患者ケアの質にも影響することが報告されており,信念対立の激化により支援の長期化が起こる.信念対立の欠点では,不信感やコミュニケーションの悪化などがある.他方,信念対立の利点は,チームの連携・協力の促進やアウトカムの改善などがある.しかし,信念対立の利点や欠点は,複数の要因が複雑で環境により相違があり,多職種連携の必要な退院支援では信念対立は問題になりやすい.従って,本研究では,回復期リハビリテーション病院で退院支援を行うOTが体験する信念対立の利点と欠点の条件を質的に解明する.
方法
対象者は,退院支援を行った際に信念対立を経験したことがあるOTとした.研究デザインは構造構成的質的研究法,データ分析は,ハイブリッドアプローチを用いた.手順は,①演繹的アプローチ(信念対立の利点,欠点の大カテゴリー)と帰納的アプローチ(Steps for Coding and Theorization(以下,SCAT),パターン分析)を繰り返し実施して,コーディングを深めていき構成概念を生成した. ハイブリッドアプローチで,抽出された構成概念を元に概念図の作成を実施した. 本研究は吉備国際大学倫理審査委員会で承認を得た(受理番号:21-43).
結果
対象者は4名であった.ハイブリットアプローチを通して,信念対立の利点,欠点の2つの大カテゴリーに加えて,信念対立の利点の促進要因,信念対立の欠点の促進要因という大カテゴリーが新たに生成された. この4つの大カテゴリーを踏まえて,中カテゴリーでは,信念対立の利点は5,利点の促進要因は6,欠点は7,欠点の促進要因は8に分類された.SCATでは,252の構成概念と8のストーリーライン,65の理論記述が生成された.
信念対立の利点と促進要因の構造は,【感情調整技能】と【心理的安全の保たれた環境】が整っていることで【対立構造の認識】ができた.同時に,【専門職としての知識】と【コミュニケーションの工夫】ができることで【目標設定の工夫】が促進されていた.促進要因が相互作用することで,OTとして【多角的視点での理解】,【目標の明確化】ができ【多職種連携の活性化】ができることや退院支援における【エンゲージメントの強化】がされた.その結果,【専門職としての成長】が起こった.
信念対立の欠点と促進要因の構造は,【感情調整技能の低さ】,【対立を起こしやすい性格】や【心理的安全が保たれていない環境】により【ヒエラルキーの無自覚】や【不適切な対処方法の選択】が助長されていた.同時に,【共通認識に必要な知識の不足】,【病院環境の制約】があることで【統一されない目標】が引き起こされた.促進要因の相互作用により,当事者や支援者間の【負の感情の表出】や【セクショナリズムの強化】,【信頼関係の悪化】が起こった.同時に,OTは【メンタルヘルスの不調】や【専門職としての挫折】を経験した.その結果,【信念対立の激化】が起こり【退院支援の停滞】する信念対立の欠点として働いた.
考察
信念対立を直接要因と促進要因に細分化することでより俯瞰的に信念対立の構造を捉えられることができると考えられた.信念対立の利点では,OTの成長や専門性を活かした支援の相互理解を深めることが明らかになった.一方で,信念対立の欠点では,退院支援を停滞させる構造が明らかになった.信念対立の解明には,現象の構造を理解する必要性であり,本研究は,退院支援の信念対立の構造を俯瞰的に捉える一助になると考えられた.
信念対立は医療チームの質や患者ケアの質にも影響することが報告されており,信念対立の激化により支援の長期化が起こる.信念対立の欠点では,不信感やコミュニケーションの悪化などがある.他方,信念対立の利点は,チームの連携・協力の促進やアウトカムの改善などがある.しかし,信念対立の利点や欠点は,複数の要因が複雑で環境により相違があり,多職種連携の必要な退院支援では信念対立は問題になりやすい.従って,本研究では,回復期リハビリテーション病院で退院支援を行うOTが体験する信念対立の利点と欠点の条件を質的に解明する.
方法
対象者は,退院支援を行った際に信念対立を経験したことがあるOTとした.研究デザインは構造構成的質的研究法,データ分析は,ハイブリッドアプローチを用いた.手順は,①演繹的アプローチ(信念対立の利点,欠点の大カテゴリー)と帰納的アプローチ(Steps for Coding and Theorization(以下,SCAT),パターン分析)を繰り返し実施して,コーディングを深めていき構成概念を生成した. ハイブリッドアプローチで,抽出された構成概念を元に概念図の作成を実施した. 本研究は吉備国際大学倫理審査委員会で承認を得た(受理番号:21-43).
結果
対象者は4名であった.ハイブリットアプローチを通して,信念対立の利点,欠点の2つの大カテゴリーに加えて,信念対立の利点の促進要因,信念対立の欠点の促進要因という大カテゴリーが新たに生成された. この4つの大カテゴリーを踏まえて,中カテゴリーでは,信念対立の利点は5,利点の促進要因は6,欠点は7,欠点の促進要因は8に分類された.SCATでは,252の構成概念と8のストーリーライン,65の理論記述が生成された.
信念対立の利点と促進要因の構造は,【感情調整技能】と【心理的安全の保たれた環境】が整っていることで【対立構造の認識】ができた.同時に,【専門職としての知識】と【コミュニケーションの工夫】ができることで【目標設定の工夫】が促進されていた.促進要因が相互作用することで,OTとして【多角的視点での理解】,【目標の明確化】ができ【多職種連携の活性化】ができることや退院支援における【エンゲージメントの強化】がされた.その結果,【専門職としての成長】が起こった.
信念対立の欠点と促進要因の構造は,【感情調整技能の低さ】,【対立を起こしやすい性格】や【心理的安全が保たれていない環境】により【ヒエラルキーの無自覚】や【不適切な対処方法の選択】が助長されていた.同時に,【共通認識に必要な知識の不足】,【病院環境の制約】があることで【統一されない目標】が引き起こされた.促進要因の相互作用により,当事者や支援者間の【負の感情の表出】や【セクショナリズムの強化】,【信頼関係の悪化】が起こった.同時に,OTは【メンタルヘルスの不調】や【専門職としての挫折】を経験した.その結果,【信念対立の激化】が起こり【退院支援の停滞】する信念対立の欠点として働いた.
考察
信念対立を直接要因と促進要因に細分化することでより俯瞰的に信念対立の構造を捉えられることができると考えられた.信念対立の利点では,OTの成長や専門性を活かした支援の相互理解を深めることが明らかになった.一方で,信念対立の欠点では,退院支援を停滞させる構造が明らかになった.信念対立の解明には,現象の構造を理解する必要性であり,本研究は,退院支援の信念対立の構造を俯瞰的に捉える一助になると考えられた.