第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-11] ポスター:教育 11

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PR-11-5] より具体的な目標設定のためのスタッフ教育の有効性

濱野 拓麻 (医療法人明倫会 本山リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【背景】
厚生労働省が発表している「医学的リハビリテーションの進め方」では,リハビリテーション(以下,リハビリ)は心身機能の回復訓練に終始するのではなく,常に予後を意識し,残存機能を活かした活動,参加を念頭に置きながら進めることが推奨されている.そのためには目標指向的アプローチが望ましく,予後,患者の環境因子,個人因子などを考慮して身体機能レベルではなく,活動・参加レベルの目標が必要である.しかし,筆者自身,日々の臨床の中で的確な目標を設定することが難しく,他スタッフへの啓発も兼ねて勉強会を開催し,勉強会の前後での目標設定への意識変化を検証した.
【方法】
毎月作成し,目標欄(1か月,終了時)を記載するリハビリテーション総合実施計画書(以下,リハビリ計画書)に着目した.当院の入院患者を無作為に30名抽出し,リハビリ計画書の目標欄を「目標が活動・参加かつ具体的である」「目標が活動・参加である」「目標に活動・参加が含まれているが一部である」「目標に活動・参加が含まれていない」の4つに分類することで,当院の目標設定における現状把握を行った.そのうえでリハビリスタッフを対象に「活動・参加の定義」や「目標と方針の違い」,「ロングゴールとショートゴールの関係性」などについての勉強会を行い,1か月後のリハビリ計画書の目標欄を再度上記4項目に分類し,目標設定が活動・参加に基づいているか調査した.
【結果】
初めに行った現状把握では,目標設定の理想とされる「目標が活動・参加かつ具体的である」の項目は0%となっており,「目標が活動・参加である」の項目も13%と非常に低い割合であった.逆に「目標に活動・参加が含まれていない」の,本来記載するべきではない身体機能に着目した目標を記載しているリハビリ計画書が47%と約半数を占める結果となった.
目標設定についての勉強会実施後の目標欄では「目標が活動・参加かつ具体的である」が10%,「目標が活動・参加である」が57%と,活動・参加に着目した目標設定の記載ができている計画書が計67%に
改善していた.また,「目標に活動・参加が含まれていない」の項目が0%であった.
【考察】
リハビリ計画書は患者がイメージしやすい目標を記載するよう推奨されており,他職種で目標を共有するためにも身体機能ではなく活動・参加に関した具体的な記載が必要である.しかし今回,初めに行った現状把握によって活動・参加に関する具体的な目標が記載できていないリハビリ計画書が大半ということがわかった.竹山¹⁾らは,個別的な目標設定には,利用者側の要因ではなく,職員の高い意識と情報収集能力,目標設定立案能力が必要と述べている.当院には経験年数3年以下の比較的若いリハビリスタッフが多く,脳血管疾患患者の予後予測が介入初期ではなかなか見通しづらいこともあり,身体機能面に関する目標が記載されていることが多くなっていると考えられた.しかし,目標設定に必要な要素や考え方について勉強会を通して明確に認識することで,短期間での大きな意識変化につながったと考える.今後も定期的な勉強会と現状把握を続け,検証を進めつつ病院全体でより患者に有益な目標設定を行っていきたい.
参考文献:¹⁾竹山和宏,橋場悠一,常田衛,他:通所リハビリテーションでの目標設定(参加レベル)についての現状目標設定と認知症,年齢,要介護度の関係,第49回日本理学療法学術大会