第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-10] ポスター:教育 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-10-3] 多職種連携教育の方法の模索

下川 幸蔵, 堀 敦志, 中島 裕也, 林 浩嗣 (福井医療大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】
地域包括ケアシステムの構築やニーズの変化,社会の変化に対応するため,専門職同士の連携Interprofessional Work(IPW),その基盤となる専門職連携教育Interprofessional Education(IPE)の重要性が高まっている.複数の領域の学生同士がともに学ぶIPEを卒前教育に取り入れる大学が増加している.本学では作業療法治療実習Ⅰに他大学の医学部学生が参加し,事例検討をする機会があった.他職種を交えての事例検討によって,本学学生の多職種連携に関する意識が変化したのかを調査したので報告する.
【対象と方法】
本学3年生のうち,本調査の内容を理解し,同意が得られた26名を対象とした.対象は他職種を交えての事例検討を行い,その前後にIPEに関する調査を行った.IPEの尺度にはCurran らの報告を基に牧野らが作成したチーム医療教育に対する態度15 項目を用い,5 件法で回答を求めた.その結果を項目ごとに対応のあるt検定と主成分分析による因子分析(バリマックス回転)で前後比較した.統計ソフトはSPSS28.0を使用した.なお,本研究は倫理審査委員会の承認を得てから実施した.
【結果】
IPE尺度は,全項目で前後とも概ね高得点であった.前後比較では“医療チームの有能なメンバーになることができる”の1項目で有意に向上していた.(p<0.01)因子分析の結果,事例検討前は4因子が抽出され,それぞれ“Learning for Team(チーム医療に役立つ学習)”“Benefit(学生への利益)”“Be useful(卒後に役立つ)”“Problem-solving(問題解決)”となった.事例検討後は4因子が抽出され,それぞれ“Learn positive traits(チーム医療の肯定的な特質を学ぶ)”“Useful for clinical practice(チーム医療を学ぶことで臨床に役立つ)”“Group work(チーム医療をするためにグループ学習は役立つ)”“Effective problem solving(効果的な問題解決が学べる)”となった.
【考察】
IPE尺度が概ね高得点であったことから,IPEに向けた態度が育まれていることがわかる.これまでの授業や演習,実習を通して多職種連携の重要性を理解していると考えられる.その中でも“医療チームの有能なメンバーになることができる”の項目が向上していた理由として,医学部学生とのディスカッションを通して,自身の作業療法の視点を表出し,それを受け入れられた経験が自信につながったのではないだろうか.また因子分析の結果より,医学部学生を交えての事例検討前にも,チーム医療を学ぶことの重要性は理解していた.完全に分解できるものではないものの,事例検討後にはその内容が深まり,何を学ぶのか,何に活かせるのかを学習していると考えられた.医学部学生が参加初年度であることを考慮し,評価と取り組みの継続をしていく必要がある.
本学では理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師を養成している.それぞれの学科専攻がコラボレーションする必要がある.その一つの方法として,次年度は他専攻学生を交えてのそれぞれの職種説明や事例検討を試みようと他専攻教員に働きかけている.さらに卒前教育として模擬カンファレンスやそれぞれの視点を活かした事例検討などの機会をもち,それを増やしていくことも必要であると思われる.