第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-10] ポスター:教育 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-10-7] 作業療法士と作業療法学生の食事動作観察場面における視線分析

石浦 佑一1, 宮本 理紗1, 勝田 茜1, 仁田 静香1, 赤堀 将孝2 (1.姫路獨協大学医療保健学部作業療法学科, 2.はくほう会医療専門学校赤穂校)

【はじめに】
 本学では日常生活活動学という科目において,食事動作の評価や練習方法について指導を行っている.しかし,実場面での観察の経験は少なく,臨床実習において評価に難渋するケースがある.学生がどこに視線を向けて食事動作場面を観察しているのかを明らかにすることで,より効果的な指導を行うことができるのではないかと考える.
 本研究の目的は,本学学生(以下,学生)が片麻痺者の食事動作場面を観察する際の視線分析を行い,学生がどこに多くの視線を向けて情報を得ようとしているのかを明らかにすること,また作業療法士(以下,OTR)の視線と比較,検討することで効果的な指導方法を得ることであった.
【対象および方法】
 本学作業療法学科3年生13名(男性4名,女性9名,平均年齢21.3±1.0歳),および身体または老年期領域での臨床経験が10年以上あるOTR 5名(男性2名,女性3名,平均年齢40.0±2.8歳)を対象者とした.全ての対象者には本研究の主旨を説明の上,同意を得た.視線の測定には眼球運動測定システムTalkEye Lite(竹井機器工業株式会社)を用い,右片麻痺者の食事動作場面の動画を約1分間視聴し視線の測定を行った.測定後,顔面・両上肢体幹・テーブル・両下肢・その他の5領域を指定し,各領域に視線が停留した時間と全ての領域に視線が向けられていた総時間から,各領域の視線停留割合を算出した.統計学的処理はSPSS Statistics Ver.22を用い,学生群とOTR群の視線停留割合の比較にはMann-Whitney U 検定を用いた.なお有意水準は5%未満とした.本研究は本学の生命倫理審査を受けて実施した.
【結果】
 学生群の各領域における視線停留割合は,顔面21.2±13.9%,両上肢体幹4.2±4.1%,テーブル1.3±1.4%,両下肢0.5±0.5%,その他72.8±15.8%であった.OTR群の各領域における視線停留割合は,顔面26.4±23.1%,両上肢体幹13.4±13.1%,テーブル5.0±4.9%,両下肢0.9±1.0%,その他54.4±10.3%であった.Mann-Whitney U 検定にて両群間で有意差を認めたのは,その他の領域であった(p<0.04).
【考察】
 両群において視線停留割合が高かった領域は,顔面,両上肢体幹,その他の領域であり,その他の領域においてはOTR群に比べ学生群の視線停留割合が有意に高いことが示された.顔面や両上肢体幹の領域は,麻痺側の運動機能や口元まで食事具を操作する過程を,また,その他の領域は,各領域を広い視野で捉え,環境や姿勢の評価を行う過程に注目したことにより視線停留割合が高くなった可能性がある.動作観察場面の視線特性について林部ら(2009)は,作業療法士は学生に比べ,対象者の障害像と動作の特徴を捉えながら,過去の経験から必要なものと不必要なものとを取捨選択していたとの報告がある.OTR群に比べ学生群は,必要な情報の取捨選択が行えず,視線を向ける領域が定まらなかったため,その他の領域における視線停留割合が高くなった可能性がある.
 本研究より,学生の食事動作場面における観察の視点が明らかになった.授業の内容に本研究結果を取り入れていくとともに,実際の食事動作場面の観察の機会を増やしていくことが学生の経験を促し,効果的な授業に繋がるのではないかと考える.今後は,具体的な評価内容を聴取し,その内容と視線停留割合との関係性について検討していくことや,異なる疾患や動作への視線分析を実施していくことが必要である.