[PR-12-1] 臨床実習指導者が各実習形態に感じているメリット,デメリットにおける形態間の違いについて
【序論】作業療法の従来の臨床実習は,実習指導者の監督の下ではあるが,初期評価から治療計画と治療の実施,そして最終評価までの一連の過程を学生が単独で実施する要素が強い実習(事例基盤型)であった.理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が2018年に改正され,ガイドラインでは事例基盤型から診療参加型臨床実習(CCS型)への移行が推奨された.そのため,CCS型への移行に伴い,その教育効果に関する報告が散見されるようになった.しかし,CCS型に事例基盤型の要素を取り入れた実習(折衷型)も見受けられ,臨床実習の実習形態やその教育効果について実態を調査した報告はない.
【目的】本研究では,臨床実習指導者が各実習形態に感じているメリット,デメリットを明らかにすることで課題を明確にし,CCS型への円滑な移行に繋げるための基礎資料とすることを目的とした.【方法】対象は,日本作業療法士協会の会員所属施設名簿に登録された900施設を無作為に抽出し,その施設の臨床実習指導責任者900名とした.対象には,依頼文書,アンケート,同意書を郵送し,研究参加に同意する場合にアンケートと同意書を返送するようにした.なお,会員所属施設名簿は日本作業療法士協会からの使用許可と倫理審査委員会の承認(2019-10)を得て実施した.調査内容は,現在の実習形態(CCS型,事例基盤型,折衷型),各実習形態のメリットとデメリットについて回答を求めた.メリットとデメリットの選択肢は先行研究を基に共同研究者で協議し,「身体的・精神的負担」「学習機会」「教育効果」「実習運営の効率化」「指導者の成長」「リスク」に関する内容の55項目と自由記載とした.また,優先すべき課題を明確にするため,メリットとデメリットは5割以上の指導者が感じている項目を抽出し,CCS型,事例基盤型,折衷型の3群間で比較を行った.群間比較はFisher正確確立検定(多重比較はBonferroni法)とした.
【結果】アンケートは2019年1月25日~2月14日に実施し,215施設から有効な回答を得た.実習形態はCCS型が12.6%,事例基盤型と折衷型が43.7%であった.抽出されたメリットの3群比較の結果,CCS型で「身体的・精神的負担」,「学習機会」,「指導者の成長」に関する項目,事例基盤型で「教育効果」,「実習運営の効率」,「学習機会」に関する項目が有意に多かった.同様にデメリットは,事例基盤型で「身体的・精神的負担」,「リスク」に関する項目が有意に多かった.
【考察】CCS型は事例基盤型に比べて臨床実習指導者や実習生の身体的・精神的負担を軽減でき,多くの臨床経験の提供に加えて臨床実習指導者の成長にも繋がり,デメリットが少ないことが示唆された.これに対して事例基盤型では,CCS型に比べて実習生の理解促進や時間をかけて考えを深めることができるという教育効果と,学生の理解度の把握が可能であり,対象者との関わりが深いことが示唆された.しかし,事例基盤型ではCCS型より臨床実習指導者や実習生の身体的・精神的負担が大きく,学生指導によって診療業務に支障を来す可能性が推察された.このような臨床実習指導者の認識が背景にあり事例基盤型の要素を取り入れた折衷型の割合が多くなっている可能性がある.したがって,CCS型への円滑な移行のためには,各実習形態のメリットとデメリットを考慮し,臨床実習指導者と実習生の双方にとって負担が少なく,教育評価が容易で,かつ教育効果を高められる実習指導方法を検討していく必要がある.
【目的】本研究では,臨床実習指導者が各実習形態に感じているメリット,デメリットを明らかにすることで課題を明確にし,CCS型への円滑な移行に繋げるための基礎資料とすることを目的とした.【方法】対象は,日本作業療法士協会の会員所属施設名簿に登録された900施設を無作為に抽出し,その施設の臨床実習指導責任者900名とした.対象には,依頼文書,アンケート,同意書を郵送し,研究参加に同意する場合にアンケートと同意書を返送するようにした.なお,会員所属施設名簿は日本作業療法士協会からの使用許可と倫理審査委員会の承認(2019-10)を得て実施した.調査内容は,現在の実習形態(CCS型,事例基盤型,折衷型),各実習形態のメリットとデメリットについて回答を求めた.メリットとデメリットの選択肢は先行研究を基に共同研究者で協議し,「身体的・精神的負担」「学習機会」「教育効果」「実習運営の効率化」「指導者の成長」「リスク」に関する内容の55項目と自由記載とした.また,優先すべき課題を明確にするため,メリットとデメリットは5割以上の指導者が感じている項目を抽出し,CCS型,事例基盤型,折衷型の3群間で比較を行った.群間比較はFisher正確確立検定(多重比較はBonferroni法)とした.
【結果】アンケートは2019年1月25日~2月14日に実施し,215施設から有効な回答を得た.実習形態はCCS型が12.6%,事例基盤型と折衷型が43.7%であった.抽出されたメリットの3群比較の結果,CCS型で「身体的・精神的負担」,「学習機会」,「指導者の成長」に関する項目,事例基盤型で「教育効果」,「実習運営の効率」,「学習機会」に関する項目が有意に多かった.同様にデメリットは,事例基盤型で「身体的・精神的負担」,「リスク」に関する項目が有意に多かった.
【考察】CCS型は事例基盤型に比べて臨床実習指導者や実習生の身体的・精神的負担を軽減でき,多くの臨床経験の提供に加えて臨床実習指導者の成長にも繋がり,デメリットが少ないことが示唆された.これに対して事例基盤型では,CCS型に比べて実習生の理解促進や時間をかけて考えを深めることができるという教育効果と,学生の理解度の把握が可能であり,対象者との関わりが深いことが示唆された.しかし,事例基盤型ではCCS型より臨床実習指導者や実習生の身体的・精神的負担が大きく,学生指導によって診療業務に支障を来す可能性が推察された.このような臨床実習指導者の認識が背景にあり事例基盤型の要素を取り入れた折衷型の割合が多くなっている可能性がある.したがって,CCS型への円滑な移行のためには,各実習形態のメリットとデメリットを考慮し,臨床実習指導者と実習生の双方にとって負担が少なく,教育評価が容易で,かつ教育効果を高められる実習指導方法を検討していく必要がある.