[PR-10-1] 小児領域の新人作業療法士が抱える課題の経時的変化
【はじめに】
当社は障害児通所支援事業所5カ所と訪問看護ステーション1カ所の計6つの事業所を持ち,主に支援を必要とする小児に対して,医療・福祉サービスを提供している.現在,支援を必要としている多くの子どもたちにサービスを提供するために,事業所を拡充しており,職員数が増加している状況にある.新人職員の教育は,当社の教育管理部が管轄する新人研修や全体勉強会,配属先での担当指導者を中心とした指導など,組織で取り組む体制をとってきた.しかし,小児領域の新人作業療法士(OT)への教育内容の効果検証や,の成長段階を調査した報告は稀有である.本研究の目的は,小児領域の新人OTが抱える課題の経時的変化を調査し,卒後教育に活かすことだった.
【方法】
対象者は2021~2022年に入職した当社の障害児通所支援事業所に所属する新人OT7名(新卒者6名,既卒者1名)で,平均年齢は22.5歳であった.方法は半構造化面接で,所要時間は30分~40分だった.面接時期は,入職後1カ月・6カ月とした.面接の項目は,①小児OTへのモチベーションや思い,②小児OTのやりがい,③困っていることとした.面接の聞き取り内容はKJ法により分析した.本研究では,対象者に研究の趣旨を説明し,同意を得た.
【結果】
面接項目ごとにデータからカテゴリーを作成した.抽出したラベルの合計は126であった.面接項目①の大カテゴリーは『自身のスキルアップ』,『子どもへの思い』であった.『自身のスキルアップ』は,1カ月時点で「知識を付けたい」,「多方面から評価をしたい」,「プログラムを立案できるようになりたい」であり,6カ月時点では,「効果のある療育を提供したい」,「研修を受け専門性を高めたい」であった.面接項目②の大カテゴリーは『子どもとの関わり』,『療育の効果』,『職場の雰囲気』,『責任を感じる仕事』であった.『子どもとの関わり』は,1カ月時点で「子供が好きだからやりがいを感じる」,「一緒に遊べることがやりがい」などであり,6カ月時点では,「児の成長を感じることがやりがい」,「児のできることが増えること」であった.面接項目③の大カテゴリーは『自身の特性』,『自身の技能』,『漠然とした不安』,『療育内容』であった.『漠然とした不安』は,1カ月時点でのみ聴取された.『療育内容』は,「遊びの手数が少ないこと」,「遊びのバリエーションが乏しいこと」,「療育の展開が難しい」などが挙げられており,6カ月時点で新卒者の8割以上が困っていることとして取り上げた.
【考察】
面接項目①において,1カ月時点では知識の吸収に重きを置いており,6カ月時点ではより得た知識を療育に降り入れることに意識を向ける傾向があることが推察された.面接項目③において,6カ月時点で殆どの新卒者が遊びのバリエーションの乏しさに困っていることが明らかになった.これは作業として遊びを取り扱う小児領域OTならではの悩みであり,卒前・卒後教育によって補完する必要があると考える.卒後教育体制の構築と運用を進める上で組織が陥りやすい例として,教育の目的と目標が曖昧なまま,ツールと規程等のルールづくりに多くの労力と時間を費やすものの,運用が定着せず形骸化していくこと(大塚ら,2015)が挙げられる.本研究では教育を受ける職員像や課題を入職からの期間で分析したため,今回得た知見を教育目的や目標に反映することで,小児領域の新人OTに対してより効果的な卒後教育を提供できると考える.
当社は障害児通所支援事業所5カ所と訪問看護ステーション1カ所の計6つの事業所を持ち,主に支援を必要とする小児に対して,医療・福祉サービスを提供している.現在,支援を必要としている多くの子どもたちにサービスを提供するために,事業所を拡充しており,職員数が増加している状況にある.新人職員の教育は,当社の教育管理部が管轄する新人研修や全体勉強会,配属先での担当指導者を中心とした指導など,組織で取り組む体制をとってきた.しかし,小児領域の新人作業療法士(OT)への教育内容の効果検証や,の成長段階を調査した報告は稀有である.本研究の目的は,小児領域の新人OTが抱える課題の経時的変化を調査し,卒後教育に活かすことだった.
【方法】
対象者は2021~2022年に入職した当社の障害児通所支援事業所に所属する新人OT7名(新卒者6名,既卒者1名)で,平均年齢は22.5歳であった.方法は半構造化面接で,所要時間は30分~40分だった.面接時期は,入職後1カ月・6カ月とした.面接の項目は,①小児OTへのモチベーションや思い,②小児OTのやりがい,③困っていることとした.面接の聞き取り内容はKJ法により分析した.本研究では,対象者に研究の趣旨を説明し,同意を得た.
【結果】
面接項目ごとにデータからカテゴリーを作成した.抽出したラベルの合計は126であった.面接項目①の大カテゴリーは『自身のスキルアップ』,『子どもへの思い』であった.『自身のスキルアップ』は,1カ月時点で「知識を付けたい」,「多方面から評価をしたい」,「プログラムを立案できるようになりたい」であり,6カ月時点では,「効果のある療育を提供したい」,「研修を受け専門性を高めたい」であった.面接項目②の大カテゴリーは『子どもとの関わり』,『療育の効果』,『職場の雰囲気』,『責任を感じる仕事』であった.『子どもとの関わり』は,1カ月時点で「子供が好きだからやりがいを感じる」,「一緒に遊べることがやりがい」などであり,6カ月時点では,「児の成長を感じることがやりがい」,「児のできることが増えること」であった.面接項目③の大カテゴリーは『自身の特性』,『自身の技能』,『漠然とした不安』,『療育内容』であった.『漠然とした不安』は,1カ月時点でのみ聴取された.『療育内容』は,「遊びの手数が少ないこと」,「遊びのバリエーションが乏しいこと」,「療育の展開が難しい」などが挙げられており,6カ月時点で新卒者の8割以上が困っていることとして取り上げた.
【考察】
面接項目①において,1カ月時点では知識の吸収に重きを置いており,6カ月時点ではより得た知識を療育に降り入れることに意識を向ける傾向があることが推察された.面接項目③において,6カ月時点で殆どの新卒者が遊びのバリエーションの乏しさに困っていることが明らかになった.これは作業として遊びを取り扱う小児領域OTならではの悩みであり,卒前・卒後教育によって補完する必要があると考える.卒後教育体制の構築と運用を進める上で組織が陥りやすい例として,教育の目的と目標が曖昧なまま,ツールと規程等のルールづくりに多くの労力と時間を費やすものの,運用が定着せず形骸化していくこと(大塚ら,2015)が挙げられる.本研究では教育を受ける職員像や課題を入職からの期間で分析したため,今回得た知見を教育目的や目標に反映することで,小児領域の新人OTに対してより効果的な卒後教育を提供できると考える.